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大規模襲撃イベント バハムート編

第9話 みんなのデバフ

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「は? そんなのダメに決まってんじゃん!」
 ヘパイスは怒ったような口調でカイネスを攻め立てる。

「防衛だけやって貢献度あげたらいいのお前らは! お前らの装備だっていくら掛かってると思ってんの?それにエイジにだって大枚はたいてるんだから!」
 興奮したヘパイスは早口でまくし立てるように話をする。

 クラン会議で決まったことを寝マクロから起きたヘパイスにカイネスが報告をしたのだ。

 そうあのクラン会議で俺達ヘパイス財団とレッドデビルその他クランがバハムート討伐隊として選ばれたのだ。
 当然、ヘパイスはその決定に激怒をする。

 まあこいつは自分がレアアイテム、ゴールデンハンマーさえゲットできたらいいだけなんだよなぁ。

 するとカイネスは冷静な表情でいつものようにメガネをクイッと上げて
「バハムートを倒したら確実に貢献度は凄まじくあがると思います。それをレッドデビルに取られてもいいと?」

 さっきまで威勢の良さは急になくなって
「……レッドデビル……ゴーランにだけは負けたくない……」
 と呟く。

 それを聞いて畳み掛けるようにカイネスが続ける。
「ですよね? さっきの納品で1位になったんですよね? そのままの勢いでバハムートを倒して終わらせれば良いんです」

 少しヘパイスは考え込んだあと顔を上げて
「お前たちがトドメを刺せる保証はあるのか?」
「それはどうなるか展開のアヤでしょうが、エイジくんのデバフを中心にした戦いになります。故にエイジくんの貢献度は確実に高くなります。もちろん我々も最大限の努力しますが」

「なるほど……そういうわけか……」
 そう呟いたヘパイスは俺の肩を叩き

「1500万分の活躍しろよ」
 と言ってふぁぁぁぁぁと大きなアクビをする。

「それじゃ俺は寝るから。あとはよろしく」
 そういってヘパイスは奥に言ってまた数字をいい始めた。

 ――翌朝

 校門の前でタケシが俺の肩を叩き話しかけてくる。
「大事になったな」
「ああ、まさか俺がなぁ」

「そうか?初めてお前のスキルを聞いた時から、お前のスキルすげぇと思ってたよ!」
 タケシは俺に親指を立てて見せる。

「はぁ? おまえリセマラ推奨っていったじゃねーか!」
「え? そうだっけ?」
 そう言ってワザとトボケてみせる。

 タケシは急に真剣な表情になる。
「俺はお前にデバフを付与することができないし、俺のクランは防衛担当になった。バハムートの討伐、絶対に頼むぞ。俺も倒せるまで頑張って必ず守りきってみせるから」

「うん。分かってる俺が必ず感染させてみせる」
 そう言ってタケシに親指を立てて見せた。

 ――数日後

 それから俺と襲撃戦の時間帯が合わず、数日が経過した。

 そして……夜の8時頃

『ファールースの街から救難信号!』

 警報音とともにこの表示が現れる。

 来た! ドキンと胸が高鳴る。俺がログインしてることはフレのユーリさんや同じクランのカイネスは知っている。そしてこの場所は一番、最初にバハムートが現れた場所! 最終決戦にはうってつけの場所だ!!

 ファールースの街に転移をする。

 すっかり元通りになったオレンジ屋根の白い壁の建物が立ち並び、大きな風車が海からの風を受けてゆっくりと回っている。

 その青空に暗雲のような飛竜の群れが現れる。

 ユーリさんの声が響く。
「討伐隊デバフ隊はこっちへ! 防衛隊は街へ急いで」

 続々と到着するプレイヤー達は各々に与えられた役割を果たすために、街に向かうもの。ユーリさんの元に向かうものとに分かれる。

 俺はユーリさんのもとに向かう。事前に決めた作戦はこうなっている。
 討伐隊と防衛隊、そしてデバフ隊の3グループに分かれる。討伐隊はバハムートに対して攻撃を加える。防衛隊は都市防衛に専念。

 そしてデバフ隊は俺にデバフを付与する、10名程度のデバッファーからなる部隊。薬剤師、忍者、狩人などのデバッファー選ばれている。

 そして忍者のシゲゾーが俺をバハムートの10メートル圏内に運ぶ。そして俺が感染を使用するとまたデバフ隊のもとに戻ってきてデバフを貰う。

 バハムートを倒すまでこの作業をずっと続けるということだ。

 数百名のプレイヤーの中心にユーリさん達、レッドデビルのメンバーがいる。俺達デバフ隊はそれを少し離れた場所で見守る。

「私達、レッドデビルがバハムートの注意を惹きつけます! その間にエイジくんの運搬をお願い! デバフが入ったら合図を出します。そしたら全員でバハムートを叩きましょう!! 」

 ユーリさんがそう言うと討伐隊に選ばれたプレイヤー達はうおおおおおおと勝どきを上げる。

 そしてユーリさん達レッドデビルのメンバーは先陣を切って、バハムートのもとに向かう。

「行ったわね」
 ニーナはそれを見て呟いた。

「さてと、俺達も仕事をするか」
 シゲゾーがそれに答えるように口を開く。

 うんとニーナは頷いて
「頼んだわよ。エイジくん!」
 と言って手に持ったビーカーを俺にぶっ掛ける。

 視界の真ん中に硫酸と表示される。

「僕のデバフを頼みます!」
 そう言って矢で撃たれる。

 視界の真ん中に毒と表示される。

「バハムート必ず倒しましょう!!」
 背後からそう声を掛けられ、バキッっという音ともに鈍足と表示される。

 こうして十数名のデバッファーから一言ずつ受け取りデバフを貰う。俺の視界は真っ黒でもう何も見えず、体も当然動かない。視界の右上には見たこともない数のデバフアイコン。

 現状プレイヤーが付与できるだけのデバフを貰ったということになる。

 しかしそのせいか、HPの減り半端ない。ヤバ死ぬっと思った瞬間HPがMAXまで回復する。
「大丈夫よ。私も同行するからデバフでエイジくんを死なせないわ」
 ニーナのその言葉がやたら力強く感じた。

 そして俺はシゲゾーに背負われて、バハムートのもとに向かった。
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