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トップを狙え! PVP始めました

第16話 GM登場

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 観客席はシーンと静まり返っている。そりゃそうだろう大方の予想を覆して俺が勝ったんだからな……
 ふとショーグンの方に目をやると……まだ倒れたままの姿がある……

 あれ? 倒れたショーグンの転移が始まってない? 負けるとすぐに転移が始まるはずなのに……

 するとモヤモヤした人間?のようなものが空中から現れる。転移の音もせずに、いやそもそも闘技場のど真ん中に転移なんかできないのだが……

 その異様な雰囲気に俺の勘が囁く。

 あいつはユニークモンスターだと……ショーグンを倒した記念にユニークモンスターが現れたのだ……

「GMだ!」
 観客席の一人がそう言った。シーンと静まり返っていた観客席は「なんでGMが?」「え? あれがGMか初めて見た」とザワザワし始める。

 じーえむ?だと? やっぱりユニークモンスターだ! GMゴールドモンスターってことだな! 初めて見るし……初めて見たって人もいる……もしやSランクのユニークモンスター!? まさか……闘技場に現れるとは……

 GMを今倒せるのは俺だけ……そう倒すことができれば、俺がレアアイテム独り占めだ! 殺るしかない!

 ……俺が今取れる作戦は……俺に掛かってるデバフは防御力低下大のみ……シゲゾーさえいれば他のデバフも掛けられるんだが、仕方ない……
 この感染を使って、GMに攻撃をされる前に叩き斬る。防御力低下大が入れば大抵の奴は倒せるはず!


 すーっと音もなくGMが近寄って来る。

 今がチャンス!!
「ターゲットインフェクション! 」

 そう叫び、GMを斬りつける。するとカキーンという音がし攻撃が弾かれる。

 あれ? なんで? これって確か……

 視界の真ん中に『非破壊オブジェクトです』という表示がされる。

 この表示は建物とかNPCを攻撃すると現れるやつだ……まさかこいつはNPC?

「え、おい、あいつGM攻撃しやがったぞ……」
「え、えええ!!」
 GMが現れたことでザワザワしていた観客席の空気が変わり、え? まじか? というような雰囲気でどよめき始める。

 GMは攻撃をした俺をガン無視で、ショーグンに話しかける。
「ラッキー・イレブンさんですね。ゲームマスターです。あなたを今から拘束します。理由は分かっていますね?」
 話しかけられたショーグンは倒れたまま何も言わず頷く。

 え、今なんて? 

 するとショーグンとGMはその姿を消した。

 俺は唖然としていると、転移が始まり受付けに戻る。

 受付けは人でごった返し始め、みんな俺のことをジロジロと眺めていく。まあ仕方ない。俺はあのショーグンに勝った男だしな……

 ちょっと斜に構えてカッコつけてみたりする。

 俺を見てヒソヒソと話す声が聞こえる「あいつだよ。GMに攻撃してた奴」「ほんとだ……」などと言っている。

 あれ? ショーグンを倒した俺を称えてるんじゃない……?

 タケシとシゲゾーも戻ってきてタケシは俺を見るなり大笑い。
「ぎゃははははは。GMに攻撃してる奴なんて初めてみた!! 」
 シゲゾーも隣で笑いを必死に堪えている。

「GMってゴールドモンスターじゃなく?」
 俺がそう言うとタケシは腹を抑えながら大笑いをする。

「ゴールドモンスター!! ゲームマスターだってぎゃははははは!! 腹いってぇぇぇ」
「ゲームマスターってもしかして運営?」

 シゲゾーとタケシは示し合わせたようにコクリ頷く。
 ……やっちまった……俺、運営を攻撃しちゃった……

 シゲゾーは俺の肩を叩き
「これでお前も運営に目をつけられたな」
 とニッコリと笑って言った。

「なんだよ! せっかくショーグンに勝ったってのに!! 」

「ああ、そうだった……ありがとう……エイジ……ムカデを背負ってキングの仇を取ってくれて……」
 シゲゾーは少ししんみりとした感じを醸し出す。

「GMもそのムカデを背負って斬りつけたけどな」
 タケシがそう言って俺の肩を軽く叩く。

「しかし、なんでGMが出てきたんだ?」
 シゲゾーは首を傾げながら話す。

「ショーグンってやつRMTしてたんすよ」
 タケシはそう言うと空中に何かを打ち込んでいる。

 とあるURLが送られてくる。それを開くとフリマサイトのマルガリに繋がる。

 そこには『アルターオンラインのG売ります。1千万G 1万円』と書かれている。

「業者を介せずに自分たちでやり取りしてたみたいで、それを運営に通報したんだよ。まさかこれほど早く動くとはおもわなかったけど」

「でも、なんでこれがショーグンなんだ?」
そう訪ねた俺にタケシが答える。

「マルガリのアカウント名見てみ」

 マルガリアカウント『ショーグン11』

「……」
 シゲゾーと二人でそれを見て絶句する。

「な? 思ったよりバカだったよ……あいつ」

 3人でひとしきり笑うと、シゲゾーが口を開く。
「しかし、なんで運営は闘技場のど真ん中でショーグンを捕まえたんだろう? 1000人以上がみてたぞ?」

 タケシがうーんと考えそれに答える。
「見せしめかな。運営も仕事してますアピールでしょ。多分このあと公式から処分の発表があると思うよ」
「なるほど。見せしめか。まあこれでエウロペア防衛軍もおしまいってことだな」
 シゲゾーがそう言った時。

「エイジくん!」
 声のした方を振り返るとキングが人をかき分けながら俺の方にやってくる。

「やっといたよーこっちの受付けだったんだね。今日ショーグンと戦うって聞いたからログイン時間ずらしたんだ。見れてよかった! 二人の戦い見てると、僕もエイジくんと戦いたくなったよ! 日曜日に僕と戦ってほしいなー」
 キング人懐っこくそう言って俺に右手を差し出す。

「もちろん! 」
 俺はそう言ってキングと握手を交わした。



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