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4.体調が悪い彼女
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ある日、ニコラスは、シアナから薬草採取の依頼が来てないことに気づいた。
もしかして、彼女は長期間仕事を休んでいるのか?
だとしたら、体調が悪いのか?
恋人として一人で暮らしている彼女のことが心配になり、シアナの家を訪れた。
家のドアがゆっくり開いて出てきたシアナは、明らかに顔色が青白く、目はどんよりとしていてとても疲れている様子だった。
「最近、連絡がなかったから心配して来たんだけど、家に入ってもいい?」
「うん、ごめんね。
どうぞ。」
久しぶりにあった彼女は元気がなく、目も虚ろに見える。
「シアナに食事を買って来たから、食べないか?」
「ありがとう、お腹が空いていたの。」
ニコラスが彼女が心配で買って来た料理を、すぐに食べれるように座っている彼女の目の前に置くと、ゆっくりとスプーンを動かして、食べ始めた。
ニコラスはシアナがほとんど食べ終わるのを待ってから、心配そうに尋ねる。
「どこか体調が悪いの?」
「ううん、そんなことないよ。」
「薬草採取は続けているの?
俺には依頼してこなかったけれど、他の人と行ってるなら、俺に気を使わなくていいんだよ。」
「ううん、前回ニコラスと一緒に行ったきり、薬草を全く採りに行っていないの。
なんだか元気が出なくて。」
「だったら、夜一緒に教会に行って、聖女様に治療してもらおうか?」
「ううん、いいの。」
「薬草を採りに行ってないなら、生活する金銭が足りなくなるんじゃないか?」
「うん、もしかしたら、家代が払えなくて、このお家も追い出されてしまうかもしれない。」
「それなら、俺の家で一緒に住まないか?
家代は俺が払うし、食事だってちゃんと食べた方がいい。」
「ニコラスは優しいね。
でも、それは無理なの。」
「何か悩みでもあるのか?」
「ううん、悩んでいる場合じゃなくて。」
「何?」
「ううん、いいの。
ごめん、ちょっと疲れたから寝る。」
そう言うと、シアナはすぐ後ろにあるベッドに横になり、すやすやと寝てしまった。
ニコラスは自分を部屋の中に入れたまま、シアナが寝てしまったことに驚きつつも、彼女への心配が深まるばかりだった。
俺の知っているシアナは、警戒心の強い女性で、今までどんなに俺の家に泊まらないかと誘っても、一切泊まろうとしなかった。
なのに今、寝ている間に俺に何されてもわからない状況で寝てしまっている。
今までのシアナの性格を知っている者として、この彼女の変化を前に、彼女の中で何かとんでもないことが起こっている気がして不安が募る。
ニコラスは、彼女の健康面だけでなく、精神面までもますます心配になる。
俺にとってシアナはかわいくて、優しい物静かな女性で、もっと俺に心を開いてほしいと思っていても、一人で生きてきた彼女はとても慎重だった。
だから、付き合い始めてから、俺は少しずつ彼女に俺を受け入れてほしいと願っている。
彼女に時々体調が悪そうな時があるのを感じていたが、最近特に具合が悪化しているようにみえて、この状況はとっても良くない気がしてならない。
俺の野生の勘が、警告を放っている。
シアナのことが心配だから、この家に一人残して帰るわけにもいかず、彼女のそばに座り、起きるまで見守ることにした。
夕方になると、シアナはぼんやりと起き上がり、俺がまだ部屋にいることに目を見開き驚いている。
「ニコラス、ごめん、私、寝ちゃったの?」
「眠いって言いながら、ベッドに入ってそのまま寝ちゃったよ。」
「そっか、ごめん、あんまり覚えてないの。」
シアナは申し訳なさそう言いながらも、チラチラと窓から外に目をやり、夜が近づいていることを気にしているようだ。
「これから、どこかに行くのか?」
「まさか。
もう一度寝るつもりよ。
悪いけど、そろそろ帰ってもらってもいい?」
シアナはそう話すが、何故か俺と目を合わせようとしない。
「ああ、わかった。」
俺は悪い予感がした。
シアナはこれから夜なのに、どこかに出かけるつもりじゃないのか?
それも、今思いついたのではなくて、用事があるのか、気もそぞろに見える。
だから、俺と夜は一緒にいれないって頑なに言い続けているんだ。
俺には内緒にして、男性相手の夜の仕事に行っているのか?
それとも、俺以外にも付き合っている男がいるのか?
仕事ならまだしも、付き合っている男なんて、そんなの許せない。
シアナをそいつに奪われたくない。
俺は追い出されるように、シアナの家を出ると、真っ直ぐ家に帰るふりをして、彼女の家のそばにある木の陰に隠れ、様子を伺った。
すると、すぐにシアナは慌てて家から出て来て、どこかに向かおうと足早に歩き出す。
恐れていた悪い予感が当たり、俺はショックで、膝から崩れ落ちそうになる。
シアナには、俺には言えない秘密の一面があるようだ。
真面目だと思っていた彼女が、俺に嘘をついてまで、出かけるぐらいだから、それは、俺にとって、つらい現実に違いない。
俺はシアナのことが、こんなにも好きなのに。
嫌だ、信じたくない。
悩みながらも、真実が知りたくて彼女の後を追った。
しばらく、シアナは振り返ることなく歩き続け、街の外れの教会にたどり着いた。
そこには、聖女様に会うための病人達の行列ができている。
しかし、シアナはその列には並ばず、教会の裏口から、まるでいつもそうしているかのようにサッと教会に入った。
俺が思っていたのとどれも違う。
シアナは教会で夜に何をしているんだろう?
体調が悪いのに、俺に嘘をついて教会の手伝いか?
よくわからないけれど、恐れていたような秘密の恋人や男相手の夜の仕事ではないようでホッとする。
シアナが隠そうとしているのなら、悪いことをしているのでは無さそうなので、俺はしばらくそのことに触れずに様子を見ることにした。
もしかして、彼女は長期間仕事を休んでいるのか?
だとしたら、体調が悪いのか?
恋人として一人で暮らしている彼女のことが心配になり、シアナの家を訪れた。
家のドアがゆっくり開いて出てきたシアナは、明らかに顔色が青白く、目はどんよりとしていてとても疲れている様子だった。
「最近、連絡がなかったから心配して来たんだけど、家に入ってもいい?」
「うん、ごめんね。
どうぞ。」
久しぶりにあった彼女は元気がなく、目も虚ろに見える。
「シアナに食事を買って来たから、食べないか?」
「ありがとう、お腹が空いていたの。」
ニコラスが彼女が心配で買って来た料理を、すぐに食べれるように座っている彼女の目の前に置くと、ゆっくりとスプーンを動かして、食べ始めた。
ニコラスはシアナがほとんど食べ終わるのを待ってから、心配そうに尋ねる。
「どこか体調が悪いの?」
「ううん、そんなことないよ。」
「薬草採取は続けているの?
俺には依頼してこなかったけれど、他の人と行ってるなら、俺に気を使わなくていいんだよ。」
「ううん、前回ニコラスと一緒に行ったきり、薬草を全く採りに行っていないの。
なんだか元気が出なくて。」
「だったら、夜一緒に教会に行って、聖女様に治療してもらおうか?」
「ううん、いいの。」
「薬草を採りに行ってないなら、生活する金銭が足りなくなるんじゃないか?」
「うん、もしかしたら、家代が払えなくて、このお家も追い出されてしまうかもしれない。」
「それなら、俺の家で一緒に住まないか?
家代は俺が払うし、食事だってちゃんと食べた方がいい。」
「ニコラスは優しいね。
でも、それは無理なの。」
「何か悩みでもあるのか?」
「ううん、悩んでいる場合じゃなくて。」
「何?」
「ううん、いいの。
ごめん、ちょっと疲れたから寝る。」
そう言うと、シアナはすぐ後ろにあるベッドに横になり、すやすやと寝てしまった。
ニコラスは自分を部屋の中に入れたまま、シアナが寝てしまったことに驚きつつも、彼女への心配が深まるばかりだった。
俺の知っているシアナは、警戒心の強い女性で、今までどんなに俺の家に泊まらないかと誘っても、一切泊まろうとしなかった。
なのに今、寝ている間に俺に何されてもわからない状況で寝てしまっている。
今までのシアナの性格を知っている者として、この彼女の変化を前に、彼女の中で何かとんでもないことが起こっている気がして不安が募る。
ニコラスは、彼女の健康面だけでなく、精神面までもますます心配になる。
俺にとってシアナはかわいくて、優しい物静かな女性で、もっと俺に心を開いてほしいと思っていても、一人で生きてきた彼女はとても慎重だった。
だから、付き合い始めてから、俺は少しずつ彼女に俺を受け入れてほしいと願っている。
彼女に時々体調が悪そうな時があるのを感じていたが、最近特に具合が悪化しているようにみえて、この状況はとっても良くない気がしてならない。
俺の野生の勘が、警告を放っている。
シアナのことが心配だから、この家に一人残して帰るわけにもいかず、彼女のそばに座り、起きるまで見守ることにした。
夕方になると、シアナはぼんやりと起き上がり、俺がまだ部屋にいることに目を見開き驚いている。
「ニコラス、ごめん、私、寝ちゃったの?」
「眠いって言いながら、ベッドに入ってそのまま寝ちゃったよ。」
「そっか、ごめん、あんまり覚えてないの。」
シアナは申し訳なさそう言いながらも、チラチラと窓から外に目をやり、夜が近づいていることを気にしているようだ。
「これから、どこかに行くのか?」
「まさか。
もう一度寝るつもりよ。
悪いけど、そろそろ帰ってもらってもいい?」
シアナはそう話すが、何故か俺と目を合わせようとしない。
「ああ、わかった。」
俺は悪い予感がした。
シアナはこれから夜なのに、どこかに出かけるつもりじゃないのか?
それも、今思いついたのではなくて、用事があるのか、気もそぞろに見える。
だから、俺と夜は一緒にいれないって頑なに言い続けているんだ。
俺には内緒にして、男性相手の夜の仕事に行っているのか?
それとも、俺以外にも付き合っている男がいるのか?
仕事ならまだしも、付き合っている男なんて、そんなの許せない。
シアナをそいつに奪われたくない。
俺は追い出されるように、シアナの家を出ると、真っ直ぐ家に帰るふりをして、彼女の家のそばにある木の陰に隠れ、様子を伺った。
すると、すぐにシアナは慌てて家から出て来て、どこかに向かおうと足早に歩き出す。
恐れていた悪い予感が当たり、俺はショックで、膝から崩れ落ちそうになる。
シアナには、俺には言えない秘密の一面があるようだ。
真面目だと思っていた彼女が、俺に嘘をついてまで、出かけるぐらいだから、それは、俺にとって、つらい現実に違いない。
俺はシアナのことが、こんなにも好きなのに。
嫌だ、信じたくない。
悩みながらも、真実が知りたくて彼女の後を追った。
しばらく、シアナは振り返ることなく歩き続け、街の外れの教会にたどり着いた。
そこには、聖女様に会うための病人達の行列ができている。
しかし、シアナはその列には並ばず、教会の裏口から、まるでいつもそうしているかのようにサッと教会に入った。
俺が思っていたのとどれも違う。
シアナは教会で夜に何をしているんだろう?
体調が悪いのに、俺に嘘をついて教会の手伝いか?
よくわからないけれど、恐れていたような秘密の恋人や男相手の夜の仕事ではないようでホッとする。
シアナが隠そうとしているのなら、悪いことをしているのでは無さそうなので、俺はしばらくそのことに触れずに様子を見ることにした。
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