上 下
27 / 43
第2章 王位継承

第27話 王の存在

しおりを挟む
「ソルフィンさん宛てに書簡です」
 城の係の者が、やってきて殿下に書簡を渡す。

 あれから1週間が経ったが、反フロイト陣営結集のために奔走しているリディムさんからの連絡待ちをずっとしていた。
 この書簡その待ちに待ったリディムさんからの連絡ということであり、3人で固唾をのんで書簡を開く。
 フリージアさんがそれを読み上げる

「親愛なるソルフィン殿下へ、この度は、大変お待たせして申し訳ございません、本題から入ります。
 我々はソルフィン殿下の旗印のもとに、諸侯らの同意を得て1000人からなる軍勢を手に入れることに成功しました。ポルト国境付近の、ムスタルの地に集結しており、ソルフィン殿下の到着を今や遅しと待っているところであります」
 殿下は私の顔を見て、涙を貯めている。
「殿下、殿下のために諸侯らが動いてくれました、これに答えるのが殿下の役割かと」
「うん…わかってる、僕が王だ」
 その顔はもう幼い少年ではなく、1000の軍勢を率いる王の顔をしていた。

 私達が城の門をでると、甲冑姿の100名の兵を率いた王の右手であるガロンさんが甲冑姿で馬にまたがっている。
「王より精鋭100名をとのことであったして王の右手である私を含めた101名、ただいまよりソルフィン殿の指揮下に入る」
 ガロンさんはそういって馬から降り、殿下に跪く。
 後ろの100名の兵も一糸乱れぬ動きで全員跪いた。

 殿下がその姿をみて
「それでは、ただいまよりポルト正規軍101名は我が配下に、そしてザナビル王都を取り返そうぞ!」
 そう言って右手を上げる。
 すると跪いた101名は一斉に立ち上がり「おおおおおおお」と勝鬨をあげた。

 104名のでの行軍が始まる。
 殿下は馬にまたがり、ちいさな体に甲冑を纏い馬を操っている、私とフリージアさんは同じ馬にまたがっているフリージアさんは馬に乗ったことないということなので私の後ろに乗ることになった。

 街の人々はその姿をみて、歓声を上げる。
 小さな少女や、老人たちが私達をみて手を振ってくれる。
 殿下はその一つ一つに馬上から手を振り、その声援に答えている。

 街を抜け、森を抜け、1日中移動が続く。

 私は殿下の姿を見る。
 小さな甲冑姿が滑稽にうつり、一生懸命馬を操っている。
 しかし、彼が声をだせば今や1000を超える軍が彼のために動き、働く。
 彼の帰りをまつ宮殿もある。

 これが終わったら、私は殿下のもとを去る。
 あのような少年を……私は復讐に取りつかれている、あの決闘裁判…あのときに克明に思い出した、私の生きる意味、そして覚悟、このままでは殿下を私の復讐の道具してしまう。

 以前は即位後の外遊に同行し、ガレオンに向かおうと考えていた、しかし今は…

 恐らく私はエイルを目の前にして正気を保つことはできないだろう、そんな姿を殿下やフリージアさんに見せたくはない。
 殿下やフリージアさんの前では、レクシアでいたい…

 それに国賓で招かれたものが、有力貴族の息子を殺すのだ、ガレオンとザナビルも一気に険悪となってしまう、下手すればソルフィン殿下にも危険が及ぶ。
 そんなことになる前に、私はザナビルを去る、ヘブンズワークスに所属しているということにしていれば誓約も問題ないはずだ。

 東の空が白くなってきているころ、目の前には岩を積み上げて作られたムスタルの砦が見え、夜通しの行軍が終わりを告げようとしている。

 ムスタルの砦は以前敵対していたときに、対ポルト用に作られたものであり敵対関係時代にはこの砦での攻防戦などが行われたりしていたとか、行軍中にガロンさんから聞いた話だけど、ポルトはこの砦を結局落とすことができず、ザナビルに攻め込むことができなかったということらしい。
 たしかにこの砦を攻め落とすのは大変そうに見える。

 両脇を険しい山に囲まれ、細い道の途中に大きな砦があるので、一気に道を通れるのは10人前後といったところであるため、大軍で包囲することもできない、山側から攻めるにも崖が急すぎておりることが難しい。
 ポルト正軍がこの砦に入るということは、歴史的にみても快挙であるとも言っていた。

 砦の門が開く。

 ポルト正軍も同行しているとは知らなかったため、兵士たちはジロジロと怪訝そうに見ているが、中に殿下がいることが分かると、一気に色めき立つ。

 建物の中からリディムさんがでてきて、私たちに駆け寄ってくる。
「殿下!よくご無事でしかもポルトの支援までうけられるとは」
「リディム、此度はよく私のために動いてくれた感謝する」
「いえ、私は当然のことをしたまでです、ホフナー商会も全力で支援させていただいております」
 兵站面はすべてホフナー商会の支援で賄っているということらしい
「殿下、ここにいるみな殿下の到着を待っておりました、ぜひ殿下のお口から檄をとばされては?」
「わかったでは準備を頼む」

 砦の中央の開けたところに1000人の人間が集まっており、熱気のため、湯気たちのぼり兵士たちは殿下の登場を今や遅しと待っている。

 私達は兵士たちのうしろにある塀の見張りの部分からそれを眺めている。

 甲冑姿の殿下が兵士たちの前に立つ
 ざわざわしていた兵士たちに緊張が走り、一気に静まり返る。
「私が正統なザナビルの王、ソルフィンである」
 やはり殿下は王の風格というものが備わっている、これはもう生まれ持ったものとしか形容できない。
 彼は10歳にして王であるのだ、こういった場面になると彼は王の威厳が現れる、普段私達と接しているときの少年のあどけなさは全くといっていいほど感じられない。

 彼があと10年たち20歳になったときにはザナビルは大きな飛躍を遂げるであろう、彼には王の器というものがある、後世の歴史家も名君として彼の事を称えるであろう、そしてこの演説は歴史に残るものになる。

「わが王、ガルシア亡きあと奸計により、世継問題が生じたこれは、私が王の後継者として亡き前王に指名されておきながら、その力を示すことができずにいた私の不徳の致すところである!」
 兵士たちは真剣なまなざしを殿下にぶつけている。
 殿下は2000の瞳を相手に怯みもせず、まっすぐに立ち話を続ける。

「その混乱に乗じて、フロイトの謀反、騎士団の寝返り…これは本当に許されることではない、わが父ガルシアの名を汚すばかりか、ザナビル王家200年の歴史に泥を塗る行為である、ここに集いし1000もの軍勢は我が王家の真なる家臣である、今こそ立ち上がり騎士団、フロイトの手から王都を取り戻そうぞ!!」
 殿下は右手を上げ、雄たけびを上げる
 その雄たけびとともに1000人の兵士たちは右手をあげ、「おおおおおおおおおおおお」と殿下の雄たけびに続いた。

 さすがだ、これで1000の兵士を一気にまとめ上げ、そして士気も一気に高まる、これが王なのだ。



しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~

平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。 しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。 パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。

兄妹無双~魔王軍に支配された異世界で兄は【模倣】妹は【消滅】の力で滅びかけの人類を救いながら勇者として好き勝手暴れます~

お茶っ葉
ファンタジー
普通の高校生《瑞樹姫乃》と妹の《咲》は魔王軍に支配された異世界で勇者として召喚される。 そこは僅かな人類と絶望だけが残された滅びへと向かう世界――――だったのだが。 最強の力を手に入れた二人にはあまり関係なかった。 【模倣】の力を得た兄は、見ただけで他人の異能を扱えるようになり、 【消滅】の力を得た妹は、触れただけで魔物を消し去る。 二人は勇者として残された人類を束ね、魔物を仲間にしながら強大な魔王軍を相手に無双する。 ※最初から強いのに二人は更に強化されていきます。 ※ただ異世界の人類が弱いのでそこで釣り合いが取れてます。 ※小説家になろう様でも投稿しています。

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

処理中です...