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第2章 騎士学校

第14話 20代目の剣聖

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 校長室に二人で戻りシャウラが扉をノックする。
「どうぞ」
 中から校長の声が聞こえる。

 扉を開けると校長の机の前に白色で縁が青色の裾が長い外套を着た人の後ろ姿がある。その人がこちらを振り返る。肩まで伸びたブラウンの髪、その顔は精幹な顔つきで顎には無精ひげが生え、30代前半に思える外見。そして外套の胸にはアルファルドの手紙に入っていたような剣の形をした徽章が付けられている。

 その男は俺を見て
「この子が校長の言っていた子?」
 と校長に話しかける。
「そう、アルファルドの弟子だ」

 一方のシャウラはその白い外套の男を見るなり直立不動になり、緊張した面持ちをしている。
 俺はシャウラに小声で話しかける。
「あれだれ?」
「…剣聖様」
「へぇぇあれが」
 すると校長が声を掛ける。
「そんなところにいないで早く入ってきなさい」

 シャウラは固まって動かないので俺だけ校長室に入る。
 校長はシャウラに話しかける。
「あー君は教室に帰っていいよ。ありがとう」

 シャウラは膝を曲げず硬い動きのまま校長室の前から去っていった。
 シャウラそ見届けて、校長室の扉を閉め振り返ると、目の前に剣聖がいた。

 なんだこいつ!?

 咄嗟に横に飛びくるりと回転し片膝をついて着地する。

 パチパチパチ
 剣聖といわれた男はそれを見て拍手をしている。
「いい反応だ、さすがアルファルドの弟子だ」
 何の気配も感じなかった…もし奴が俺を斬るつもりであれば…
 俺は剣聖といわれた男をギロリと睨みつける。

「そんな怖い顔しないでよー前剣聖のお弟子さん」
 校長の声が響く。
「こら!レグルス揶揄からかうな」
「すいません。ついつい」
 立ち上がるとレグルスという名の男は俺に右手を差し出してきて
「俺は第20代剣聖、レグルス・フェルトだ。よろしく」
 と爽やかな笑顔をみせている。
 さっきの気配を殺して接近されたことに腹を立てていたため、俺は握手には応じず、ぶっきらぼうに名前だけを伝える。
「ラグウェル・アルタイル」
「まだ怒ってるの?ごめんね君を試すようなことしちゃって、君があのアルファルドの弟子って聞いてどれほどのものか試したくなってね」
「…」
 レグルスはすっと真顔になり俺に耳打ちをする。
「君はまだまだ僕には及ばない、剣聖には程遠いかな」

 シャーンという音が校長室に響き俺は鞘から剣を抜き、剣身をレグルスの首元にピタリとつける。剣聖は瞬き一つせず悠然としている。
「君は僕を斬らない、そんなことぐらいはわかるよ」
「それはどうかな…」

「もし君が僕を斬るつもりだったら君の首が床に転がっていただろうけどね」
 その男は極めて冷ややかな目で俺の事を見ている。
 俺は剣を鞘に戻どし右手を差し出す。

「やっと握手してくれるんだね、ラグウェル君」
 そういってレグルスも右手を出し握手をする。
「あ!用事あるの忘れてた!」
 そう言ってレグルスは校長室から慌てて出ていく。

 なんなんだあいつ…俺はほんのりと手が汗ばんでいることに気が付いた。

 校長が話し出す。
「すまんのぉあいつのいたずら好きには困ったものだ」
「いえ…」
「しかしあいつの強さは本物だ、君もそれを感じたんじゃないか?」

 確かにあいつにはアルファルドとはまた違うものを感じた。

「あいつと戦える日が待ち遠しいです」
「そうだな近い将来必ずレグルスがお前の前に立ちふさがるだろうな」

 校長の机の上には真新しい青い制服が置かれている。
「そうそうこれが本題だった」
 そういって校長は机の制服を俺に渡す。
「着てみて」
「はい」
 俺はボロ布でできた外套と鎖帷子を脱ぎ、真新しい制服に袖を通す。
 詰襟の制服は首元が苦しい、俺はそのため上のボタンを外す。
「ダメダメ、全部しなきゃ」
 校長に促され、俺は嫌々一番上のボタンを留める。

「あと住むところだけど、寮に一部屋空きがあるからそこに決めたから」
「ありがとうございます」
「それじゃ君の教室に案内する」
 2人で校長室を出て校長の後を歩いていく。中庭の見える廊下を通っていき校長が戸の前で止まりガラッと戸を開ける。

 手招きをして、黒い髪を短く刈りこんだみメガネの痩せ型の男が出てくる。
 校長は俺の顔をみて、出てきた人物の紹介を始める。
「彼はこのクラス担当のロンド」
 校長はロンドに説明を始める。
「彼がさっき説明した編入生のラグウェル」
「あー彼が……よろしくお願いしますねラグウェル」
「こちらこそよろしく」
 ロンドに促され教室に入ると教室は階段状になりどこからでも教壇が見えるようになっている。

 席を見渡すと端にはアタリア、そしてど真ん中にシャウラが腰をかけていた。

 ◇◆◇

 レグルスは校長室から平然とした様子で退室した。そして数歩歩くと急に膝が笑い出し片膝をつき、数秒後にはすぐに立ちあがり廊下を速足で歩く。

 外に待たせてある馬車に乗ろうとすると運転手が話しかけてくる。
「凄く嬉しそうですね」
「そうか?」
 レグルスは馬車に乗り、右手を見る。その手は微かに震えており、レグルスは1人呟いた。

「嬉しい?違うな。俺は怖くてたまらないんだ。あの少年と近い将来戦うことになるのが……」


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