上 下
34 / 43
終章 復讐の果て

第34話 舞踏会

しおりを挟む
 多少のハプニングはあったが、晩餐会は滞りなく終わり、主賓や招かれた貴族たちは舞踏会の会場へ向かう、舞踏会も宮殿の音楽堂とよばれるホールで行われる。
 この舞踏会での演奏はガレオン屈指の楽団であるワレマール楽団が担当している。
 私も昔はワレマールの曲を週1回は必ず、クレアや父と聴きに行ったものだ。
 ワレマールの文字をみてそれを思い出す…
 エイルは昔からこういった芸術に興味がなくいつも誘ってはいたのだが体よく断られていた。

 音楽堂は普段はコンサートを楽しむように椅子が階段のように並んでいるが、今回は舞踏会であるためその椅子たちは片づけられ、楽団が演奏するスペースと同じ高さで曲を聞き踊りが楽しめるようになっており、天井の大きなシャンデリアをはじめ、ここにもきらびやかな調度品の数々が置かれている。

 音楽堂に貴族たちが集まり、皇帝陛下と国王陛下が並び話をしている。
 皇帝陛下が時折楽団を指さしたりし国王陛下がそれをみてうなずいたり、笑顔を見せたりしている、楽団のメンバーと国王陛下が談笑をしたり、楽器を触ったりと触れ合ったあと演奏が始まる。

 かくいう私は侍従の格好をしている以上、怪しまれないように隅の方に酒の入ったグラスを置いたお盆をもって立っている。
 晩餐会のときのような目立つことは避けなければ、侍従長も怪訝な顔をしそういえばあんな侍従いたか?と首をひねる一幕もあった。

 目立つことは避けつつ、国王陛下の動向を見守りエイルの計画を阻止しエイルが関与しているという確固たる証拠をつかみ、あいつを絶望の淵に追い詰める。

 舞踏会に父とエイルの姿は見えないだが身重のクレアの姿はあった、さすがに踊るわけにはいかないと椅子には座っている、エイルは舞踏会が苦手なのか、それとも警備の指示に向かったのかあるいは…

 音楽堂では気品のあふれる楽曲に合わせて、優雅に舞うものやその楽曲に耳を傾けるもの様々なものがいる今、流れている曲これはよくクレアとよくここで踊った曲だ…
 クレアも昔を懐かしんでいるのか、眼を閉じてじっくりと聴いている。
 私もその時をのことを思いだす。

 ーー数年前、宮殿の音楽堂
 クレアは美しい青いドレスを纏い私のダンスパートナーをしている。
 まるで黒真珠のような美しい瞳に、艶やかな黒い髪。
 そして私の美しい金髪、サファイアのような碧い瞳、一緒に踊っている姿は有名な絵画からとびだしてきたような錯覚に陥るだろう。

 2人でダンスを楽しんだあと、クレアと私は皇帝陛下のもとに呼ばれた。
「そなたとクレアはまるで絵にかいたような二人であるな」
「ありがとうございます」
 皇帝陛下が目を細め本題に入る。
「して、アレクシアよそなたはクレアをめとる気はあるか」
 答えはもちろん決まっている。
 私は胸を張りこう答えた。
「もちろんです、私はクレアを愛しております!!」
「のうクレア、アレクシアもこう申しておるが」
 クレアは透き通るような白い肌の頬を赤らめ、俯きながら
「はい…大変うれしゅうございます」
 そういった。

 そうして私たちの婚約がきまったのだ…

 すーっと眼をあけるとさっきのベイリッシュ公が目に入る、ベイリッシュ公は酒にでも酔っているのか、真っ赤な顔をしてクレアに絡んでいる。
「クレアさまぁ、ぜひ私と一緒に踊りませんかぁぁ」
「いえ、私は身重なうえ…」
「なぁにちょっとだけ、ちょっとだけ踊るだけ、今すぐ生まれるわけでもありますまい」
 そういってクレアの手を取る。
「もうしわけありません」
 クレアはなんとか失礼がないように断ろうとしている。
「大丈夫、大丈夫そんなに体を動かすわけじゃないから、ね?」
「いえ…」
「もうあなたは皇女殿下はないのですよ?夫のためにも私と踊った方がいいとおもいますがね」
 ベイリッシュ公は無理矢理手を引っ張りクレアを椅子から立たせようとする。
 クレアは明らかに嫌だ、だれか助けてといった表情をしている、しかし周囲にはあのものを止めることができるものがいない。
 皇帝陛下も中座しているようでこの場にはおらず、だれもベイリッシュ公をいさめるものがいない、ベイリッシュ公は貴族の中でもそこそこ立場にいるようで、周囲の貴族たちは見て見ぬふりをしている。

 クレアに近づきたくない…私が私であるといってしまいそうになる…
 それだけは避けなければ、しかしもう我慢の限界だ、行こうあいつを殴ってでも止めてやる。
 そう思い、二人のもとへむかおうとするとグッと肩を引かれた、引かれた方を振りかえると真っ赤な顔をした侍従長がそのまままっすぐクレアとベイリッシュ公のもとに向かっている。

 侍従長は2人に話しかけている。
「クレア様、エイル様がお呼びです」
「ありがとう」
 そういってクレアは安どの表情を浮かべ立ち上がる、ベイリッシュ公はおもしろくないといった感じで不機嫌になり
「エイル?あの男はここにおらんではないか!」
 とのたまう。
「ええ、おりません」
「なんだと!ふざけるな」
侍従長はそれまでとうって変わって語気を強め
「もし!この場でなにかあれば、それは私の責任なります!」
「それがどうした、それがお前らの仕事だろうが」
「はい、だからこそその仕事を全うしたまでのことであります」
「踊ることがそんなに体にさわることか!」
「もし、踊っているさなか万が一クレア様のお体になにかあるようなことがあれば、私はあなたが強引にお踊りにお誘いしたと皇帝陛下やフリューゲル様、そしてエイル様に報告せざる負えません」
「あ、ああ」
「先程の晩餐会での失態、そしてクレア様へのあのようなご発言、フリューゲル様や皇帝陛下がお知りになれば…」
侍従長の言葉で一気に酔いが醒めたのかベイリッシュ公は
「そ、そうだな、う、うんクレア様エイル殿がおよびだそうでどうぞ」
「はい」
クレアは晴れ晴れとした表情でその場を立ち去って行った。
侍従長はベイリッシュ公に一礼をし私のもとにやってきて一言
「くれぐれも問題を起こすなよ」
と言い残した。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

禁忌だろうが何だろうが、魔物スキルを取り込んでやる!~社会から見捨てられ、裏社会から搾取された物乞い少年の(糞スキル付き)解放成り上がり譚~

柳生潤兵衛
ファンタジー
~キャッチコピー~ クソ憎っくき糞ゴブリンのくそスキル【性欲常態化】! なんとかならん? は? スライムのコレも糞だったかよ!? ってお話……。 ~あらすじ~ 『いいかい? アンタには【スキル】が無いから、五歳で出ていってもらうよ』 生まれてすぐに捨てられた少年は、五歳で孤児院を追い出されて路上で物乞いをせざるをえなかった。 少年は、親からも孤児院からも名前を付けてもらえなかった。 その後、裏組織に引き込まれ粗末な寝床と僅かな食べ物を与えられるが、組織の奴隷のような生活を送ることになる。 そこで出会ったのは、少年よりも年下の男の子マリク。マリクは少年の世界に“色”を付けてくれた。そして、名前も『レオ』と名付けてくれた。 『銅貨やスキル、お恵みください』 レオとマリクはスキルの無いもの同士、兄弟のように助け合って、これまでと同じように道端で物乞いをさせられたり、組織の仕事の後始末もさせられたりの地獄のような生活を耐え抜く。 そんな中、とある出来事によって、マリクの過去と秘密が明らかになる。 レオはそんなマリクのことを何が何でも守ると誓うが、大きな事件が二人を襲うことに。 マリクが組織のボスの手に掛かりそうになったのだ。 なんとしてでもマリクを守りたいレオは、ボスやその手下どもにやられてしまうが、禁忌とされる行為によってその場を切り抜け、ボスを倒してマリクを救った。 魔物のスキルを取り込んだのだった! そして組織を壊滅させたレオは、マリクを連れて町に行き、冒険者になることにする。

持ち主を呪い殺す妖刀と一緒に追放されたけど、何故か使いこなして最強になってしまった件

玖遠紅音
ファンタジー
 王国の大貴族であり、魔術の名家であるジーヴェスト家の末っ子であるクロム・ジーヴェストは、生まれつき魔力を全く持たずに生まれてしまった。  それ故に幼いころから冷遇され、ほぼいないものとして扱われ続ける苦しい日々を送っていた。  そんなある日、 「小僧、なかなかいい才能を秘めておるな」    偶然にもクロムは亡霊の剣士に出会い、そして弟子入りすることになる。  それを契機にクロムの剣士としての才能が目覚め、見る見るうちに腕を上げていった。  しかしこの世界は剣士すらも魔術の才が求められる世界。  故にいつまでたってもクロムはジーヴェスト家の恥扱いが変わることはなかった。  そしてついに―― 「クロム。貴様をこの家に置いておくわけにはいかなくなった。今すぐ出て行ってもらおう」  魔術師として最高の適性をもって生まれた優秀な兄とこの国の王女が婚約を結ぶことになり、王族にクロムの存在がバレることを恐れた父によって家を追い出されてしまった。  しかも持ち主を呪い殺すと恐れられている妖刀を持たされて……  だが…… 「……あれ、生きてる?」  何故か妖刀はクロムを呪い殺せず、しかも妖刀の力を引き出して今まで斬ることが出来なかったモノを斬る力を得るに至った。  そして始まる、クロムの逆転劇。妖刀の力があれば、もう誰にも負けない。  魔術師になれなかった少年が、最強剣士として成り上がる物語が今、幕を開ける。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸
ファンタジー
【あらすじ】  ジュナリュシア・キーブレスは、キーブレス王国の第十七王子として生を受けた。  キーブレス王国は、スキル至上主義を掲げており、高ランクのスキルを持つ者が権力を持ち、低ランクの者はゴミのように虐げられる国だった。そして、ジュナの一族であるキーブレス王家は、魔法などのスキルを他人に授与することができる特殊能力者の一族で、ジュナも同様の能力が発現することが期待された。  しかし、スキル鑑定式の日、ジュナが鑑定士に言い渡された能力は《スキル無し》。これと同じ日に第五王女ピアーチェスに言い渡された能力は《Eランクのギフトキー》。  つまり、スキル至上主義のキーブレス王国では、死刑宣告にも等しい鑑定結果であった。他の王子たちは、Cランク以上のギフトキーを所持していることもあり、ジュナとピアーチェスはひどい差別を受けることになる。  お互いに近い境遇ということもあり、身を寄せ合うようになる2人。すぐに仲良くなった2人だったが、ある日、別の兄弟から命を狙われる事件が起き、窮地に立たされたジュナは、隠された能力《他人からスキルを奪う能力》が覚醒する。  この事件をきっかけに、ジュナは考えを改めた。この国で自分と姉が生きていくには、クズな王族たちからスキルを奪って裏から国を支配するしかない、と。  これは、スキル至上主義の王国で、自分たちが生き延びるために闇組織を結成し、裏から王国を支配していく物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも掲載しています。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

処理中です...