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第1章 追放からの

第7話 アンコロール初クエスト

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 あいつらがギルドを去ってすぐに、僕たちの最初クエストが決まった。このベイルの街の西にある、広い草原のスライム駆除で、10匹倒してポイントは2ポイント、報酬は銅貨1枚。

 駆け出しの僕たちのパーティが受けるに相応なクエストだ。

「よいしょっと」
 パンパンに膨らんだリュックサックを背負う僕。中には僕とニーナ、エイルの荷物が詰められている。

「そんなに無理しなくてもいいんですよ?」

 ニーナとエイルはそう言ってくれていたが僕は
「僕は戦うことや人を癒やすことはできないから、これが僕のパーティでの役割なんだ。みんなが戦ったりしてるのに僕だけ何もしてないのっては耐えられないよ……」

 そう言うと二人は僕の気持ちを察してくれてエイルは
「そうか……そうだね。何もしないというのは耐えれらないよな」
 と言ってくれてニーナは
「そうですね……みんな対等に仕事をしてのパーティですからね」
 そう言ってくれた。

僕はその二人にこう返事をする。
「うん。僕が荷物を頑張って持つ代わりに、ニーナやエイルは戦闘を頑張って」
 二人はうんと頷いた。


 3人分の荷物が詰められたリュックサックはずっしりとと重く、両肩の紐が食い込む程だ。それでもそれを我慢して歩く。

 青々とした草が見渡す限り広がる草原。そこを貫くように馬車でできた轍のような道が走っている。

 スライムは下等なモンスターで知能も低くそれほど悪さをするモンスターではないが、この道を走る馬車がそのスライム踏むと倒れてしまうことがある。

 しかもスライムは放っておくと簡単に増える。だからこうやって誰かが毎日スライムを退治をする必要がある。

 道を歩いていると早速、透明の膜のようなスイカ程の大きさのものが伸びたり縮んだりしながら動いているの発見する。

 あれがスライムだ。スライムへの攻撃は魔法で燃やすか、細切れに斬り刻むしかない。普通に真っ二つ斬っただけでは分裂をするだけとなる。だから分裂できないぐらいの細切れにするしか無い。まあこれはこの世界では誰だって知ってることだ。

 エイルが早速、剣を抜く。
「ふふ、攻撃は任せろ」

 エイルが剣を抜いて飛び掛かる、昨日見せた見事な剣技でスライムはあっというまに細切れになり、水みたいに地面に還っていく。

「まずは1匹!」

 エイルの剣技は素晴らしく、あっと言う間に10匹、20匹とスライムを倒していく。途中休憩を挟んでこの日は100匹のスライムを狩ることができ、太陽が西の空が染め始めている。

 エイルは100匹を狩ったというのに疲れたと言うような表情はしていない。

「エイルお疲れ様! 」
 僕はそう言って水筒を差し出す。

「ありがとう」
 水筒の蓋を開けて水を飲み始めるエイル。

 僕と一緒にエイルを眺めていただけのニーナが口を開く。
「100匹で20ポイントですかぁ先は遠いですねぇ」
「確かに」
 エイルもそれに同意するように答える。

「私はこの先あと何匹スライム狩るんだろう……」
 エイルがそう呟いた。

 そのエイルの呟きに僕が答える。
「鉛に上がるにはあと980ポイントだから4900匹?」
「うげぇぇ……」
 もううんざりというような表情のエイル。

「でも、こうやって実績を積んでいけば効率のいいクエストを回してくれるようになるから、ずっとスライムばかりじゃないよ」

「そうだな! 」
 とエイルの声は少し弾む。。

「じゃあギルドに行って報酬を受け取りましょう」
 ニーナがそう言うと僕たちはギルドに向かった。

 ギルドに帰ると受付のおねぇさんが目を丸くして話しかけてくる。
「たった半日で100匹も狩ったの?!」

 リーダーのニーナがそれに答える。
「はい!」
「錫で半日で100匹も狩ったなんて聞いたこと無いわよ。上にも報告しておくから期待してて」
「ありがとうございます」

 次の日にはスライム退治以外のクエストも受けられるようになり、失敗もなくクエストをこなしていったある日のこと…… 

 ギルドの中がすこしザワザワしている。

 誰かがそう話している声が聞こえてくる。
「あ、あいつら失敗したの?」
「ああ、調子悪かったんだろう……まだ後2回あるから巻き返してくれるさ」

 その話している人達の視線の先にあるのはギルド機関紙と呼ばれる新聞のようなもので、銅以上のランクのものの情勢が掲示されている。

 それが貼られた柱に近づいてみる。
 金ランクのなんとかいうパーティがドラゴンなんちゃらの討伐成功などと景気がいいことが書かれている傍ら小さな文字で
『デーモンの目にも涙、銅ランク初クエスト失敗』
 と書かれている。

 ……クエスト失敗って怪我とかしてないかな……いやいや……僕が心配することじゃないか……

 3人の事を知っているから……なんとも言えない心境になる。

「浮かない顔してますね……あの3人のことが心配ですか?」
 受付けでクエストを受注してきたニーナが僕に話しかけてくれる。

「怪我してなければいいけどっておもっちゃって……」
「ブッザスさんは優しいんですねぇ。私だったらこれもんのこれで喜びますよ」
 といって派手にガッツポーズをしてみせる。

「あはは……」
 僕はそれを見て気のない感じで笑う。

「でも、その優しさがブッザスさんのいいところだと思います。私ひと目あなたを見た時からパーティに入ってくれないかなぁって思ってたんですよ? 私は人を見る目があるんです」
 面と向かってニーナにそう言われると気恥ずかしくなって俯いた。
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