12 / 20
12.ユリウスが不在の時
しおりを挟む
メインデルト王国の宰相を務める家臣の働きで、旧西国はメインデルト王国の一部として、うまく回り出している。
そこに、視察という形でユリウスは向かうことになった。
セシーリアはメインデルト王国の形ばかりの代理人となっている。
実際はしっかりとした家臣達がいるので、何かをするわけではないけれど、代理人がいた方が家臣達が動き易いと説得されて、なっていた。
そんな時、お茶会の希望が令嬢達から上がっているとのことで、庭園で開催する。
サーナによると、この国の中心となる令嬢達だと。
親を含めた人間関係を頭に叩き込み、いざ、開催すると6人の令嬢達はバーンハルトの一件を知っているらしく、セシーリアに同情的だった。
だか、政略的理由でセシーリアがユリウスと結婚することになりそうだと伝えると、令嬢達はそれぞれ涙を流したり、顔が引き攣っていたり、不機嫌に退出したり、さまざまな反応を見せた。
それぞれがユリウスとの結婚を夢見ていたのだから、その反応は当然だし、決まっていることを内緒にして、令嬢達の若い大切な時間を無駄に奪いたくないという思いだった。
私も結婚をする直前に今回のような展開になるとは夢にも思わなかった。
きっと彼女達にもすぐに親達が新しい男性を紹介するのだろう。
そのためにも、わかっているのに引き伸ばすのではなく、彼女達に誠意をもって対応したかった。
今は理解されなくとも。
一人ずつ帰って行く中、最後に令嬢が一人だけ残った。
「セシーリア様、ご婚約おめでとうございます、でいいのでしょうか?」
「まだ、ユリウス様には待っていただいているところです。
でも、フェルミノ王が強く望んでいるので、内々には進んでいるようです。」
「では何故、今私達に教えてくれたのですか?」
「みなさんの時間を無駄にしたくないからです。
私の勝手で正式には発表していませんが、この決定は揺るぎないでしょう。
希望を持たれたまま、決まっているのに、皆さんの時間を奪うのはもうしわけなくて。」
「そのせいで、今のように嫌な思いをされることがわかっていてもですか?」
「私は結婚直前に命までかけて、守ろうとした相手を諦めさせられ、すぐにユリウス様に変えられました。
ユリウス様は幼い頃からの知り合いでしたし、とても素晴らしい方です。
なので、結婚が嫌なのではなく、少し時間が欲しいだけです。
私は立場上、政略結婚以外には選択肢などありません。
それでも、言われるままにするしかない自分が、時々嫌になるのです。
だからこそ、同じ思いをされるみなさんには誠実にありたいと思いまして、罵倒されることも覚悟の上で、ここに来ました。
みなさん長い間、ユリウス様と結婚する希望を持たれて生きて来たのでしょうから。
突然、私が入って来て、夢をぶち壊す。
嫌われて当然です。」
「確かに、私達はユリウス様と結婚したかったですけれど、セシーリア様のように婚約者にまだなれていない状態なので、私達の中から自分が選ばれるとも限らないわけでして、私は仕方がないと思います。」
「あなたは冷静ですね。
イボンヌ様とお呼びしても?」
「私はただの公爵令嬢なので、イボンヌとお呼びください。」
「では、イボンヌさん。
あなたとお友達になりたいわ。」
「ありがとうございます。
こちらこそ光栄です。
ところで、一つ伺ってもいいですか?」
「はい、もちろんです。」
「では、セシーリア様が元々結婚するのは、いつのご予定だったのですか?」
「花まつりの前でした。」
「そうですか、わかりました。」
「それが何か?」
「ユリウス様は花まつりが終わったら、
婚約者を決定すると話していました。
今まで、ユリウス様に女性がいたことはなく、どんなに周りの方々に結婚を進言されても決して頷かなかった。
なのに、突然でした。
あなたがメインデルト国に来てから、いかにあなたをユリウス様が大切にしているか、各方面から聞こえていました。
ユリウス様はあなたが結婚したら、自分も別の方と結婚しようと思っていらっしゃったのだと思います。
多分、ユリウス様はずっとあなたしか見ていなかったのです。
あなたが結婚したら、諦めようと。
でしたらもう、私達はユリウス様が幸せになることを願うしかありません。」
そう言って諦めの表情を見せたイボンヌは、初めて本心を見せたようだった。
そこに、視察という形でユリウスは向かうことになった。
セシーリアはメインデルト王国の形ばかりの代理人となっている。
実際はしっかりとした家臣達がいるので、何かをするわけではないけれど、代理人がいた方が家臣達が動き易いと説得されて、なっていた。
そんな時、お茶会の希望が令嬢達から上がっているとのことで、庭園で開催する。
サーナによると、この国の中心となる令嬢達だと。
親を含めた人間関係を頭に叩き込み、いざ、開催すると6人の令嬢達はバーンハルトの一件を知っているらしく、セシーリアに同情的だった。
だか、政略的理由でセシーリアがユリウスと結婚することになりそうだと伝えると、令嬢達はそれぞれ涙を流したり、顔が引き攣っていたり、不機嫌に退出したり、さまざまな反応を見せた。
それぞれがユリウスとの結婚を夢見ていたのだから、その反応は当然だし、決まっていることを内緒にして、令嬢達の若い大切な時間を無駄に奪いたくないという思いだった。
私も結婚をする直前に今回のような展開になるとは夢にも思わなかった。
きっと彼女達にもすぐに親達が新しい男性を紹介するのだろう。
そのためにも、わかっているのに引き伸ばすのではなく、彼女達に誠意をもって対応したかった。
今は理解されなくとも。
一人ずつ帰って行く中、最後に令嬢が一人だけ残った。
「セシーリア様、ご婚約おめでとうございます、でいいのでしょうか?」
「まだ、ユリウス様には待っていただいているところです。
でも、フェルミノ王が強く望んでいるので、内々には進んでいるようです。」
「では何故、今私達に教えてくれたのですか?」
「みなさんの時間を無駄にしたくないからです。
私の勝手で正式には発表していませんが、この決定は揺るぎないでしょう。
希望を持たれたまま、決まっているのに、皆さんの時間を奪うのはもうしわけなくて。」
「そのせいで、今のように嫌な思いをされることがわかっていてもですか?」
「私は結婚直前に命までかけて、守ろうとした相手を諦めさせられ、すぐにユリウス様に変えられました。
ユリウス様は幼い頃からの知り合いでしたし、とても素晴らしい方です。
なので、結婚が嫌なのではなく、少し時間が欲しいだけです。
私は立場上、政略結婚以外には選択肢などありません。
それでも、言われるままにするしかない自分が、時々嫌になるのです。
だからこそ、同じ思いをされるみなさんには誠実にありたいと思いまして、罵倒されることも覚悟の上で、ここに来ました。
みなさん長い間、ユリウス様と結婚する希望を持たれて生きて来たのでしょうから。
突然、私が入って来て、夢をぶち壊す。
嫌われて当然です。」
「確かに、私達はユリウス様と結婚したかったですけれど、セシーリア様のように婚約者にまだなれていない状態なので、私達の中から自分が選ばれるとも限らないわけでして、私は仕方がないと思います。」
「あなたは冷静ですね。
イボンヌ様とお呼びしても?」
「私はただの公爵令嬢なので、イボンヌとお呼びください。」
「では、イボンヌさん。
あなたとお友達になりたいわ。」
「ありがとうございます。
こちらこそ光栄です。
ところで、一つ伺ってもいいですか?」
「はい、もちろんです。」
「では、セシーリア様が元々結婚するのは、いつのご予定だったのですか?」
「花まつりの前でした。」
「そうですか、わかりました。」
「それが何か?」
「ユリウス様は花まつりが終わったら、
婚約者を決定すると話していました。
今まで、ユリウス様に女性がいたことはなく、どんなに周りの方々に結婚を進言されても決して頷かなかった。
なのに、突然でした。
あなたがメインデルト国に来てから、いかにあなたをユリウス様が大切にしているか、各方面から聞こえていました。
ユリウス様はあなたが結婚したら、自分も別の方と結婚しようと思っていらっしゃったのだと思います。
多分、ユリウス様はずっとあなたしか見ていなかったのです。
あなたが結婚したら、諦めようと。
でしたらもう、私達はユリウス様が幸せになることを願うしかありません。」
そう言って諦めの表情を見せたイボンヌは、初めて本心を見せたようだった。
25
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
離婚された夫人は、学生時代を思いだして、結婚をやり直します。
甘い秋空
恋愛
夫婦として何事もなく過ごした15年間だったのに、離婚され、一人娘とも離され、急遽、屋敷を追い出された夫人。
さらに、異世界からの聖女召喚が成功したため、聖女の職も失いました。
これまで誤って召喚されてしまった女性たちを、保護している王弟陛下の隠し部屋で、暮らすことになりましたが……
【完結済】侯爵令息様のお飾り妻
鳴宮野々花@初書籍発売中【二度婚約破棄】
恋愛
没落の一途をたどるアップルヤード伯爵家の娘メリナは、とある理由から美しい侯爵令息のザイール・コネリーに“お飾りの妻になって欲しい”と持ちかけられる。期間限定のその白い結婚は互いの都合のための秘密の契約結婚だったが、メリナは過去に優しくしてくれたことのあるザイールに、ひそかにずっと想いを寄せていて─────
嫌われ王妃の一生 ~ 将来の王を導こうとしたが、王太子優秀すぎません? 〜
悠月 星花
恋愛
嫌われ王妃の一生 ~ 後妻として王妃になりましたが、王太子を亡き者にして処刑になるのはごめんです。将来の王を導こうと決心しましたが、王太子優秀すぎませんか? 〜
嫁いだ先の小国の王妃となった私リリアーナ。
陛下と夫を呼ぶが、私には見向きもせず、「処刑せよ」と無慈悲な王の声。
無視をされ続けた心は、逆らう気力もなく項垂れ、首が飛んでいく。
夢を見ていたのか、自身の部屋で姉に起こされ目を覚ます。
怖い夢をみたと姉に甘えてはいたが、現実には先の小国へ嫁ぐことは決まっており……
あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです
あなはにす
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」
伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です
朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。
ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。
「私がお助けしましょう!」
レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる