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7.覚悟
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ケアリー王女の周辺の調査は、王宮内の警備が厳しく、数日経ってもほとんど情報を得ることができなかった。
ドリューがセリーナの邸に、話をしに来てくれた。
「セリーナ、大丈夫かい?」
ドリューは心配そうに私を覗き込む。
「ええ、なんとか。
お母様は少しずつ痩せ細っていっているわ。
ねぇ、ドリュー、私達もう諦めて婚約破棄すべきかしら?
だってどちらにせよ、結婚なんて無理だと思うわ。
もし、私達が別れたら目的が達成できたからと、お父様の疑惑がはれて、戻って来ることはないかしら?」
「どうしたの?
セリーナらしくないよ。
僕達は最後まで諦めないことにしてるよね?」
ドリューが心配そうに、私を抱きしめる。
「だって、いくら私達が好き合っていても、ドリューだって犯人の容疑がかけられている者の娘とは結婚できないでしょ。
私のせいでお父様もお母様も不幸にしてしまっているのよ。
あんなに愛し合っているのに、離れ離れになってしまって。
特にお父様は、牢に閉じ込められて、辛い思いをしているだろうし、名誉だって傷ついたままだわ。
もし、私が男爵令嬢ならケアリー王女に仕えて、自分で彼女の周りを調べられるのに。」
「ケアリー王女にセリーナが近づくのは、一番危ないよ。
次は君が狙われるかもしれないんだ。」
「だって、もうそれしか方法が思いつかないわ。」
「わかった。
じゃあ僕がケアリー王女に接近して、探って来るよ。
もし、彼女が僕と結婚したいがために、そんなことをしているのなら、僕には毒を使わないだろうから。
でも、それだと、僕がセリーナを捨てて、ケアリー王女に乗り換えたと噂があがるだろう。
でも、僕の心はセリーナのそばにある。
だから、どんな噂が立っても、そのことを忘れないで。
もし、犯人がケアリー王女でなかったり、何も証拠を掴めなければ、僕は彼女に絡め取られて結婚せざるを得ないかもしれない。
それでも、僕はできるだけのことをする。
セリーナを愛しているんだ。」
「ドリュー、あなたを信じるわ。
でも、私達のために今度はドリューが犠牲になるかもしれないなんて、本当に酷い話だわ。
私達がただ普通に愛し合って結婚することが、こんなにも難しいなんて。」
「本当にそうだね。
だから、僕にはご先祖様の遺言があったんだ。
ここまでのことが起こらなければ、僕の想いを守ってくれていたんだ。
でも、今回はそれだけでは守れない相手に狙われてしまった。
だから、僕は自分の力で道を切り開く。
セリーナとの結婚を最後まで諦めないよ。」
「ドリュー、私はあなたが好きよ。」
ドリューは私の顔をじっと見つめて、最後に微笑んだ後、静かに帰って行った。
子供の頃は、私の方がお姉さんだと思っていた。
けれども、ドリューはどんどん大人になって、私のためにおそらく人生で一番嫌なことをしてくれようとしている。
ドリュー、私はあなたを信じている。
でも、不安はあるの。
「父上、お話があります。」
僕は邸に戻ると、そのまま父の執務室に向かった。
父は机から顔を上げて、僕を見る。
「何だ?」
「セリーナにも話して来ましたが、僕がケアリー王女に接近して調べて来ます。」
「それが一番手っ取り早いけれど、リスクが高いぞ。」
「はい、理解しております。
でも、こうでもしないとセリーナと結婚できないのならば、できることをするまでです。」
「覚悟があるなら、行って来い。」
「ありがとうございます。
父上は僕のすることに、反対しないんですね。
僕は不思議でした。
父上は忙しくて、僕とそれほど一緒にいれたわけじゃない。
でも、僕の想いを理解してくれる。
どうしてですか?」
「先代の遺言があるだろう。
あれは僕達エバンス家の男達が好きな女性と結ばれてほしいと言う願いから来ている。
エバンス家の男達は、生涯たった一人のドリューの場合は、ケンブル家の女性しか愛さないんだ。
例外もあるけれど。
僕だって、その女性と結ばれるためなら強くなるし、どんなことでもして来た。
ドリューもすでにその思いを感じているだろう?」
「はい、父上。」
「だから、ドリューは自分の信じる道を進んでいい。
こんな時が来ることが、僕にはわかっていた。
だからこそ、強くなったし、ドリューを支えられるようになった。」
「ありがとうございます、父上。」
その言葉を聞いて、僕は涙が込み上げる。
父上はいつも忙しく、もしかしたら、僕はあまり愛されていないかもしれないと感じていた。
けれども、父はいつでも僕を見守り、僕のために動いてくれていた。
そして、詳しく語らずとも、僕の想いを一番理解してくれている。
この父のところに生まれて来て良かった。
「僕は必ず証拠を掴んで、ケアリー王女の罪を暴いて、ケンブル侯爵を解放する。
そして、セリーナと結婚する。」
「わかった、くれぐれも慎重に動くんだぞ。
そして、ケアリー王女に近づく時は、誘惑に気をつけるんだ。
絶対に彼女と二人きりになってはいけない。
手を出したなどと言われたら、責任を取れと言われて、逃げられなくなる。
そして、父が反対するから、ケアリー王女と結婚できないと伝えるんだ。
そうすれば、焦った彼女が動きをみせるはずだ。
その時、勝負をかける。
それと、ドリューの警護にテッドをつける。
彼はシャノンのためになら、動く男だから信頼できる。
必ず彼と行動を共にするんだ。」
「わかりました。」
クロードはすぐに、テッドを呼び寄せた。
「エバンス公爵様、お呼びでしょうか?」
「ああ、すまないがドリューがケアリー王女に接近して、証拠がないか探りに行く。
君も一緒に行って、息子を守ってやってほしい。
この作戦が失敗すれば、シャノンは二度とケンブル侯爵と会えず、泣きながら祈る毎日になるだろう。
君にはそれが耐えられるのか?」
「…わかりました。
あなたは変わらない。
シャノン様のためになら、子供すら使うんですね。」
「いや、息子の希望を叶えてやるんだ。
エバンスの男は、シャノンの子供しか愛さないからな。
テッドだって、シャノンのためにしか動かない。
結局僕を一番理解しているのは、テッドだろ?」
「その通りですね。
では行って参ります。」
「頼んだぞ。」
ドリューがセリーナの邸に、話をしに来てくれた。
「セリーナ、大丈夫かい?」
ドリューは心配そうに私を覗き込む。
「ええ、なんとか。
お母様は少しずつ痩せ細っていっているわ。
ねぇ、ドリュー、私達もう諦めて婚約破棄すべきかしら?
だってどちらにせよ、結婚なんて無理だと思うわ。
もし、私達が別れたら目的が達成できたからと、お父様の疑惑がはれて、戻って来ることはないかしら?」
「どうしたの?
セリーナらしくないよ。
僕達は最後まで諦めないことにしてるよね?」
ドリューが心配そうに、私を抱きしめる。
「だって、いくら私達が好き合っていても、ドリューだって犯人の容疑がかけられている者の娘とは結婚できないでしょ。
私のせいでお父様もお母様も不幸にしてしまっているのよ。
あんなに愛し合っているのに、離れ離れになってしまって。
特にお父様は、牢に閉じ込められて、辛い思いをしているだろうし、名誉だって傷ついたままだわ。
もし、私が男爵令嬢ならケアリー王女に仕えて、自分で彼女の周りを調べられるのに。」
「ケアリー王女にセリーナが近づくのは、一番危ないよ。
次は君が狙われるかもしれないんだ。」
「だって、もうそれしか方法が思いつかないわ。」
「わかった。
じゃあ僕がケアリー王女に接近して、探って来るよ。
もし、彼女が僕と結婚したいがために、そんなことをしているのなら、僕には毒を使わないだろうから。
でも、それだと、僕がセリーナを捨てて、ケアリー王女に乗り換えたと噂があがるだろう。
でも、僕の心はセリーナのそばにある。
だから、どんな噂が立っても、そのことを忘れないで。
もし、犯人がケアリー王女でなかったり、何も証拠を掴めなければ、僕は彼女に絡め取られて結婚せざるを得ないかもしれない。
それでも、僕はできるだけのことをする。
セリーナを愛しているんだ。」
「ドリュー、あなたを信じるわ。
でも、私達のために今度はドリューが犠牲になるかもしれないなんて、本当に酷い話だわ。
私達がただ普通に愛し合って結婚することが、こんなにも難しいなんて。」
「本当にそうだね。
だから、僕にはご先祖様の遺言があったんだ。
ここまでのことが起こらなければ、僕の想いを守ってくれていたんだ。
でも、今回はそれだけでは守れない相手に狙われてしまった。
だから、僕は自分の力で道を切り開く。
セリーナとの結婚を最後まで諦めないよ。」
「ドリュー、私はあなたが好きよ。」
ドリューは私の顔をじっと見つめて、最後に微笑んだ後、静かに帰って行った。
子供の頃は、私の方がお姉さんだと思っていた。
けれども、ドリューはどんどん大人になって、私のためにおそらく人生で一番嫌なことをしてくれようとしている。
ドリュー、私はあなたを信じている。
でも、不安はあるの。
「父上、お話があります。」
僕は邸に戻ると、そのまま父の執務室に向かった。
父は机から顔を上げて、僕を見る。
「何だ?」
「セリーナにも話して来ましたが、僕がケアリー王女に接近して調べて来ます。」
「それが一番手っ取り早いけれど、リスクが高いぞ。」
「はい、理解しております。
でも、こうでもしないとセリーナと結婚できないのならば、できることをするまでです。」
「覚悟があるなら、行って来い。」
「ありがとうございます。
父上は僕のすることに、反対しないんですね。
僕は不思議でした。
父上は忙しくて、僕とそれほど一緒にいれたわけじゃない。
でも、僕の想いを理解してくれる。
どうしてですか?」
「先代の遺言があるだろう。
あれは僕達エバンス家の男達が好きな女性と結ばれてほしいと言う願いから来ている。
エバンス家の男達は、生涯たった一人のドリューの場合は、ケンブル家の女性しか愛さないんだ。
例外もあるけれど。
僕だって、その女性と結ばれるためなら強くなるし、どんなことでもして来た。
ドリューもすでにその思いを感じているだろう?」
「はい、父上。」
「だから、ドリューは自分の信じる道を進んでいい。
こんな時が来ることが、僕にはわかっていた。
だからこそ、強くなったし、ドリューを支えられるようになった。」
「ありがとうございます、父上。」
その言葉を聞いて、僕は涙が込み上げる。
父上はいつも忙しく、もしかしたら、僕はあまり愛されていないかもしれないと感じていた。
けれども、父はいつでも僕を見守り、僕のために動いてくれていた。
そして、詳しく語らずとも、僕の想いを一番理解してくれている。
この父のところに生まれて来て良かった。
「僕は必ず証拠を掴んで、ケアリー王女の罪を暴いて、ケンブル侯爵を解放する。
そして、セリーナと結婚する。」
「わかった、くれぐれも慎重に動くんだぞ。
そして、ケアリー王女に近づく時は、誘惑に気をつけるんだ。
絶対に彼女と二人きりになってはいけない。
手を出したなどと言われたら、責任を取れと言われて、逃げられなくなる。
そして、父が反対するから、ケアリー王女と結婚できないと伝えるんだ。
そうすれば、焦った彼女が動きをみせるはずだ。
その時、勝負をかける。
それと、ドリューの警護にテッドをつける。
彼はシャノンのためになら、動く男だから信頼できる。
必ず彼と行動を共にするんだ。」
「わかりました。」
クロードはすぐに、テッドを呼び寄せた。
「エバンス公爵様、お呼びでしょうか?」
「ああ、すまないがドリューがケアリー王女に接近して、証拠がないか探りに行く。
君も一緒に行って、息子を守ってやってほしい。
この作戦が失敗すれば、シャノンは二度とケンブル侯爵と会えず、泣きながら祈る毎日になるだろう。
君にはそれが耐えられるのか?」
「…わかりました。
あなたは変わらない。
シャノン様のためになら、子供すら使うんですね。」
「いや、息子の希望を叶えてやるんだ。
エバンスの男は、シャノンの子供しか愛さないからな。
テッドだって、シャノンのためにしか動かない。
結局僕を一番理解しているのは、テッドだろ?」
「その通りですね。
では行って参ります。」
「頼んだぞ。」
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