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6.ミレイアが消えた後
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エルベルトは、王宮の元の部屋に戻り、執務室で家臣達に、幽閉された時に、助けれなかったことを涙を流して、謝られた。
それを、何故か冷めた目でみている自分に気がついた。
確かにあの時は、家臣達だって、是非も分からずに動けなかったとは、頭では理解している。
けれども、感情面では、見放された自分を反省すべきとは、わかっていても、どこか、納得していないと言うようなわだかまりがある。
もしまた、同じようなことがあった場合も、この者達は、自分のために誰一人として、動かないのだろうと思うと、引いてしまう。
家臣達とうまくやっていたと言う自負があるために、なおさら傷ついている。
これが、私に対する皆の評価と言うことだ。
王子たる者、いつも冷静であれとは理解しているが、どうしても、気持ちが追いつかなかった。
早く、ミレイアに会いたい。
結局、僕を見放さなかったのは、ハーシェルとミレイアだけである。
その事実が、僕の心を冷たくする。
執務が終わったので、居室に戻るが、ミレイアがいない。
さすがに離宮の片付けも終わっているはずだが、どうしたのだろう。
そう思っていると、側近が、
「こちらを預かっています。」
と言って、手紙を差し出しす。
中を開いてみると、ミレイアからの手紙だった。
ミレイアが、離宮に来た時には、もう辞職していて、僕の妾だと、皆に思われているから、僕の評判の悪化を危惧して、市井に下るだと。
何て、ことだ。
全く気がつかなかった。
あの日離宮に来たミレイアは、僕のために、すべてを捨てて、来ていたんだ。
言われてみれば、わかることだ。
幽閉された僕側につけば、王国の方針に逆らうことになるし、そこまでして、その閉ざされた離宮で、二人きりでいれば、妾だと思われるのも、当然のことだ。
僕は、そのようなことになるのではないかと、思うことがあったものの、結局、深く考えることをやめて、ミレイアにあまえていたんだ。
すべてを失う覚悟で、支えてくれた君に。
僕は愕然とした。
僕のそばにいれば、うるさい男達に追いかけられないで済むと言う君の言葉に甘えて、女性である君の名誉を傷つけてしまったんだね。
覚悟を持ってそばにいてくれた君に、僕は、どうやって、償えばいい?
僕は、君のために、何ができる?
しばらく、考えると、心を決めた。
もう、王位継承権を放棄しよう。
そして、ミレイアが、好きだと自分自身に認め、彼女に愛を伝えよう。
王位は、ハーシェルに渡せばいい。
僕には、ついて来る家臣もいない。
すべてを捨てて、ついて来てくれたミレイアを守ることもできなかった。
僕を、一番許せないのは、僕自身だった。
その後、エルベルトは、ハーシェルの居室を訪ね、彼と話し、自分の思いを伝える。
「僕は、この度の件で、王位を継ぐのは、自信も、やる気も失ってしまい相応わしくないんだ。」
「兄さんの気持ちもわかるけど、もう少し様子を見てから、判断したら?」
「それはできない。
僕は、ずっと自分の気持ちに向き合わないようにして来たけれど、今回のことで、僕の唯一を見つけてしまった。
ミレイアと結婚するためにも、王位などいらないよ。」
「そう言うことなら、いいよ。
僕が、なってあげる。
僕は、遊学中に出会った王女と、結婚するつもりだから。」
「そうなのか?」
「ああ、ごめん。
そのために、いつまでも遊学していたから、兄さんが、大変な思いをして、この王国を守っていたことに気づかなかった。
だから、今回の件は、僕のせいでもある。」
「いや、ただ単に僕の力不足さ。」
「それについてだけど、今兄さんが離宮にいたから、僕一人ではやりきれない程の執務があって、僕は潰れそうになっていたんだ。
だから、元々、兄さんが一人でやっていたのが、今回の事件が起こった原因じゃないかなと思ったんだ。
他国では、数人で手分けしてやっているんだよ。」
「そうなのか?
確かに僕は、いつもいっぱいいっぱいで限界だったが、だからと言って、王とはそんなものだと思っていたよ。
なるほど父も、そうして早くに病に倒れ、療養中であることを考えると、今回の事件が起こらず、このまま続けていたら、僕は父と同じく、早くに病に倒れた可能性があったんだな。」
「そうだよ。
だから、王位は僕が継いでも、兄さんも一緒にやると約束をして。
それが、条件だよ。」
「わかった。
ありがとう。」
僕は、ハーシェルを支える約束をした。
僕は、今まで知らずに、多くの執務を抱えていたせいで、見落としたり、家臣達に雑な対応をしたりしていたんだな。
だから、いざと言う時には、家臣達から守られない王子になってしまっていたのかもしれない。
これからは、ハーシェルを支えて、僕が彼を守ろう。
やっと僕は、自分の失敗から学んで、前をむき出した。
ミレイア、僕は、この先の未来を、君と一緒に生きて行きたいんだ。
そして今、王位を手放すことで、やっとその資格を得ることができた。
ミレイア、今君がどこにいたとしても、必ず見つけて、求婚するよ。
だから、待っていて。
それを、何故か冷めた目でみている自分に気がついた。
確かにあの時は、家臣達だって、是非も分からずに動けなかったとは、頭では理解している。
けれども、感情面では、見放された自分を反省すべきとは、わかっていても、どこか、納得していないと言うようなわだかまりがある。
もしまた、同じようなことがあった場合も、この者達は、自分のために誰一人として、動かないのだろうと思うと、引いてしまう。
家臣達とうまくやっていたと言う自負があるために、なおさら傷ついている。
これが、私に対する皆の評価と言うことだ。
王子たる者、いつも冷静であれとは理解しているが、どうしても、気持ちが追いつかなかった。
早く、ミレイアに会いたい。
結局、僕を見放さなかったのは、ハーシェルとミレイアだけである。
その事実が、僕の心を冷たくする。
執務が終わったので、居室に戻るが、ミレイアがいない。
さすがに離宮の片付けも終わっているはずだが、どうしたのだろう。
そう思っていると、側近が、
「こちらを預かっています。」
と言って、手紙を差し出しす。
中を開いてみると、ミレイアからの手紙だった。
ミレイアが、離宮に来た時には、もう辞職していて、僕の妾だと、皆に思われているから、僕の評判の悪化を危惧して、市井に下るだと。
何て、ことだ。
全く気がつかなかった。
あの日離宮に来たミレイアは、僕のために、すべてを捨てて、来ていたんだ。
言われてみれば、わかることだ。
幽閉された僕側につけば、王国の方針に逆らうことになるし、そこまでして、その閉ざされた離宮で、二人きりでいれば、妾だと思われるのも、当然のことだ。
僕は、そのようなことになるのではないかと、思うことがあったものの、結局、深く考えることをやめて、ミレイアにあまえていたんだ。
すべてを失う覚悟で、支えてくれた君に。
僕は愕然とした。
僕のそばにいれば、うるさい男達に追いかけられないで済むと言う君の言葉に甘えて、女性である君の名誉を傷つけてしまったんだね。
覚悟を持ってそばにいてくれた君に、僕は、どうやって、償えばいい?
僕は、君のために、何ができる?
しばらく、考えると、心を決めた。
もう、王位継承権を放棄しよう。
そして、ミレイアが、好きだと自分自身に認め、彼女に愛を伝えよう。
王位は、ハーシェルに渡せばいい。
僕には、ついて来る家臣もいない。
すべてを捨てて、ついて来てくれたミレイアを守ることもできなかった。
僕を、一番許せないのは、僕自身だった。
その後、エルベルトは、ハーシェルの居室を訪ね、彼と話し、自分の思いを伝える。
「僕は、この度の件で、王位を継ぐのは、自信も、やる気も失ってしまい相応わしくないんだ。」
「兄さんの気持ちもわかるけど、もう少し様子を見てから、判断したら?」
「それはできない。
僕は、ずっと自分の気持ちに向き合わないようにして来たけれど、今回のことで、僕の唯一を見つけてしまった。
ミレイアと結婚するためにも、王位などいらないよ。」
「そう言うことなら、いいよ。
僕が、なってあげる。
僕は、遊学中に出会った王女と、結婚するつもりだから。」
「そうなのか?」
「ああ、ごめん。
そのために、いつまでも遊学していたから、兄さんが、大変な思いをして、この王国を守っていたことに気づかなかった。
だから、今回の件は、僕のせいでもある。」
「いや、ただ単に僕の力不足さ。」
「それについてだけど、今兄さんが離宮にいたから、僕一人ではやりきれない程の執務があって、僕は潰れそうになっていたんだ。
だから、元々、兄さんが一人でやっていたのが、今回の事件が起こった原因じゃないかなと思ったんだ。
他国では、数人で手分けしてやっているんだよ。」
「そうなのか?
確かに僕は、いつもいっぱいいっぱいで限界だったが、だからと言って、王とはそんなものだと思っていたよ。
なるほど父も、そうして早くに病に倒れ、療養中であることを考えると、今回の事件が起こらず、このまま続けていたら、僕は父と同じく、早くに病に倒れた可能性があったんだな。」
「そうだよ。
だから、王位は僕が継いでも、兄さんも一緒にやると約束をして。
それが、条件だよ。」
「わかった。
ありがとう。」
僕は、ハーシェルを支える約束をした。
僕は、今まで知らずに、多くの執務を抱えていたせいで、見落としたり、家臣達に雑な対応をしたりしていたんだな。
だから、いざと言う時には、家臣達から守られない王子になってしまっていたのかもしれない。
これからは、ハーシェルを支えて、僕が彼を守ろう。
やっと僕は、自分の失敗から学んで、前をむき出した。
ミレイア、僕は、この先の未来を、君と一緒に生きて行きたいんだ。
そして今、王位を手放すことで、やっとその資格を得ることができた。
ミレイア、今君がどこにいたとしても、必ず見つけて、求婚するよ。
だから、待っていて。
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