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終章 復讐の果て
第31話 蜃気楼
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ーー4年前のことだ、私はガレオンにたどりついた、エイルに会うことなど到底できず、ただ時間だけが過ぎていった。
日銭を稼ぐためにとある酒場で用心棒として雇ってもらえることとなり、私はそこでカーチスと名乗り、無為に過ごす毎日であった。
3年前のある日、あの男が私の前に突然現れたのだ。
詰襟の制服を着た3人の男たちが、ふいにこの場末の酒場にやってきた、その制服の左胸には鷹の紋章が輝き、襟章は星一つ、3人の男の真ん中にいたものは燃えるような紅い瞳に、短く切りそろえた黒い髪、そう忘れるはずもない私の目的の男、エイル・ノーベル。
僥倖だ、今すぐにでも斬り伏せてしまいたい衝動に駆られる、この男を今ここで斬るのはたやすい、そうたやすいことだ、しかしこの男が絶望の淵で嘆き苦しむことが私から何もかにも奪ったことの償いなのだ。そうやすやすと殺してなるものか…
ホールに座り3人で酒を酌み交わし、日付が変わろうし始めるころに3人の男は立ち上がりエイルがカウンターのマスターに話しかける。
「ここの腸詰は絶品だな」
「ありがとうございます、貴族様のお口にあうとは」
「しかし、酒がまずい、うまい食い物にはうまい酒だ」
「すいません」
「今度来るときには、うまい酒も頼む」
エイルはそういってカウンター金貨1枚を置いた。
マスターはそれをみて驚きの表情を浮かべ
「ええ!こんなに、これほどはいただけません」
「次来る時までにはうまい酒を用意しておいてくれという意味だが」
「ありがとうございます」
エイルは右手を挙げ、私の横にやってきてささやく。
「そんなに殺気を漂わせていたら、客がにげるぞ」
この男私の正体に気が付いた?…いや違うか
「なんのことですか?」
「ふん」
エイルと連れの2人は酒場を後にした。
そうして3年の月日が経ち、その日からエイルは週に1度はこの酒場にやってきている、その間に襟章は星1つから2つなり、副隊長と呼ばれるようになっていた。
しかしあのような老人を連れ立ってきたのはこの3年間で初めてのことである。
あの老人からはいいようもしない不安を感じる、そうあのパパリモに似た雰囲気だ。
老人がエイルに話しかけている。
「ノーベル家の方がこのような場末の酒場を利用されるとは」
「たまの息抜きよ、ここの腸詰は絶品だぞ」
「ほほほ息抜きですか、皇国親衛隊副隊長殿はなにかと忙しいのでしょう」
「ああ、明日からはザナビルの王を迎えるからな、宮殿に泊まり込みだ」
「なるほど」
エイルたちは席に着く私は耳を澄ませ何を話しているのか聞き取ろうとするが、周囲が騒がしくかすかに話が聞こえてくるのみで、会話のすべては聞き取ることができなかった。
明後日…計画通り…お任せください
老人がそういっているのだけが私の耳に残った。
老人は腸詰を一つ手に取り、口の中に放り込み立ち上がり酒場を後にする。
私はどうしてもその老人が気になり後を付けることにした。
「マスターちょっと野暮用思い出した、少し抜けさてくれ」
私は今日の分の銅貨をカウンターに置く
「ああ金を戻してくれるなら構わない」
酒場を離れ、老人の後を追う。
扉を開けると、街灯に照らされた腰の曲がった老人の姿が見え、私は一定の距離を保ち、老人を見失わないように気を付ける。
半時間ほど歩き、街のはずれにたどり着く、もう民家もなく街灯もない、石畳の道が途中から暗闇に飲み込まれている。
ちゃんと老人の姿を見ていたはずなのに、その老人は闇に紛れ姿を消した。
私は走って老人の姿が消えたところに向かう。
ヒュン
風を斬る音が聞こえる。
私は右手でその風を斬ったものをつかむ。
闇からさっきの老人の声がする。
「ほほほ、それを受け止めるとは、おぬしただの酒場の用心棒ではあるまい」
「おまえは、なにものだ、あそこでエイルとなにを話していた」
「おぬしが自分で調べることじゃな」
「なんだと、なにか企んでいるのか」
「ほほほ、時間がないぞい」
「おい、答えろ何をしようとしている!」
私からの問いにもう返答はなく、そこはただの闇だけが広がっていた。
あの老人が私めがけて投げつかんだもの、それは鉄製のナイフにも似たもので、柄の部分に半分になった髑髏が描かれていた。
ーー翌日
私はその投げナイフを手に、武器屋に向かった。
なじみの武器屋でよくこの剣を研いでもらったりしている、とにかく武器マニアで、最初に行ったときはファニル鋼製の剣を見て卒倒するほどの衝撃を受け、とにかく譲ってくれ一点張りだった、今も会うたびに譲れと言われる、そんな男だこの珍しいナイフのようなものをみればなにかわかるかもしれない。
石造りの建物にの壁にケネルの武器屋と書かれた看板がかかっている。
扉を開け、私をみるなり武器屋の店主ケネルは開口一番
「ようカーチス、ついにその剣を俺に譲ってくれる気になったか?」
とほざく。
私は真顔で首を横に振り、カウンターにいるケネルもとに向かう。
「今日はやけに真剣な表情をしてどうしたんだ?」
「実はおまえに見てほしいものがあってな」
「ああ、武器だったらなんでもみるぜ」
私は、そのナイフを懐からだしケネルに見せる。
「ふむ、ふむこれは投げナイフの一種クナイとよばれるものだな」
「クナイ?」
「ああ、東方にある国の武器だ」
「こんなところにあるのは珍しいのか?」
「まあ、珍しいといえば珍しいが、それほどでもない」
「なるほど」
「それよりこのマークだが」
「ああ」
「これは暗殺者集団『蜃気楼』のマークだ」
「蜃気楼?」
「ああ、50年間に壊滅したはずなんだけどな」
「暗殺者集団…」
「ああ、東方の国からやってきたとされる暗殺者集団さ、ただ50年前に皇帝に目をつけられて滅ぼされたはず、このマークは俺も初めて見る」
「生き残りがいるってことか?」
「そこまでは分からない」
「わかった、ありがとう」
クナイをケネルから受け取り、武器屋を後にする。
暗殺者集団の生き残りが…なぜエイルと?
エイルはザナビル王家の転覆を企んでいた…今その王が外遊でガレオン入りしている…
もしや…
私の背筋に嫌な汗が流れた。
日銭を稼ぐためにとある酒場で用心棒として雇ってもらえることとなり、私はそこでカーチスと名乗り、無為に過ごす毎日であった。
3年前のある日、あの男が私の前に突然現れたのだ。
詰襟の制服を着た3人の男たちが、ふいにこの場末の酒場にやってきた、その制服の左胸には鷹の紋章が輝き、襟章は星一つ、3人の男の真ん中にいたものは燃えるような紅い瞳に、短く切りそろえた黒い髪、そう忘れるはずもない私の目的の男、エイル・ノーベル。
僥倖だ、今すぐにでも斬り伏せてしまいたい衝動に駆られる、この男を今ここで斬るのはたやすい、そうたやすいことだ、しかしこの男が絶望の淵で嘆き苦しむことが私から何もかにも奪ったことの償いなのだ。そうやすやすと殺してなるものか…
ホールに座り3人で酒を酌み交わし、日付が変わろうし始めるころに3人の男は立ち上がりエイルがカウンターのマスターに話しかける。
「ここの腸詰は絶品だな」
「ありがとうございます、貴族様のお口にあうとは」
「しかし、酒がまずい、うまい食い物にはうまい酒だ」
「すいません」
「今度来るときには、うまい酒も頼む」
エイルはそういってカウンター金貨1枚を置いた。
マスターはそれをみて驚きの表情を浮かべ
「ええ!こんなに、これほどはいただけません」
「次来る時までにはうまい酒を用意しておいてくれという意味だが」
「ありがとうございます」
エイルは右手を挙げ、私の横にやってきてささやく。
「そんなに殺気を漂わせていたら、客がにげるぞ」
この男私の正体に気が付いた?…いや違うか
「なんのことですか?」
「ふん」
エイルと連れの2人は酒場を後にした。
そうして3年の月日が経ち、その日からエイルは週に1度はこの酒場にやってきている、その間に襟章は星1つから2つなり、副隊長と呼ばれるようになっていた。
しかしあのような老人を連れ立ってきたのはこの3年間で初めてのことである。
あの老人からはいいようもしない不安を感じる、そうあのパパリモに似た雰囲気だ。
老人がエイルに話しかけている。
「ノーベル家の方がこのような場末の酒場を利用されるとは」
「たまの息抜きよ、ここの腸詰は絶品だぞ」
「ほほほ息抜きですか、皇国親衛隊副隊長殿はなにかと忙しいのでしょう」
「ああ、明日からはザナビルの王を迎えるからな、宮殿に泊まり込みだ」
「なるほど」
エイルたちは席に着く私は耳を澄ませ何を話しているのか聞き取ろうとするが、周囲が騒がしくかすかに話が聞こえてくるのみで、会話のすべては聞き取ることができなかった。
明後日…計画通り…お任せください
老人がそういっているのだけが私の耳に残った。
老人は腸詰を一つ手に取り、口の中に放り込み立ち上がり酒場を後にする。
私はどうしてもその老人が気になり後を付けることにした。
「マスターちょっと野暮用思い出した、少し抜けさてくれ」
私は今日の分の銅貨をカウンターに置く
「ああ金を戻してくれるなら構わない」
酒場を離れ、老人の後を追う。
扉を開けると、街灯に照らされた腰の曲がった老人の姿が見え、私は一定の距離を保ち、老人を見失わないように気を付ける。
半時間ほど歩き、街のはずれにたどり着く、もう民家もなく街灯もない、石畳の道が途中から暗闇に飲み込まれている。
ちゃんと老人の姿を見ていたはずなのに、その老人は闇に紛れ姿を消した。
私は走って老人の姿が消えたところに向かう。
ヒュン
風を斬る音が聞こえる。
私は右手でその風を斬ったものをつかむ。
闇からさっきの老人の声がする。
「ほほほ、それを受け止めるとは、おぬしただの酒場の用心棒ではあるまい」
「おまえは、なにものだ、あそこでエイルとなにを話していた」
「おぬしが自分で調べることじゃな」
「なんだと、なにか企んでいるのか」
「ほほほ、時間がないぞい」
「おい、答えろ何をしようとしている!」
私からの問いにもう返答はなく、そこはただの闇だけが広がっていた。
あの老人が私めがけて投げつかんだもの、それは鉄製のナイフにも似たもので、柄の部分に半分になった髑髏が描かれていた。
ーー翌日
私はその投げナイフを手に、武器屋に向かった。
なじみの武器屋でよくこの剣を研いでもらったりしている、とにかく武器マニアで、最初に行ったときはファニル鋼製の剣を見て卒倒するほどの衝撃を受け、とにかく譲ってくれ一点張りだった、今も会うたびに譲れと言われる、そんな男だこの珍しいナイフのようなものをみればなにかわかるかもしれない。
石造りの建物にの壁にケネルの武器屋と書かれた看板がかかっている。
扉を開け、私をみるなり武器屋の店主ケネルは開口一番
「ようカーチス、ついにその剣を俺に譲ってくれる気になったか?」
とほざく。
私は真顔で首を横に振り、カウンターにいるケネルもとに向かう。
「今日はやけに真剣な表情をしてどうしたんだ?」
「実はおまえに見てほしいものがあってな」
「ああ、武器だったらなんでもみるぜ」
私は、そのナイフを懐からだしケネルに見せる。
「ふむ、ふむこれは投げナイフの一種クナイとよばれるものだな」
「クナイ?」
「ああ、東方にある国の武器だ」
「こんなところにあるのは珍しいのか?」
「まあ、珍しいといえば珍しいが、それほどでもない」
「なるほど」
「それよりこのマークだが」
「ああ」
「これは暗殺者集団『蜃気楼』のマークだ」
「蜃気楼?」
「ああ、50年間に壊滅したはずなんだけどな」
「暗殺者集団…」
「ああ、東方の国からやってきたとされる暗殺者集団さ、ただ50年前に皇帝に目をつけられて滅ぼされたはず、このマークは俺も初めて見る」
「生き残りがいるってことか?」
「そこまでは分からない」
「わかった、ありがとう」
クナイをケネルから受け取り、武器屋を後にする。
暗殺者集団の生き残りが…なぜエイルと?
エイルはザナビル王家の転覆を企んでいた…今その王が外遊でガレオン入りしている…
もしや…
私の背筋に嫌な汗が流れた。
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