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3.美しい侍女
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エルベルト王子は、自分が食事を食べている時に、こんな所にいる二人を見る者などいないのに、ミレイアが、私の指示ですぐ動けるように部屋の壁際に立っているのを、不思議に思った。
「ミレイア、ここには、誰もいない。
だから、君は、王宮でやっていたようにする必要は全くないよ。
座って一緒に食事を食べないか?」
「そんな、畏れ多いです。」
「今の僕は、ただの罪人だ。
王宮に支える君の方が地位は高いよ。」
エルベルト様は、私が王宮から離職していることを知らない。
だから、地位が高いと思っている。
しかし、私はもう、普通の民である。
だが、エルベルト様は罪人だとしたら、私の方がまだ地位は高いとも言えるかな。
「では、私も一緒に次回から、食べさせていただきます。」
私はずっと、エルベルト様と一緒に食事をすることを夢見て来た。
王宮では、絶対に叶わない望みだった。
王子が、侍女と食事なんてあり得ない。
だが、こうなった今、最後にエルベルト様と食事できるチャンスを逃すことはできなかった。
そして今、エルベルト様と向かい合ってテーブルを囲み、食事を食べている。
なんて幸せなひとときなのだろう。
僅かなパンとスープ、フルーツのおよそ王家の方が食べるようなものではないのに、エルベルト様は文句一つ言わず、笑顔で食べている。
食事をする所作も、相まって、まるで、高級な晩餐であるかのようだ。
「エルベルト様、料理番に頼んで、量を増やしてもらうので、しばらくの我慢です。」
「ああ、できたらでいいよ。
僕は、あくまで罪人だからね。」
「でもこの量なら、どんどん痩せてきてしまいますから。」
「まぁ、そうだね。
それでは、見苦しい体になってしまうか。
では、何とかたべないとな。
こちらに来てから、あまり食欲が湧かなかったから。
それでも、一人で食べていた頃より、ミレイアと食べている今の方が、食欲が湧いて来ているけどね。」
「そう思っていただけるなら、嬉しいです。」
私は、二人で食べれる幸せを噛み締めながら、今を過ごしている。
エルベルトは、ふと気になったので、ミレイアに聞いてみる。
「ここにいたら、君に対して、僕と関係していると疑うものが出て来ないかい?
君が、将来、結婚するのに、不利にならないか心配だよ。
実際はそんなことはないとしても、二人きりだから、そのような、口さがないことを言うものはいないかい?」
「直接言われていませんけれど、思っている方はいるでしょうね。
一応、私達は男女ですし。
でも、エルベルト様は、そんなことはしないので、大丈夫です。」
「何をもって、大丈夫だと言うんだ。
僕も一応、男だよ。」
「エルベルト様は、ここに罪人として幽閉された状況で、そのような軽はずみなことをするはずがありません。」
「ミレイアは、僕を過大評価しているね。」
「そんなことは、ありません。
エルベルト様は、ずっと鋼の自制心を保って、執務をして来ています。
それを私は、知っていますから。
それに、私が、妾が嫌なのは、エルベルト様は、とっくにご存知だから、何も起こりません。」
「そうだね。
変な浮気男に狙われない為に、僕のそばにいるって、ずっと言ってきてるからね。
それは、わかっている。」
「はい、エルベルト様のそばが、一番安全です。」
そう言って、ミレイアは、僕達が食べた食器を片付け始める。
ミレイアは、僕を信じ過ぎている。
こうして、二人で暮らしているうちに、ますますミレイアの存在が大きくなる。
ここに来る前は、熱心に世話してくれていることも、たまに、話し相手になってくれることも、当たり前だと思っていた。
けれども僕は、幽閉されてから、ミレイアが、世話をしに来てくれる前までと比べて、どれほど、君が僕の歪みきった心を癒してくれているか、君に伝えていない。
君は、罪人と呼ばれている僕に対して、ごく自然に接してくれている。
そのことがさらに、僕のささくれだった心を和ませる。
君の笑顔に、どれほどの力があるか、君は気づいているかい?
でも、それを伝えてしまえば、僕の君に対する好意を知られてしまう。
僕がいくらミレイアに好意を伝えたとしても、二人はどうにもならない関係なのだから、この思いに気づかないふりをしているのが一番いい。
ミレイアは、ピンクの髪に水色の瞳で、王宮にいる頃から、大勢の男達が彼女を狙っているのを知っていた。
だが、ミレイアは、そんな男達に興味がない様子で、僕の庇護を盾に、男達を追い払っていた。
あの頃は、気づかなかったけれども、今になって、あの時の男達の気持ちが良くわかる。
僕は、優しく、癒してくれるミレイアと結婚して、独り占めしたい。
でもそれは、僕には、永遠に届かない夢だ。
もし万が一、ここに幽閉されたまま、一生を過ごすことになっても、ミレイアと二人で過ごすことができたら、それはそれで幸せだと思うだろう。
だって、ここにいる限り、ミレイアを独占しているのは、僕なのだから。
「ミレイア、ここには、誰もいない。
だから、君は、王宮でやっていたようにする必要は全くないよ。
座って一緒に食事を食べないか?」
「そんな、畏れ多いです。」
「今の僕は、ただの罪人だ。
王宮に支える君の方が地位は高いよ。」
エルベルト様は、私が王宮から離職していることを知らない。
だから、地位が高いと思っている。
しかし、私はもう、普通の民である。
だが、エルベルト様は罪人だとしたら、私の方がまだ地位は高いとも言えるかな。
「では、私も一緒に次回から、食べさせていただきます。」
私はずっと、エルベルト様と一緒に食事をすることを夢見て来た。
王宮では、絶対に叶わない望みだった。
王子が、侍女と食事なんてあり得ない。
だが、こうなった今、最後にエルベルト様と食事できるチャンスを逃すことはできなかった。
そして今、エルベルト様と向かい合ってテーブルを囲み、食事を食べている。
なんて幸せなひとときなのだろう。
僅かなパンとスープ、フルーツのおよそ王家の方が食べるようなものではないのに、エルベルト様は文句一つ言わず、笑顔で食べている。
食事をする所作も、相まって、まるで、高級な晩餐であるかのようだ。
「エルベルト様、料理番に頼んで、量を増やしてもらうので、しばらくの我慢です。」
「ああ、できたらでいいよ。
僕は、あくまで罪人だからね。」
「でもこの量なら、どんどん痩せてきてしまいますから。」
「まぁ、そうだね。
それでは、見苦しい体になってしまうか。
では、何とかたべないとな。
こちらに来てから、あまり食欲が湧かなかったから。
それでも、一人で食べていた頃より、ミレイアと食べている今の方が、食欲が湧いて来ているけどね。」
「そう思っていただけるなら、嬉しいです。」
私は、二人で食べれる幸せを噛み締めながら、今を過ごしている。
エルベルトは、ふと気になったので、ミレイアに聞いてみる。
「ここにいたら、君に対して、僕と関係していると疑うものが出て来ないかい?
君が、将来、結婚するのに、不利にならないか心配だよ。
実際はそんなことはないとしても、二人きりだから、そのような、口さがないことを言うものはいないかい?」
「直接言われていませんけれど、思っている方はいるでしょうね。
一応、私達は男女ですし。
でも、エルベルト様は、そんなことはしないので、大丈夫です。」
「何をもって、大丈夫だと言うんだ。
僕も一応、男だよ。」
「エルベルト様は、ここに罪人として幽閉された状況で、そのような軽はずみなことをするはずがありません。」
「ミレイアは、僕を過大評価しているね。」
「そんなことは、ありません。
エルベルト様は、ずっと鋼の自制心を保って、執務をして来ています。
それを私は、知っていますから。
それに、私が、妾が嫌なのは、エルベルト様は、とっくにご存知だから、何も起こりません。」
「そうだね。
変な浮気男に狙われない為に、僕のそばにいるって、ずっと言ってきてるからね。
それは、わかっている。」
「はい、エルベルト様のそばが、一番安全です。」
そう言って、ミレイアは、僕達が食べた食器を片付け始める。
ミレイアは、僕を信じ過ぎている。
こうして、二人で暮らしているうちに、ますますミレイアの存在が大きくなる。
ここに来る前は、熱心に世話してくれていることも、たまに、話し相手になってくれることも、当たり前だと思っていた。
けれども僕は、幽閉されてから、ミレイアが、世話をしに来てくれる前までと比べて、どれほど、君が僕の歪みきった心を癒してくれているか、君に伝えていない。
君は、罪人と呼ばれている僕に対して、ごく自然に接してくれている。
そのことがさらに、僕のささくれだった心を和ませる。
君の笑顔に、どれほどの力があるか、君は気づいているかい?
でも、それを伝えてしまえば、僕の君に対する好意を知られてしまう。
僕がいくらミレイアに好意を伝えたとしても、二人はどうにもならない関係なのだから、この思いに気づかないふりをしているのが一番いい。
ミレイアは、ピンクの髪に水色の瞳で、王宮にいる頃から、大勢の男達が彼女を狙っているのを知っていた。
だが、ミレイアは、そんな男達に興味がない様子で、僕の庇護を盾に、男達を追い払っていた。
あの頃は、気づかなかったけれども、今になって、あの時の男達の気持ちが良くわかる。
僕は、優しく、癒してくれるミレイアと結婚して、独り占めしたい。
でもそれは、僕には、永遠に届かない夢だ。
もし万が一、ここに幽閉されたまま、一生を過ごすことになっても、ミレイアと二人で過ごすことができたら、それはそれで幸せだと思うだろう。
だって、ここにいる限り、ミレイアを独占しているのは、僕なのだから。
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