21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

文字の大きさ
上 下
16 / 120
第2章 騎士学校

第16話 基礎体力

しおりを挟む
「シャウラなんか青い顔してるけどなんで?」
「基礎体力の授業ってのは一番しんどいやつだよ。特にあのエグルストンがする基礎体力はイビリだよ」
「それでみんな嫌がってたのか」

 エグルストンは周りの空気もお構いなしに授業を進める。
「それじゃ今から腕立て俺が良いというまで」
 シャウラは俺の顔を見てほらねってというような表情を見せる。

 みんなその場でうつ伏せなり腕立て伏せの姿勢になる。
 エグルストンは大きな麻袋を足元に置いている。そしてもう一度俺の方を見て
「そうだラグウェル君は期待の新人だから、ただ腕立てをしてもらってもつまらないだろ?だから私からプレゼントをあげよう」
 そういってその麻袋を俺の背中に乗せる。その麻袋が乗った瞬間ズシリと両腕に重みを感じる。

「どうだい?ラグウェル君、君のために特製の重りを用意した。わが校始まって以来の編入生だからねぇ、その期待に応えるためにも他の人と同じ練習をしてはいけないと思うんだよ。どうだいラグウェル君、重くてできないってことはないだろう?」

 その重りは大人の男一人分程度はあるような重さで、俺は大人一人を背負って腕立て伏せをすることになる。そして両腕で自分の体重と重りの重さ支えながら笑顔でエグルストンに答える。

「これぐらいなら大丈夫です」
 エグルストンは少しムッとしていたが
「ほうなら見せて貰おうか、はじめ!!
 生徒たちは一糸乱れぬ動きで腕立て伏せを始める。全員で回数を言った後に全員で返事をし一定のリズムで腕立て伏せをする。
「1」
「はい!」
「2」
「はい!」
 20回をすぎたあたりから脱落する生徒たちが出てき始める。

 それをみたエグルストンは大きなため息をつき怒り始める。
「はぁぁ、情けないそんなことで騎士になろうというのか?お前たちは!!50回もできずに脱落したものは点数なしだからな!」
 そういってエグルストンは何やら紙に書き始めた。どうやらチェックをしているらしい。

 そうこうしているうちにシャウラも苦悶の表情を浮かべ始め30回を過ぎるとそのまま起き上がれなくなる。

 50回を超えるとクラス大半の人間が脱落する。
 それをみてエグルストンは
「情けないなぁ…俺が学生の頃はみんな50回は必ず超えていたのになぁ」
嫌味を口にする。

 俺はリズミカルに表情も変えずひたすら腕立てをしていた。エグルストンはそれを見てチッと舌打ちをし嫌な笑顔を浮かべ
「お、さすがラグウェル君!表情一つ変えずに腕立てとはやるねぇ、重さが足りないようだな」
 そう言って隣にいるシャウラに声を掛ける。

「ラグウェル君は重さが足りないらしい、そこのお前ラグウェル君の上に乗りたまえ」

 シャウラはオロオロとうろたえた様子で俺の事を見る。シャウラの方を向いて顔を上げコクリと頷く。するとズシっと重みを感じた。
 シャウラは俺の背中にすわり小声で「ごめん」と一言謝った。

 それでも俺はリズミカルに腕立てを続ける。100を超えた辺りからエグルストンは驚きとも畏怖ともいえるような表情を浮かべるようになり、120超えるころには他の生徒みんなが脱落し、俺だけが残る事態となり、少し焦ったように声を上ずらせ
「じゃあ腕立てはこの辺でやめにするか」
 と言った。
 シャウラが背中から降りる。そして俺の背中に乗っている麻袋を下ろそうとしてくれていたが、あまりにも重さに動かすことができなかった。
「ありがとう」
 俺はシャウラに礼を言いゆっくりと麻袋を床に下ろし立ち上がる。
「もう終わりですか先生」

 エグルストンは焦った様子で
「あ、ああ時間も限られているからな、腕立てだけをし続けるわけにもいかんだろ」
 とバツが悪そうに話した。

 俺がシャウラの隣に戻ると心配そうに声を掛けてくる。
「大丈夫?」
「うん、あれぐらい大丈夫だよ。気絶したアルファルド背負ってを木を登ったり、足を負傷したアルファルドを背負って岩山を登ったりしてたからさ」

 シャウラは少し引き気味に返事をする。
「…へぇぇ」
「意識して鍛えたつもりもないんだけどね、こんなことやるよりも実際に戦った方が何倍も強くなるとおもうけどなぁ」

 エグルストンは腕組みをし口を開く。
「次はウサギ飛び俺がいいというまで」
 俺は例のごとく麻袋を背負わされ、延々とウサギ飛びをやらされる。講堂を50周はしたであろう。ほとんどの生徒たちがリタイアする中、重りを背負って涼しい顔をしてクリアする俺をみてエグルストンは右足をトントンとゆすり、イライラしているように見える。
「やめだ!やめ!うさぎ飛びやめ!!!」
 ウサギ飛びをしているのが俺一人にになったところでエグルストンは叫び止めさせた。

 苦虫をつぶしたような顔をしていたエグルストンは何かを思いついたのかこれならというような表情をする。
 しかし彼は一番やってはいけない選択肢を取ってしまった。
「基礎訓練はやめだ!!これから実践訓練にうつる」
 どよめく生徒たち。
 シャウラもおどろいたような顔をしている。
「なんでみんなびっくりしてんの?あんな基礎訓練なんてやっても強くなんないって」

「それならいいけど…普通の実践訓練なら…」
 エグルストンは木剣1本だけ持ち出してくる。
「これから丸腰の時に剣を持った相手と戦わなければならないという実践形式の訓練を行う。剣を振るうのは当然この俺だ」

 生徒たちは顔を見合わせ、生徒の一人が質問をする。
「せ…先生と丸腰で戦えということですか」
「そういうことだな。俺と戦いたい奴は出てこい。俺に勝てたら満点をくれてやる」



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...