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スキルを使って生き残れバトロワ編
第7話 反転
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熱帯のジャングルのような木々が覆い茂る中、シュンという音ともに真っ黒な忍者のような格好をしたヒューマン族の男が転送されてくる。その男の名前はシゲゾー・ハットリ。
アルターオンラインの中ではそれほど目立ったプレイヤーではないが、PKの腕や知識には自信がある。そして昔やり慣れたバトロワ、この大会に掛ける彼の意気込みは高かった。
シゲゾーは腰を落とし、周囲を伺い腰に下げた50センチほどの小刀を両手に構え警戒をする。数秒で周囲に敵がいないと判断をしたシゲゾーは刀は持ったままコンソールを開いて地図を出す。
「今の位置はと……」
シゲゾーが地図を確認すると自分の場所から安全地帯まではほんの数分でたどり着ける位置。そして安全地帯とは反対側に数分いくと家が数件ある小さな集落がある。
このまま安全地帯に入ってもいいが、この集落でアイテムを漁ることができれば序盤を優位にすることができる。そう考えたシゲゾーはその集落に向かうこととする。
このバトロワは武器は持ち込めることができるがアイテムは持ち込むことができない。パーティプレイでもなくソロで戦うということは回復などを考えると、如何にいいアイテムを引けるかということが勝利へのアドバンテージとなる……
周囲を伺いながら、集落に向かう。ほんの数分でその集落に辿り着く、木造の比較的新しい家が数件密集して立ち並んでいる。
シゲゾー何かに気づいてすっと茂みに隠れる。
ガチャっと言う音とともにライオネル族の一人のプレイヤーがよほどいいアイテムでもあったのだろう、ニコニコとしながら玄関から出てくる。
集落の中央にそのプレイヤーが差し掛かったとき、建物の影に隠れていたハイエルフの忍者に背中から斬りつけられる。麻痺でも入ったのだろうそのプレイヤーは動けなくなり忍者に為すがままにやられて木箱に成り果てる。
そしてその忍者は巨躯を屈めて、木箱を漁り始める。
動くならココだ! 戦いが終わった後に油断しているところを漁夫る! これがバトロワの醍醐味!
ささっと音もなくその忍者の背後に忍び寄るシゲゾー。
忍者の背面攻撃である騙し討ちは3つのデバフから選択することができる。麻痺、沈黙、鈍足の3種だ。
ここで素人は麻痺を掛けようとするだろう。現に俺の目の前にいる忍者は背後から麻痺を使ってプレイヤーを倒した。
しかしそれは素人忍者のやること。バトロワではなく普通のPKであれば麻痺を使ってもいい。だが今はバトロワ。麻痺耐性の装備をしている可能性が高い。とすればここで選ぶべきは鈍足。沈黙は相手のスキルが分からない以上空振りになる可能性が高い。
「騙し討ち、鈍足の型!」
そういってシゲゾーはその忍者に鈍足のデバフを付与する。
くるりとこちらを向く忍者、その顔はドクロの仮面を被っている。
ぱっと距離を取るシゲゾー。
鈍足を入れた相手には距離を取ってヒットアンドアウェイをして戦えば楽に勝てる相手となる。
シゲゾーの刀を持つ手に力が入る。楽にファーストキルが取れそうだ。いつもどおりにやれば楽勝なはず。
「ターンオーバー」
そのドクロの男はたしかにそう呟いたのが聞こえた。
そんなことは気にもせず、間合いに飛び込み攻撃をし、相手が攻撃をしようすると間合いを取るために後ろに跳ぶ。
え?
確かにシゲゾーはその忍者に攻撃をし120のダメージを与え後ろに跳んだそのはずなのに、シゲゾーの目の前にその忍者の姿はない……
そうその忍者は鈍足状態のはずなのにシゲゾーが後ろに跳んだのにも関わらず、シゲゾーを追い抜いてシゲゾーの背後に回ったのだ。
ありえない! 鈍足が入っていなかったとしてもこの速度はありえない! ……まさかチート?
そんな考えが頭をよぎる。
なんとか振り返って背後からの騙し討ちを避け、腹痛! とっさに叫んでドクロの腹を殴る。これで腹痛が入ればWSを封じることができる。これで相手のデバフを封じることができる。そしてWSからの大ダメージも防げる。
そして奴は呟く。
「ターンオーバー」
……確かに、確かに腹痛のデバフは入ったはず。シゲゾーに攻撃をするドクロ忍者その攻撃を喰らって腹痛、暗闇、防御力低下、麻痺、鈍足、沈黙、デバフのオンパレードが入る。そう奴はWSを連続で繰り出しているのだ、クールタイム無しで……
負けを悟ったシゲゾーはなぜ負けたのかを考え込む。
こんなことはありえない……やはりチート……いや……それならなぜ最初からやらない?……いやできなかったのか……
まさか! デバフを反転させた? しかしそれなら全ての辻褄があう……
シゲゾーがその考えに至ったときにはシゲゾーの視界にYou are deadという表示がされた。
◇◆◇
「プッ! シゲゾー負けてやんの」
集会場も現れたシゲゾーを見てタケシがニヤニヤと笑いながら声を掛ける。
「ハリーお前も負けてるじゃねーか!」
「俺のはノーカンだよ。ノーカンあんな化け物に当たったからキングだっけ?鬼つええ」
それを聞いたシゲゾーは当然だろという感じで頷きながら答える。
「そりゃしかたねぇ運が悪かった」
「だろ? シゲゾーはなんで負けたんだよ」
それまで柔和だったシゲゾーは真剣な顔で
「エイジがあいつに当たるとマズイ……エイジは確実に負ける……」
と呟いた。
アルターオンラインの中ではそれほど目立ったプレイヤーではないが、PKの腕や知識には自信がある。そして昔やり慣れたバトロワ、この大会に掛ける彼の意気込みは高かった。
シゲゾーは腰を落とし、周囲を伺い腰に下げた50センチほどの小刀を両手に構え警戒をする。数秒で周囲に敵がいないと判断をしたシゲゾーは刀は持ったままコンソールを開いて地図を出す。
「今の位置はと……」
シゲゾーが地図を確認すると自分の場所から安全地帯まではほんの数分でたどり着ける位置。そして安全地帯とは反対側に数分いくと家が数件ある小さな集落がある。
このまま安全地帯に入ってもいいが、この集落でアイテムを漁ることができれば序盤を優位にすることができる。そう考えたシゲゾーはその集落に向かうこととする。
このバトロワは武器は持ち込めることができるがアイテムは持ち込むことができない。パーティプレイでもなくソロで戦うということは回復などを考えると、如何にいいアイテムを引けるかということが勝利へのアドバンテージとなる……
周囲を伺いながら、集落に向かう。ほんの数分でその集落に辿り着く、木造の比較的新しい家が数件密集して立ち並んでいる。
シゲゾー何かに気づいてすっと茂みに隠れる。
ガチャっと言う音とともにライオネル族の一人のプレイヤーがよほどいいアイテムでもあったのだろう、ニコニコとしながら玄関から出てくる。
集落の中央にそのプレイヤーが差し掛かったとき、建物の影に隠れていたハイエルフの忍者に背中から斬りつけられる。麻痺でも入ったのだろうそのプレイヤーは動けなくなり忍者に為すがままにやられて木箱に成り果てる。
そしてその忍者は巨躯を屈めて、木箱を漁り始める。
動くならココだ! 戦いが終わった後に油断しているところを漁夫る! これがバトロワの醍醐味!
ささっと音もなくその忍者の背後に忍び寄るシゲゾー。
忍者の背面攻撃である騙し討ちは3つのデバフから選択することができる。麻痺、沈黙、鈍足の3種だ。
ここで素人は麻痺を掛けようとするだろう。現に俺の目の前にいる忍者は背後から麻痺を使ってプレイヤーを倒した。
しかしそれは素人忍者のやること。バトロワではなく普通のPKであれば麻痺を使ってもいい。だが今はバトロワ。麻痺耐性の装備をしている可能性が高い。とすればここで選ぶべきは鈍足。沈黙は相手のスキルが分からない以上空振りになる可能性が高い。
「騙し討ち、鈍足の型!」
そういってシゲゾーはその忍者に鈍足のデバフを付与する。
くるりとこちらを向く忍者、その顔はドクロの仮面を被っている。
ぱっと距離を取るシゲゾー。
鈍足を入れた相手には距離を取ってヒットアンドアウェイをして戦えば楽に勝てる相手となる。
シゲゾーの刀を持つ手に力が入る。楽にファーストキルが取れそうだ。いつもどおりにやれば楽勝なはず。
「ターンオーバー」
そのドクロの男はたしかにそう呟いたのが聞こえた。
そんなことは気にもせず、間合いに飛び込み攻撃をし、相手が攻撃をしようすると間合いを取るために後ろに跳ぶ。
え?
確かにシゲゾーはその忍者に攻撃をし120のダメージを与え後ろに跳んだそのはずなのに、シゲゾーの目の前にその忍者の姿はない……
そうその忍者は鈍足状態のはずなのにシゲゾーが後ろに跳んだのにも関わらず、シゲゾーを追い抜いてシゲゾーの背後に回ったのだ。
ありえない! 鈍足が入っていなかったとしてもこの速度はありえない! ……まさかチート?
そんな考えが頭をよぎる。
なんとか振り返って背後からの騙し討ちを避け、腹痛! とっさに叫んでドクロの腹を殴る。これで腹痛が入ればWSを封じることができる。これで相手のデバフを封じることができる。そしてWSからの大ダメージも防げる。
そして奴は呟く。
「ターンオーバー」
……確かに、確かに腹痛のデバフは入ったはず。シゲゾーに攻撃をするドクロ忍者その攻撃を喰らって腹痛、暗闇、防御力低下、麻痺、鈍足、沈黙、デバフのオンパレードが入る。そう奴はWSを連続で繰り出しているのだ、クールタイム無しで……
負けを悟ったシゲゾーはなぜ負けたのかを考え込む。
こんなことはありえない……やはりチート……いや……それならなぜ最初からやらない?……いやできなかったのか……
まさか! デバフを反転させた? しかしそれなら全ての辻褄があう……
シゲゾーがその考えに至ったときにはシゲゾーの視界にYou are deadという表示がされた。
◇◆◇
「プッ! シゲゾー負けてやんの」
集会場も現れたシゲゾーを見てタケシがニヤニヤと笑いながら声を掛ける。
「ハリーお前も負けてるじゃねーか!」
「俺のはノーカンだよ。ノーカンあんな化け物に当たったからキングだっけ?鬼つええ」
それを聞いたシゲゾーは当然だろという感じで頷きながら答える。
「そりゃしかたねぇ運が悪かった」
「だろ? シゲゾーはなんで負けたんだよ」
それまで柔和だったシゲゾーは真剣な顔で
「エイジがあいつに当たるとマズイ……エイジは確実に負ける……」
と呟いた。
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