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7.笑わない王子

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 その頃、王宮ではいよいよライナートはげっそり痩せこけ、機械のように何があっても、無表情になって、ただ働くそんな王子になっていた。

 周りは心配で、少しでも、気持ちが動くことをさせようとするが、効果は無かった。

 ヤンセンが、

「ライナート様、王宮で舞踏会でも開きますか?狩りなどは?」

 と言っても、

「僕のためなら、何もいらない。
 キアーラがやりたいなら、やってやってくれ。」

 そう言うばかりだった。
 しかし、ある時、ライナートが、

「オーレリアは無事に元気でやっているだろうか?」

 と呟いた。

 ライナートの心が久しぶりに動いている。

 すかさず、ヤンセンは、

「では、影をつけて、報告させますか?
 その方が彼女も安全です。
 会うことはなくとも。」

「そうだな。
 頼む。」

 ヤンセンはすぐに動いた。

 そして、今報告書をライナートは読んでいる。
 とても、真剣に。

 内容は、オーレリアが、王都の食堂で働いており、オーレリアのおかげで、とても繁盛しているというものだった。

 オーレリアが最初は注文を取っていたが、あまりにオーレリア目当ての男達が多すぎて、今は厨房で働いており、姿は見られないとのことだった。

 しかし、オーレリアの作る料理が美味しいので、みんな満足して食べていると。
 一番人気は、シチューだとあった。

 僕の好きなシチューだ。

「また、食べたい。」

 その一言を漏らすと、ヤンセンは、

「ぜひ行きましょう。
 会うわけじゃないのですから。
 カツラを被れば大丈夫です。」

「そうかな。
 行きたいな。」

 最近激痩せの王子が、食に興味を持つのは、ヤンセンにとって、希望が見えた瞬間だった。
 王子が心配でならないのだ。

 なんなら、交渉してお持ち帰りの物を毎日ほしいぐらいだ。

 それを食べたら、ライナートは元気を取り戻す、ヤンセンはそう確信している。

 次の日、カツラを被り二人は食堂に入った。

 そして、久しぶりにオーレリアのシチューを食べたライナートは、涙を流した。
 そんな、ライナートをヤンセンは温かい目で見守った。

「時間を作って、また、参りましょう。」

 そう言うと、ライナートは静かに何度も頷いた。
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