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18.あの森へ

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 ベッドの上で縛られたままのセシーリアは

「せめて、この縄を解いて」

 と懇願するが、バーンハルトは、

「結婚式の前に解いてやる。」

 と頑なに解こうとしない。

 それどころか、動けずにベッドに横たわっている姿を見て、バーンハルトは納得した様子で、

「俺は忙しいから、ゆっくり休め。」

 と言い残して、部屋を後にした。

 諦めて周りを見渡すと、ここは婚約時に使っていた部屋であった。

 あの頃は結婚を間近にして、バーンハルトと幸せになる夢を見ていた。

 バーンハルトは、一連の出来事で、私を信用することがないにも関わらず、絶対に離そうとしない。

 話合いができない以上、私はもうバーンハルトの気持ちに寄り添うことができない。

 多分このまま結婚しても、私達は二度と心が交わることはないだろう。

 変えられない過去を振り返っても意味がない。

 バーンハルトとここまで話し合うことができないのなら、もう逃げるしかない。

 私は諦めの悪い女なのだ。

 最後まで抵抗するし、諦めない。

 バーンハルトが離れた今、やっとドレスの下に隠していた剣が使える時が来た。

 城を逃げ出そう。

 両手両足を縛られていたって、剣さえあれば、縄を解くことはできそうだ。

 縛られたままの体を捻りながら、なんとかドレスの下の短剣で縄を切り、解くことができた。

 クローゼットを覗き、着ているドレスを脱ぎ、王都散策用に用意されていたおとなしめのワンピースに着替える。

 メインデルト王国で、ユリウスがくれた騎士服があったら、どれだけ動き易いか知ってしまったセシーリアには、ワンピースであろうとも、これからの旅路を考えると、気が重くなるが仕方がない。

 まずは、羊皮紙にバーンハルトへの手紙を書き、手紙とハイヒールを手に取った。

 そして、内ドアからバーンハルトとの夫婦の寝室を伝って、バーンハルトの部屋へと移動する。

 バーンハルトは忙しいと言っていたから、まだ執務室にいるだろう。

 案の定、バーンハルトの部屋は誰もいない。

 以前バーンハルトとの逃亡に使った隠し通路を使って、城の裏門の外に出る。

 裏門前は、森に抜ける道と、その横の切り立った崖がある。

 そして、その反対側には、落ちたら死体があがらないと言われる神秘的な湖が広がる。

 この湖があるため、マイルズ王宮は周りの警備の人員が他の国の王宮より、少なくて済むと言われている。

 湖の手前に手紙とハイヒールを置き、あたかも湖に飛び込んだ風を装った。

 後はバーンハルトが勘違いしてくれれば、私は自由になれる。

 裏門の横には、以前逃亡に使ったような馬が繋がれている。

 あえて、この馬を使わないことで、逃走してないと思うだろう。

 馬を使えないから、歩くと大分かかるけど、あの森の洞窟のある場所に行こう。

 あそこなら人目につかず、しばらく身を隠せる。

 セシーリアは道の横の森の茂みを歩く。

 茂みを歩くことで、万が一追っ手がいたとしても、森の中に潜んでやり過ごすつもりだ。

 見つかったら、この計画は水の泡になり、今度こそこそ酷い目に合うかもしれない。

 慌てずに慎重にいこう。

 前回の遭難と違って、今回は剣とユリウスに習ったサバイバル術がある。

 私にはできる。
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