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第7章 ペンタグラム

第115話 狭い道

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 見えない壁の向こう側の風景は雪が降る山の尾根の続きではなく、緑溢れる草原でその先には白い壁の家が立ち並ぶ街が見える。

 その風景に懐かしさを覚える。

 ここがペンタグラム。朧げな記憶を頼りに街に向かおうとすると、木でできた人形が数体こちらへ走ってこちらに来ている。まさか見つかった?

 恐らく見えない壁に何かがあったのが伝わったのだろう。その様子見として木人形を差し向けたと。

 俺は剣を構える……昔、母に聞いたことがある。この人形はどうやって動いているのかと、その問に母は胸……人間の心臓がある部分に魔力を込めたが宝玉を埋め込んでいると……

 その時、俺がじゃあ宝玉を壊せば死ぬの? と聞くと、うんでも宝玉は普通には壊せないの。魔力で守られているからと答えていた。


 俺の手にもつ剣は魔力の庇護を断ち切る剣。この剣でその宝玉を斬れば、木人形はその動きを止めるはず……

 俺を見つけた木人形はまっすぐに剣を構え走りながら切りかかってくる。その剣が振り下ろされる前に俺の剣が胸を貫く。

 するとその木人形は活動を停止する。他の2体の人形も同様に切りかかってくる前に心臓の場所を剣で貫くとその活動を停止する。

 所詮は人形、人と同じような動きができるわけではない、数体であれば全く相手にはならない。

 人形の胸を見ると、本来は光輝いている宝玉はその色を失っている。

 俺は走しりだす。全力疾走で。

 木人形を操っていた連中がやってくるはずだ……魔法使いのとの戦い、エリンとの戦いは熾烈を極めた。俺もあの頃よりは成長しているとはいえ……目立つ行動は避けなければならない。

 なんとかペンタグラム人がやってくるまえに郊外にたどり着く。ここペンタグラムは十王国のように壁に囲まれた街ではない。

 綺麗に整備された石畳。白い壁の同じような家が立ち並んだ光景。俺が13年前に歩いて光景と何ら変わりない。ただ昔は広く大きく感じられた道がやたら狭く感じる。

 空を舞う翼の生えた竜が数匹、それぞれ背中に人を乗せ街の中央部から飛び立つのが見える。

 俺は慌てて手近な家に飛び込む。扉に鍵はかけられていないが、家の中は蜘蛛の巣が張り何年も家主が不在であることを物語っている。

 家の中は小さな肖像画が2つ置れており、家主が亡くなっているということが分かる。寝室に行くと綺麗にベッドメークされたベッドと動かなくなった木人形が、床に腰をおろしている。

「お前は主人が亡くなったあとも仕事を続けていたんだな……」
 木人形にそう話しかける。昔もこうやって木人形に話しかけてたな。ベッドに脇にある日記のようなものに目を落とす。

 そこには家主とその妻が死文病という病気に掛かっており、余命が幾許もないことなどが書かれており、スピカが導く者でこの死文病がない世界へ導いてくれる者と記されていた。

 日記の最後のページには妻への感謝の言葉と愛の言葉が綴られていた。

 スピカが導く者か……その存在は聞いたことがある。昔この地に導いた者がいたことを、それが導く者とよばれペンタグラムが危機に陥ると再び現れると……

 そして死文病という病。もしかしたら本当の危機に陥っているのはペンタグラムなのか?その考えが一瞬頭をよぎった。

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