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第1章 追放からの

第5話 アンコロール

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 僕とニーナはエイルさんに駆け寄って口々に話しかける。
「凄い! さっきとは全然違うね!」
「うん、うん、さっきのが嘘みたい」

 エイルさんも自分の手を見ながら信じらないと言うような表情で
「私も信じらないんだ……ただ、剣を握った瞬間にイケると思った」
「何が違ってたの?」

「剣が軽かった。毎日握ってる剣だ、握った瞬間にその違和感には気が付くよ」
 エイルさんはそう答える。

「ふーんなんでだろ?今までそんなことあった?」
「ないなぁ」

「やっぱり、筋力強化の魔法としか思えないけど……」

 僕はそう言ってエイルさんと一緒にニーナを見る。
「だからー私は回復魔法しか使えませーん」

 エイルさんが呟く。
「仲間ができた。初めての仲間……私にはそれが力になったんだと思う」
「そういうことみたいですね。ブッザスさん」
「う、うん」

 なんかこの場で曖昧な感じで収まったけど、以前のパーティも力が強くなったとか魔法の威力が上がったとか言ってた。

 その時も気のせいや、実力が付いてきたんだなんて言ってただけだった。

 まあ僕が気にしてもしょうがないし、エイルさんは仲間なんだ、その力が強くなるなら喜ばしいことだよね。

「エイル・モーハンです。よろしくお願いします」
 エイルはそう言うと右手を差し出してくる。
「ようこそ、僕らのパーティへこちらこそよろしく頼むよエイル」
 と握手を交わした。

 ――翌日

 こうして3人になった僕達のパーティは翌日、冒険者ギルドに赴いた。

 ギルドの中は冒険者でごった返している。

「ねぇブッザスさんまずはパーティ登録をしなきゃですよね?」
 ニーナはキョロキョロとしながら僕に話し掛けてくる。
「うん。あそこに登録窓口って書いてあるからあそこで登録申請をする」
 僕が指差した先には、登録窓口と書かれた吊り看板のカウンターの向こう側に、青い制服を着た女の人が座っている。

 3人で登録窓口に立つ。
「パーティの新規登録ですか?」
 青い制服の女の人が話し掛けてくる。

 3人で同時に頷く。

「それではこの紙に記入をお願いします」
 ニーナが紙を受けとる。

「リーダーとかパーティ名とかって書いてるけどどうします? 」

「リーダーはニーナでしょ。ニーナがパーティ作ろって言ったんだし」
 エイルも
「そうだな。ニーナが私を誘ってくれたんだしブッザスの意見に賛成だ」

 ニーナは少し照れながら
「みんながそう言うんなら仕方がないなぁ……じゃ私がリーダーで」
 と答えて
「パーティ名どうしましょう……」
 と聞いてくる。

「そうだねぇ……ここはリーダーの初仕事ってことでニーナが決めてよ」
 エイルさんも頷いている。

「じゃあ私が勝手に決めるよ!後悔しても知りませんよ! 」

 ニーナは腕を組んでウンウンと唸っている。

 ――数分後

「でた! 」
 と突然大きな声を出す。

「アンコロールにします! 」
「餡ころ?」
 僕が聞き返す。

「餡ころじゃないです! アンコロールって無色って意味なんです。私達はまだ駆け出しでどんな色も付いてない。どんなパーティになったとしてもこの今の気持ちを忘れないう意味です」

 ニーナの話しを聞いて僕の胸は熱くなる。そしてその思いを伝える。
  
「……今の気持ちを忘れない……いいね! 流石リーダー」
 エイルも頷く。
「うん、うん。初心忘れるべからずいいね」

 パーティ名の欄に『アンコロール』と記入して提出をする。

「パーティ受付完了しました」
 女の人からパーティ名の入ったカードを受けとる。

 パーティ名:アンコロール パーティランク錫
 裏面にはパーティメンバーの名前が書かれている。

「クエストを受注してポイントを集めてランクを上げて下さいね」
 と言われる。

 クエストの難易度によって貰えるポイントは異なる。当然、難易度が高いクエスト程ポイントは高くなる。
 かと言って僕達が受けられる錫ランクの高難易度クエストをいきなり受注したりすることも出来ない。ある程度の実績を積まないと同じランクでも受注することができないようになっている。これはクエストを発注した依頼人への配慮となっている。

「クエスト受注は……」
 ニーナがまた周囲をキョロキョロとする。
「あそこだよ」
 僕が掲示板を指差す。

 するとギルド内がザワザワとし始める。

 誰かが話す声が聞こえてきて
「来たぞ! デーモンの目にも涙だ! 」
「おお! この街久しぶりの銅ランクパーティ!」

 ごった返していたギルドの入り口が割れてそこに例の3人が誇らしげに現れる。

 僕はそれに気がつくと隅に隠れるようにする。

 直ぐにそれに気がついたニーナが話し掛けてくれる。
「どうしたんですか?」
「あのパーティなんだ……僕が居たパーティ……」
「あーあれですか……なんか感じ悪い3人組ですね」

 ギルド内は3人が現れたことで興奮をしている。

「やっぱリリム可愛いなぁ」
「エニシさんかっこいい!」
 黄色い歓声が上がる。

 ワイズマンがギルドの真ん中に立つとザワザワとしていたギルドはシーンと静まる。

 受付から燕尾服をきた初老の男の人が現れ、銅ランクと印された盾を受けとるワイズマン。そして大きく息を吸い込んで話し始める。

「今日俺達はこの街を去る。しかしその前にこの街のギルドに世話になった! 俺達はこれから王都に行ってさらに上の銀、金そして頂点を目指す! 」

 そう右手を挙げるとギルドに居た人達は
「うぉぉぉぉ!!」
 と歓声を上げる。

「何が!世話になったギルドですか! 大切な仲間を簡単に捨てるクソ野郎共です! あいつらは! ブッザスさん絶対に見返してやりましょう」
 ニーナは興奮し鼻息荒く僕にそう言ってくれた。

 エイルも3人を睨みながら
「仲間を平気で捨てる連中が頂点なんか取れる筈ない! 絶対にあいつら失敗する」

「……」
 僕は胸が一杯になって、何も言えずに頷くことだけで精一杯だった。
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