18 / 20
18.あの森へ
しおりを挟む
ベッドの上で縛られたままのセシーリアは
「せめて、この縄を解いて」
と懇願するが、バーンハルトは、
「結婚式の前に解いてやる。」
と頑なに解こうとしない。
それどころか、動けずにベッドに横たわっている姿を見て、バーンハルトは納得した様子で、
「俺は忙しいから、ゆっくり休め。」
と言い残して、部屋を後にした。
諦めて周りを見渡すと、ここは婚約時に使っていた部屋であった。
あの頃は結婚を間近にして、バーンハルトと幸せになる夢を見ていた。
バーンハルトは、一連の出来事で、私を信用することがないにも関わらず、絶対に離そうとしない。
話合いができない以上、私はもうバーンハルトの気持ちに寄り添うことができない。
多分このまま結婚しても、私達は二度と心が交わることはないだろう。
変えられない過去を振り返っても意味がない。
バーンハルトとここまで話し合うことができないのなら、もう逃げるしかない。
私は諦めの悪い女なのだ。
最後まで抵抗するし、諦めない。
バーンハルトが離れた今、やっとドレスの下に隠していた剣が使える時が来た。
城を逃げ出そう。
両手両足を縛られていたって、剣さえあれば、縄を解くことはできそうだ。
縛られたままの体を捻りながら、なんとかドレスの下の短剣で縄を切り、解くことができた。
クローゼットを覗き、着ているドレスを脱ぎ、王都散策用に用意されていたおとなしめのワンピースに着替える。
メインデルト王国で、ユリウスがくれた騎士服があったら、どれだけ動き易いか知ってしまったセシーリアには、ワンピースであろうとも、これからの旅路を考えると、気が重くなるが仕方がない。
まずは、羊皮紙にバーンハルトへの手紙を書き、手紙とハイヒールを手に取った。
そして、内ドアからバーンハルトとの夫婦の寝室を伝って、バーンハルトの部屋へと移動する。
バーンハルトは忙しいと言っていたから、まだ執務室にいるだろう。
案の定、バーンハルトの部屋は誰もいない。
以前バーンハルトとの逃亡に使った隠し通路を使って、城の裏門の外に出る。
裏門前は、森に抜ける道と、その横の切り立った崖がある。
そして、その反対側には、落ちたら死体があがらないと言われる神秘的な湖が広がる。
この湖があるため、マイルズ王宮は周りの警備の人員が他の国の王宮より、少なくて済むと言われている。
湖の手前に手紙とハイヒールを置き、あたかも湖に飛び込んだ風を装った。
後はバーンハルトが勘違いしてくれれば、私は自由になれる。
裏門の横には、以前逃亡に使ったような馬が繋がれている。
あえて、この馬を使わないことで、逃走してないと思うだろう。
馬を使えないから、歩くと大分かかるけど、あの森の洞窟のある場所に行こう。
あそこなら人目につかず、しばらく身を隠せる。
セシーリアは道の横の森の茂みを歩く。
茂みを歩くことで、万が一追っ手がいたとしても、森の中に潜んでやり過ごすつもりだ。
見つかったら、この計画は水の泡になり、今度こそこそ酷い目に合うかもしれない。
慌てずに慎重にいこう。
前回の遭難と違って、今回は剣とユリウスに習ったサバイバル術がある。
私にはできる。
「せめて、この縄を解いて」
と懇願するが、バーンハルトは、
「結婚式の前に解いてやる。」
と頑なに解こうとしない。
それどころか、動けずにベッドに横たわっている姿を見て、バーンハルトは納得した様子で、
「俺は忙しいから、ゆっくり休め。」
と言い残して、部屋を後にした。
諦めて周りを見渡すと、ここは婚約時に使っていた部屋であった。
あの頃は結婚を間近にして、バーンハルトと幸せになる夢を見ていた。
バーンハルトは、一連の出来事で、私を信用することがないにも関わらず、絶対に離そうとしない。
話合いができない以上、私はもうバーンハルトの気持ちに寄り添うことができない。
多分このまま結婚しても、私達は二度と心が交わることはないだろう。
変えられない過去を振り返っても意味がない。
バーンハルトとここまで話し合うことができないのなら、もう逃げるしかない。
私は諦めの悪い女なのだ。
最後まで抵抗するし、諦めない。
バーンハルトが離れた今、やっとドレスの下に隠していた剣が使える時が来た。
城を逃げ出そう。
両手両足を縛られていたって、剣さえあれば、縄を解くことはできそうだ。
縛られたままの体を捻りながら、なんとかドレスの下の短剣で縄を切り、解くことができた。
クローゼットを覗き、着ているドレスを脱ぎ、王都散策用に用意されていたおとなしめのワンピースに着替える。
メインデルト王国で、ユリウスがくれた騎士服があったら、どれだけ動き易いか知ってしまったセシーリアには、ワンピースであろうとも、これからの旅路を考えると、気が重くなるが仕方がない。
まずは、羊皮紙にバーンハルトへの手紙を書き、手紙とハイヒールを手に取った。
そして、内ドアからバーンハルトとの夫婦の寝室を伝って、バーンハルトの部屋へと移動する。
バーンハルトは忙しいと言っていたから、まだ執務室にいるだろう。
案の定、バーンハルトの部屋は誰もいない。
以前バーンハルトとの逃亡に使った隠し通路を使って、城の裏門の外に出る。
裏門前は、森に抜ける道と、その横の切り立った崖がある。
そして、その反対側には、落ちたら死体があがらないと言われる神秘的な湖が広がる。
この湖があるため、マイルズ王宮は周りの警備の人員が他の国の王宮より、少なくて済むと言われている。
湖の手前に手紙とハイヒールを置き、あたかも湖に飛び込んだ風を装った。
後はバーンハルトが勘違いしてくれれば、私は自由になれる。
裏門の横には、以前逃亡に使ったような馬が繋がれている。
あえて、この馬を使わないことで、逃走してないと思うだろう。
馬を使えないから、歩くと大分かかるけど、あの森の洞窟のある場所に行こう。
あそこなら人目につかず、しばらく身を隠せる。
セシーリアは道の横の森の茂みを歩く。
茂みを歩くことで、万が一追っ手がいたとしても、森の中に潜んでやり過ごすつもりだ。
見つかったら、この計画は水の泡になり、今度こそこそ酷い目に合うかもしれない。
慌てずに慎重にいこう。
前回の遭難と違って、今回は剣とユリウスに習ったサバイバル術がある。
私にはできる。
25
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
(完)婚約解消からの愛は永遠に
青空一夏
恋愛
エリザベスは、火事で頬に火傷をおった。その為に、王太子から婚約解消をされる。
両親からも疎まれ妹からも蔑まれたエリザベスだが・・・・・・
5話プラスおまけで完結予定。
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
本日はお日柄も良く、白い結婚おめでとうございます。
待鳥園子
恋愛
とある誤解から、白い結婚を二年続け別れてしまうはずだった夫婦。
しかし、別れる直前だったある日、夫の態度が豹変してしまう出来事が起こった。
※両片思い夫婦の誤解が解けるさまを、にやにやしながら読むだけの短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる