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8.仲間の怪我
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ニコラスは仲間たちと共に、ある森で魔獣討伐を行っていた。
その日の魔獣は非常に強く、A級、さらにはS級も混じっており、どれだけ討伐しても、一向に数が減らない。
夕暮れが迫る頃、一緒に討伐に闘っていたアークが、S級の魔獣の鋭い爪に引っ掻かれて、背中に大きな傷を負い、その場に倒れ込んだ。
傷から大量の血が流れ、止まる様子はない。
みる間に顔色が青白くなり、呼吸が荒く、命の危険が迫っているのは、明らかだった。
「うぅ…。」
アークは倒れたまま立ち上がることもできず、痛みで呻いている。
ニコラスはアークのそばに跪き、彼をなんとか抱えて、安全な木の下まで運ぶと、考え込んだ。
こんなに大きな傷があるなら、すぐに治療をしないと助からないのはわかるが、教会まで運ぶ間、アークは生きていれるのだろうか。
だが今は、悩んでいる時間さえ惜しい。
隊長に隊を離れる許可を得て、もう一人の仲間と共にアークを担いで、聖女様のいる教会を目指す。
「まだ、死ぬなよ。
俺達が、聖女様に助けてもらえるように頼んでやる。」
そう言ってニコラス達は、アークを抱えて歩き出したが、森から教会までは遠いし、さらに森の中は鬱蒼として馬で駆けることもできない。
ここから全力で急いで歩いても、夜明け前にたどり着くことができるか怪しい。
聖女様は夜しか治療をしないのに、間に合うのだろうか?
今日一日、力の限り魔獣と闘って来た俺たちは、すでにもう体力はほとんど残っていなかった。
だとしても、まだ可能性がある以上、ここで仲間の命を諦めることなんて、絶対にできない。
ニコラス達は、月明かりに照らされた森の中を、アークを抱えたまま必死に歩いて、教会を目指した。
教会にたどり着いた頃には、朝が近づいており、患者の列は途絶えていた。
教会の神父達が、驚いた顔で慌てて俺たちに駆け寄ってくれた。
その頃には、俺たちはふらふらと揺れながら、アークをなんとか掴んで、前へ進んでいるような状態だった。
「すみません、聖女様の治癒魔法をこの者に。」
声を出すことさえ一苦労だが、アークを思う気持ちだけは失っていない。
「わかりました。
私達が代わりに運びます。」
神父達は、すぐに教会の中へ、アークを担いで運び入れる。
その光景を安堵して見届けると、俺たち二人は力尽きるように、その場で意識を失った。
その日の魔獣は非常に強く、A級、さらにはS級も混じっており、どれだけ討伐しても、一向に数が減らない。
夕暮れが迫る頃、一緒に討伐に闘っていたアークが、S級の魔獣の鋭い爪に引っ掻かれて、背中に大きな傷を負い、その場に倒れ込んだ。
傷から大量の血が流れ、止まる様子はない。
みる間に顔色が青白くなり、呼吸が荒く、命の危険が迫っているのは、明らかだった。
「うぅ…。」
アークは倒れたまま立ち上がることもできず、痛みで呻いている。
ニコラスはアークのそばに跪き、彼をなんとか抱えて、安全な木の下まで運ぶと、考え込んだ。
こんなに大きな傷があるなら、すぐに治療をしないと助からないのはわかるが、教会まで運ぶ間、アークは生きていれるのだろうか。
だが今は、悩んでいる時間さえ惜しい。
隊長に隊を離れる許可を得て、もう一人の仲間と共にアークを担いで、聖女様のいる教会を目指す。
「まだ、死ぬなよ。
俺達が、聖女様に助けてもらえるように頼んでやる。」
そう言ってニコラス達は、アークを抱えて歩き出したが、森から教会までは遠いし、さらに森の中は鬱蒼として馬で駆けることもできない。
ここから全力で急いで歩いても、夜明け前にたどり着くことができるか怪しい。
聖女様は夜しか治療をしないのに、間に合うのだろうか?
今日一日、力の限り魔獣と闘って来た俺たちは、すでにもう体力はほとんど残っていなかった。
だとしても、まだ可能性がある以上、ここで仲間の命を諦めることなんて、絶対にできない。
ニコラス達は、月明かりに照らされた森の中を、アークを抱えたまま必死に歩いて、教会を目指した。
教会にたどり着いた頃には、朝が近づいており、患者の列は途絶えていた。
教会の神父達が、驚いた顔で慌てて俺たちに駆け寄ってくれた。
その頃には、俺たちはふらふらと揺れながら、アークをなんとか掴んで、前へ進んでいるような状態だった。
「すみません、聖女様の治癒魔法をこの者に。」
声を出すことさえ一苦労だが、アークを思う気持ちだけは失っていない。
「わかりました。
私達が代わりに運びます。」
神父達は、すぐに教会の中へ、アークを担いで運び入れる。
その光景を安堵して見届けると、俺たち二人は力尽きるように、その場で意識を失った。
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