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第2章 王位継承

第20話 旅

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 西の空が赤く染まりだしたころ、馬車がゆっくりと止まる。
 ヤングさんが馬車を降り、荷台に駆けあがり、毛布やらなにやらいろいろと取り出している。
 ヤングさんに声をかける
「ここで野営ですか?」
「はい、この辺を夜うろうろするのは、色々と危険なんですよ、オオカミとかでるので」
「オオカミですか」
「ええ、馬もおびえるので」
「なるほど」
 このあたりは赤茶色した土の荒涼とした大地が広がっている、背の低い木がところどこに生えており、山は岩肌がむき出しになっている。

 ヤングさんはなれた手つきで、野営の準備を行っている。
 あっというまに準備が完了し、焚火に火をつける。

 そのころには周囲はすっかり真っ暗になっており、たき火の明かりだけがゆらゆらと揺れている。
 4人で火を囲む、たき火に鍋をかけ、スープを温めている。私たちの手にはパンと干し肉があり、それらを口に運ぶ。
 ヤングさんが口を開く
「殿下はこのような食事は初めてでしょう」
「ええ、初めての体験です、ここ数日は初めてだらけです、この干し肉というものは結構おいしいですね」
 確かに、この干し肉はうまい、香辛料が適度に聞いており、辛すぎず、イイ感じに仕上がっている。
「スープもよさそうだ」
 ヤングさんは、そういうと鍋からスープをすくって、4人分カップに入れる。
「殿下どうぞ」
「ありがとう」

 殿下は、カップを両手で持ち、一口、口にする
「あちち」
「すいません、熱すぎましたか?」
「いえ、私の不注意です」
 そのやりとりを見て、心が穏やかになる。
 フリージアさんも穏やかな表情で2人のやり取りをみている。

 フリージアさんに話しかける
「まるで兄弟みたいですね」
「そうね、本来ならコフィン殿下と2人でこのような関係を築かれていたかもしれないのに」
「そうですね…」
 遠くでオオカミの遠吠えが聞こえる。

 殿下は何が起こったか分からずキョロキョロしている。
 ヤングさんが殿下に説明をする。
「殿下あれがオオカミの遠吠えです、ここは音が通るから遠くからも聞こえるんですよ」
「あれが、世に聞くオオカミの遠吠えか、ワオーーーーーン」
 すると、遠くからもワオーーーーーンという音が聞こえてきた

 4人で顔を見合わせ大笑いをする。

 殿下が私に聞きたいことがあると話しかけてくる。
「レクシアはポルトに住んでいたんでしょ?どんな国なの?」
「ポルトの王都アレグランは絶景ですよ、みたら本当にびっくりしますよ」
「うん、それは聞いたことある楽しみだ」
「あとはポルト人は負けん気が強い人が多いですね」
「へぇぇそうなんだ」
「ええ、ヨルド様も大変負けず嫌いでらっしゃいます」

「そうなんだ」
「二言目にはわしより強い奴は嫌いじゃですからね」
「あはは」
 殿下は私との話を終えると、ヤングさんのところに行き何やら盛り上がっている

 フリージアさんに話しかける
「フリージアさんケフィア妃とお目にかかったことはあるんですか?」
「ええ、ソルフィン殿下に仕える前はケフィア様にお仕えしてました。」
「そうなんですね」
「ええ、あのお方は大変お綺麗でしたが…」

「なにかあるんですか?」
「大変活発といいますか、おてんばといいますか、私達の頭痛の種でした」

「そうなんですね、フリージアさんが手を焼かすとはよっぽどですね」
「どういう意味ですか?」
「いえ、特に深い意味はありません」
「さて、明日も早くからでるんですよね?」
「そうですね、多分夜明け直後には出ると思いますよ」
「わかりました」

 そういうとフリージアさんが殿下に話しかける。
「殿下、明日も朝から一日移動になります、そろそろ寝ましょう」
「うん、わかった寝よう」
 たき火はまだパチパチと音を立て燃えており、私たちの影が岩肌に大きくなって映っている。
 フリージアさんと殿下は横になっている。
 すーすーと寝息が聞こえてくる。

 ヤングさんも横になり休み始める。
 私も毛布をかぶって横なり、空を見上げた。
 空は高く、満天の星々が振ってくるような感覚を覚える。
 そうして私も眠りに落ちた。

 東の空が白んできたころ、ヤングさんが起き、片づけを始める。
 私も手伝おうとするが、けが人に手伝わさせたら、会長に怒られるといって一人で全部片づけてしまった。
 片づけが終わるころには太陽が地平線から顔をのぞかせている。
 私達は再び馬車の荷台乗り込み、ポルトを目指す。

馬車がゆっくりと動き始めた。

ずっと同じ荒涼とした大地の一本道を真っすぐにすすんでいたが、徐々に緑が多くなり、坂道をずっと上っている。
半日ほど登ると、雪が残っているような高さまでやってくる。

ヤングさんによると、ここで、ポルトの首都まで半分きたところということらしい。
近くにザナビルの国境警備の砦があるということで、万が一のため、例の木箱に入る。

しばらく進むとヤングさんが話をしている。
「王都から来ました、ポルト行きです、これ許可証です」
「ああ確かに正当な許可証だ、国王陛下がなくなれたというのは本当か?」
「ええ、本当です」
「なんということだ…」
「それでこの荷物は?」
「ケフィア様にワインを届けるために運んでおります」
「なるほどな、しかしケフィア様は国王陛下の葬儀には参列されないのか?」
「そこまではしりません、私はただ運べといわれてるだけなので」
「ああ、そうだな、いってよし」

しばらくしてから、箱から出る。
そういえばあの連中はフロイトの謀反の事は知らなかった。リディムさんが言っていたようにフロイトの意に介さない連中は王都か遠く離れたところにおいやられているんだ。

山をしばらく下って、森が少し開けたところがあり、そこで野営をすることになった。
明日中にはポルトの王都、アレグランに着く。

朝になり、ヤングさんが手際よく後片付けをし、馬車が動き出す。ポルト領にはいっているため、木箱に隠れる必要もない、森を抜けると小さな町を通り、さらに森を通る。

夕方ごろにポルト王都、アレグランが見えてきた。

中央に山を切り崩してできた、城があり城の周りは湖に囲まれている。城に入るためには湖にかけられた一つの橋を渡らなければならない。湖を囲むようにおおきな街がある。
私は殿下の隣に座り、話しかける。
「殿下あれが、ポルトの王都アレグランです」
「あれか…すごい…」

夕焼けで湖が赤く照らされ、言葉にだせないほどの絶景となっていた。

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