僕の思い出

6話 悲しみ

香音が集中治療室へと運ばれて1ヶ月がたとうとしていたとき、俺の耳にとある話が入り込んできた。香音が目を覚ましたそうだ。
俺は兄に付き添ってもらい集中治療室の中に特別に入れてもらった。
「香音。」
「幸…助…。」
震えながらも声を出してくれた。
「幸助…。私のこと…好きになってくれて…ありがとう…」
そう言うと、目を閉じてしまった。
それと同時にバイタルサイン測定器の音が部屋中に鳴り響いた。
香音の心臓が止まったからだ。
「香音！」
俺はそう叫んだ。
心肺蘇生と、人工呼吸を繰り返したが、香音は再び目を覚ますことはなかった。
俺は病室へと戻り泣いた。声を押し殺しながら。そんな俺の背中を兄は優しくなでてくれた。