111 / 120
第6章 剣聖剥奪
第111話 リブート
しおりを挟む
初めて部屋を出る。窓の外に広がるのは大きな庭でよく手入れがなされている。
「良い庭でしょ。あの庭の手入れもカイト様がなされているのですよ」
執事が歩きながら庭を眺める俺に話しかけてくる。
「凄いですね。この庭を」
「なんでも自分でやるのが好きなので、我々の仕事まで奪いかねません」
執事はニコッと笑う。
「そうそう。あなたに渡した薬もカイト様が調合されてものなんですよ」
「あの薬ほんとに良く効きました。まさか3日でこれほどよくなるとは」
「ベルディン家に伝わる秘薬だとか」
「秘薬ですか……」
廊下を歩いて気づいたことがある。それは貴族の豪邸らしい煌びやかな調度品を目にすることがないということ。
屋敷は大きく廊下も長い。十王国を代表する名門貴族のベルディン家なのに華やかな雰囲気はなく。殺風景な長い廊下が続く。
俺が目を丸くしているのを見て執事が話しかけてくる。
「あなたは貴族らしい調度品や肖像画がないことに驚いてらっしゃる?違いますか?」
「ええ……ここには俺が貴族の家で目にしてきたような調度品や威圧感ある肖像画がなく殺風景だ」
「あははは。殺風景ですか」
「あっ!すいません」
俯いて頭を掻きながら謝る。
「いえ良いんですよ。代々のベルディン家のご当主様は派手なこと嫌うんですよ。『贅沢をするなら領民に施しを』これはベルディン家の家訓とも言っていい。そしてこの家が大きいのは、戦争が起きたときに一人でも領民の保護をするということで、大きなお屋敷になったんです」
執事は主人を誇らしく思っているのが伝わってくる。
カイトさんもこんな家で育ったからごく当たり前に領民と農作業にでたりしているんだろうな……
ふと屋根を見上げるとカイトさんと大工だろうか?手に金槌を持ってる連中が屋根を張り替えてるように見える。
あれ?俺ってカイトさんに呼ばれたから行ってるんじゃなかったっけ?
執事も屋根の上のカイトさんを見て頭を抱えて窓を開け叫ぶ。
「カイト様!!何をなされてるんですか!」
屋根の上で木の板を持ったカイトさんは悪びれもせずに答える。
「何って屋根の修理だけど」
「カイト様がお客様をお連れしろと」
「あー悪い悪い。職人を待たせるわけにいかんからな」
……俺は待たせてもいいんだ……
「とにかくすぐにいらして下さい!」
「はい、はい」
そういうと大工と話しをしハシゴを降りる。
「ほんとに自分で呼んでおいて他のことしてるなんて……すいません」
「い、いえ気にしてないですから」
そうして客間に通され飾りっけのない武骨な椅子に座る。
「すぐに参られると思います」
執事はそういうと部屋を後にする。入れ違いにカイトさんが入ってくる。そして俺の向かいに座り、開口一番にこう言った。
「王都は落ちたぞ。3日前に」
「……はい」
「おっ!以外と驚かねーんだな」
「……ええ」
自分でも驚くほど冷静に事態を受け止めている。
「っま王都からきたんなら大体のことは分かる……か」
「そんなところです」
「おうよ。まああの曲者のセネバが指揮してんだからただでは負けてねーとは思うがな」
「それでは自分は先を急ぎますので」
そう言って立ち上がろうとすると
「俺がお前を呼んだのはこれが言いたかったんじゃねぇ」
カイトさんが手に持っているものを広げる。それは古い地図のように見える。
「お前さんペンタグラムに行くんだろ?これはうちの先祖から伝わる地図だ。ご先祖様は昔ペンタグラムに行こうとしたらしくてな」
俺はその地図を凝視する。
カイトはその地図を指差ながら説明をする。
「ここが俺たちのいるサウストン。ここから海岸線に沿って真っ直ぐに西へ行きタウレル山脈を越えた当たりにあるらしい」
「タウレル山脈……」
「ああ、ペンタグラムは山に囲まれた場所にある」
「なるほど……助かりました」
「お前まさか歩いて行くつもりか?2週間はかかるぞ?」
俺は当然というような表情をする。
「仕方ねーなーうちで一番速い馬を貸してやる。それなら1週間で着く」
「え!!いいんですか?」
「いいも悪いもねーだろ?十王国の命運がかかってんだ」
「ありがとうございます!!」
カイトさんは腕を組み真っ直ぐに俺の瞳をみながらこう言った。
「馬は貸したんだからな、お前が必ず返しにこい。必ずな。来たらサウストンの街を俺とマリーで案内するから約束だぞ!」
組んでいた腕をほどき俺の前に手を差し出す。
「はい、必ず返しに来ます。必ず」
とても貴族とは思えない豆だらけの手をしたカイトさんと固い握手を交わす。
カイトさんとはもっと早く会いたかった。こんな時ではなくゆっくりと話しが出来る時に……
屋敷を出ると鞍のついた馬が用意されており、俺はそれに跨る。
馬を用意してくれていた執事さん、カイトさんにマリーの見送りを受け、俺は馬の腹をちょんと蹴り馬を走らせる西へと。
「良い庭でしょ。あの庭の手入れもカイト様がなされているのですよ」
執事が歩きながら庭を眺める俺に話しかけてくる。
「凄いですね。この庭を」
「なんでも自分でやるのが好きなので、我々の仕事まで奪いかねません」
執事はニコッと笑う。
「そうそう。あなたに渡した薬もカイト様が調合されてものなんですよ」
「あの薬ほんとに良く効きました。まさか3日でこれほどよくなるとは」
「ベルディン家に伝わる秘薬だとか」
「秘薬ですか……」
廊下を歩いて気づいたことがある。それは貴族の豪邸らしい煌びやかな調度品を目にすることがないということ。
屋敷は大きく廊下も長い。十王国を代表する名門貴族のベルディン家なのに華やかな雰囲気はなく。殺風景な長い廊下が続く。
俺が目を丸くしているのを見て執事が話しかけてくる。
「あなたは貴族らしい調度品や肖像画がないことに驚いてらっしゃる?違いますか?」
「ええ……ここには俺が貴族の家で目にしてきたような調度品や威圧感ある肖像画がなく殺風景だ」
「あははは。殺風景ですか」
「あっ!すいません」
俯いて頭を掻きながら謝る。
「いえ良いんですよ。代々のベルディン家のご当主様は派手なこと嫌うんですよ。『贅沢をするなら領民に施しを』これはベルディン家の家訓とも言っていい。そしてこの家が大きいのは、戦争が起きたときに一人でも領民の保護をするということで、大きなお屋敷になったんです」
執事は主人を誇らしく思っているのが伝わってくる。
カイトさんもこんな家で育ったからごく当たり前に領民と農作業にでたりしているんだろうな……
ふと屋根を見上げるとカイトさんと大工だろうか?手に金槌を持ってる連中が屋根を張り替えてるように見える。
あれ?俺ってカイトさんに呼ばれたから行ってるんじゃなかったっけ?
執事も屋根の上のカイトさんを見て頭を抱えて窓を開け叫ぶ。
「カイト様!!何をなされてるんですか!」
屋根の上で木の板を持ったカイトさんは悪びれもせずに答える。
「何って屋根の修理だけど」
「カイト様がお客様をお連れしろと」
「あー悪い悪い。職人を待たせるわけにいかんからな」
……俺は待たせてもいいんだ……
「とにかくすぐにいらして下さい!」
「はい、はい」
そういうと大工と話しをしハシゴを降りる。
「ほんとに自分で呼んでおいて他のことしてるなんて……すいません」
「い、いえ気にしてないですから」
そうして客間に通され飾りっけのない武骨な椅子に座る。
「すぐに参られると思います」
執事はそういうと部屋を後にする。入れ違いにカイトさんが入ってくる。そして俺の向かいに座り、開口一番にこう言った。
「王都は落ちたぞ。3日前に」
「……はい」
「おっ!以外と驚かねーんだな」
「……ええ」
自分でも驚くほど冷静に事態を受け止めている。
「っま王都からきたんなら大体のことは分かる……か」
「そんなところです」
「おうよ。まああの曲者のセネバが指揮してんだからただでは負けてねーとは思うがな」
「それでは自分は先を急ぎますので」
そう言って立ち上がろうとすると
「俺がお前を呼んだのはこれが言いたかったんじゃねぇ」
カイトさんが手に持っているものを広げる。それは古い地図のように見える。
「お前さんペンタグラムに行くんだろ?これはうちの先祖から伝わる地図だ。ご先祖様は昔ペンタグラムに行こうとしたらしくてな」
俺はその地図を凝視する。
カイトはその地図を指差ながら説明をする。
「ここが俺たちのいるサウストン。ここから海岸線に沿って真っ直ぐに西へ行きタウレル山脈を越えた当たりにあるらしい」
「タウレル山脈……」
「ああ、ペンタグラムは山に囲まれた場所にある」
「なるほど……助かりました」
「お前まさか歩いて行くつもりか?2週間はかかるぞ?」
俺は当然というような表情をする。
「仕方ねーなーうちで一番速い馬を貸してやる。それなら1週間で着く」
「え!!いいんですか?」
「いいも悪いもねーだろ?十王国の命運がかかってんだ」
「ありがとうございます!!」
カイトさんは腕を組み真っ直ぐに俺の瞳をみながらこう言った。
「馬は貸したんだからな、お前が必ず返しにこい。必ずな。来たらサウストンの街を俺とマリーで案内するから約束だぞ!」
組んでいた腕をほどき俺の前に手を差し出す。
「はい、必ず返しに来ます。必ず」
とても貴族とは思えない豆だらけの手をしたカイトさんと固い握手を交わす。
カイトさんとはもっと早く会いたかった。こんな時ではなくゆっくりと話しが出来る時に……
屋敷を出ると鞍のついた馬が用意されており、俺はそれに跨る。
馬を用意してくれていた執事さん、カイトさんにマリーの見送りを受け、俺は馬の腹をちょんと蹴り馬を走らせる西へと。
0
お気に入りに追加
689
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる