上 下
34 / 37

第34話 色街慕情その1

しおりを挟む
 叙勲から数週間が経ったある日のこと団長室に呼び出された俺とアレジオと何故かデューク。

 団長室には団長と副団長がいる。

 団長が口を開く。
「君達を呼んだのは他でもない。ここ2週間、色街で数人の男が殺されたのは知っているな」

 色街、所謂、売春街で女を金で買う男が集まる場所だが金を持たない俺には縁のない場所である、確かにこの2週間で男ばかりが干からびたような感じで殺されたと噂にはなっていた。

「しかし団長、あれはサキュバスの仕業ということで、冒険者の案件では?」
 アレジオは首を横に振りながら団長にそう言った。

 そう魔物が関係することは冒険者と大体の棲み分けができるのだが……

「本来ならばそうであるのだがな」
 そう言って団長は副団長を見る。

 副団長が話し始める。
「王都で魔物が出現となれば冒険者に一任するわけにもいかんのでな……」
 副団長はアレジオを見る。

 アレジオは勿論というような顔で答える。
「確かに国王陛下のお膝元で魔物が出現するなどあってはなりませんな」

 団長が話を引き継いで話し始める。
「そういうことで、先日銀獅子勲章を受賞した君たちに任せようということになった」

「ええ。このアレジオにお任せください。先日の邪教徒の一件のようにサクッと解決してみせましょう」
 アレジオは自信満々で答える。

 副団長はアレジオが話し終わったタイミングで話を再び始める。
「二人の仕事ぶりを見せたいということもあってデュークも君たちと一緒に任務に当たることとしたのだがいいかね?」

「まあ、このアレジオの活躍を見る人間は多ければ多いほどいいですからね。勿論構いませんが! デューク君。君は平民だ。くれぐれも貴族である私の言うことを聞くことだ」

「はい」
 デュークはそのまま答える。

 団長はウンウンとアレジオの話を頷きながら聞いている。

 副団長は話を続ける。
「相手はサキュバスとなる魅了にはくれぐれも気をつけてほしい」

 アレジオは肩をすくめ副団長の言葉に答える。
「このアレジオが魅了などという低級な魔法に引っかかるとでも?」

「そうだな。それでは活躍を期待している」
 ということで団長室を後にし、色街に向かった。

 アレジオは肩で風を切りながら歩き
「事件は娼館グラットンで起きている。そこにサキュバスがいるのは間違いない。俺についてこい」
 色街の道の真ん中を偉そうにアレジオは歩いていく。

 デュークが俺に耳打ちをする。
「アレジオさん自分の庭のように歩いてますね……」

「うん……」

 昼間ということもあってか人はまばらだが、それでも営業している店はあり、ショーケースのガラスの向こう側で、女の子が胸元が大きくはだけた服を着て、妖艶な仕草でパイプの煙をくぐらせ、俺達3人を誘惑するように舐めるのよう見ている。

「初めて来ましたけど……凄いところですね……」
 デュークが圧倒されたような感じで耳打ちをしてくる。

「う、うん」
 ……この前魅了耐性が付いたおかげでなのか、まだなんとか正気でいられるような気がする。

 まだ昼間なのに凄い……

 気を抜くとフラフラと女の子のお店に入って行きそうで怖い……

「アレジオさん?! アレジオさんじゃないですか!」
 と言って客引きの男が一人話し掛けて来る。

「ああ、なんのようだ」

「アレジオさん!! 連日、元気ですねー今日は部下を連れてのお楽しみですか? 昨日のセリカどうでした? アレジオさん好みでしたでしょ? あのスイカの様な胸堪らんかったでしょ? 今日もセリカ居ますよ? どうですか?」

「今日は仕事できておるからな……すぐに仕事を片付けてくるから予約しておけ」

「毎度!」

 そう言って男は店の中に入っていく。

 俺の聴覚強化された耳はその店の中での様子を確実聞き取る。

「セリカちゃんご予約入りましたよー」

「だれー」

「ほら、昨日のアレジオさんですよ」

「……私、早退します」

「は? 何いってんの! 仕事。仕事! 貴族の太客なんだから! 頑張ってよセリカちゃん」

「あいつ……気持ち悪いんですよ。すごーく早く終る癖に終わったら、売春婦などけしからん!! 我が母を見習え!って楽しんだあとに言うんですよ? あんたの母ちゃんなんて知らねーっての! あいつ本当に馬鹿ですよ。馬鹿。他の子達もみんな嫌がってるんですからね! 出禁にして欲しいぐらいですよ」

「まあ、そこをなんとか……お願い! 今日いるって言っちゃったからさ!」

「嫌です! それじゃ今日は私上がりますんで!」

 そんなことも知らずにアレジオは色街の道の真ん中を肩で風を切りながら偉そうに歩いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】異世界で婿をとれと言われましたが、あたしにはオッサン閣下がちょうどいい!

浅岸 久
恋愛
女が少ない異世界に召喚されてしまった大学生のチセは、〈晶精の愛し子〉として目の前に並んだイケメンたちからひとり婿をとれと言われる。 みんな顔がいいし身分も高そうだけど、ギラギラした目が怖いのでお断り! ……と思ったのに、偶然ぶつかってしまった気怠そうなオッサン閣下と結婚しなくてはいけなくなってしまった。  他のギラギライケメンたちより緊張しなくていいし、自分にはちょうどいいか! とチセは開き直る。なのにオッサン閣下の方がこの結婚を面倒がって、チセを他の男に押しつけようとして……。  いやいや、巻き込まれたなら最後まで一緒に巻き込まれてくださいよ! チセは、この拗らせまくったオッサン閣下と本当の夫婦になれるのか――?  実はスゴい人らしいワケアリ昼行灯オッサン閣下と、陽キャ女子大生の攻防戦。 ※Rシーンは後半です。[*]をつけています。 ※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。 表紙絵:詩穏さま

最狂公爵閣下のお気に入り

白乃いちじく
ファンタジー
「お姉さんなんだから、我慢しなさい」  そんな母親の一言で、楽しかった誕生会が一転、暗雲に包まれる。  今日15才になる伯爵令嬢のセレスティナには、一つ年下の妹がいる。妹のジーナはとてもかわいい。蜂蜜色の髪に愛らしい顔立ち。何より甘え上手で、両親だけでなく皆から可愛がられる。  どうして自分だけ? セレスティナの心からそんな鬱屈した思いが吹き出した。  どうしていつもいつも、自分だけが我慢しなさいって、そう言われるのか……。お姉さんなんだから……それはまるで呪いの言葉のよう。私と妹のどこが違うの? 年なんか一つしか違わない。私だってジーナと同じお父様とお母様の子供なのに……。叱られるのはいつも自分だけ。お決まりの言葉は「お姉さんなんだから……」  お姉さんなんて、なりたくてなったわけじゃない!  そんな叫びに応えてくれたのは、銀髪の紳士、オルモード公爵様だった。 ***登場人物初期設定年齢変更のお知らせ*** セレスティナ 12才(変更前)→15才(変更後) シャーロット 13才(変更前)→16才(変更後)

【R18】生真面目騎士様の不真面目な愛読書

綾瀬ありる
恋愛
聖騎士団の副団長ヒューバート・ラトクリフは生真面目な男である。そんな彼の唯一の趣味は読書。日々の激務からの解放を求めてうっかり手に取った一冊の本から、彼はその世界にずぶずぶとハマってしまう。魔術師団研究員のリズベス・モンクトン伯爵令嬢は些細なきっかけから、ヒューバートの意外な読書遍歴を知ることとなる。その彼女はある理由から、ヒューバートとその本の内容を実践することになって――? 生真面目騎士×ワケあり令嬢のじれじれラブコメディー。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

私の物を奪っていく妹がダメになる話

七辻ゆゆ
ファンタジー
私は将来の公爵夫人として厳しく躾けられ、妹はひたすら甘やかされて育った。 立派な公爵夫人になるために、妹には優しくして、なんでも譲ってあげなさい。その結果、私は着るものがないし、妹はそのヤバさがクラスに知れ渡っている。

薬屋の聖女 ~家族に虐げられていた薬屋の女の子、実は世界一のポーションを作れるそうですよ~

木嶋隆太
恋愛
私の家は代々薬屋を営んでいた。そんな私も小さい頃からポーションづくりに励んでいた。ただ、私の家での扱いはあまり良くなかった。姉たちには散々にいじめられていた。そんなある時、魔物との戦争が行われるということで、私たちの家にも大量のポーションづくりの指示が出された。私たち三姉妹も朝から晩まで必死にポーションを作り、それらの納品を行った。そんなとき、私の作ったポーションの評判が滅茶苦茶良くて姉たちのポーションは最悪な評価を受け……。

行き遅れの王女様は年下イケメン公爵と恋に落ちる?

雪乃
ファンタジー
レクストン王国第1王女アンフィリアンはもう直ぐ40歳。 花?の独身だけどこれには訳があった。 容姿は10人並みで体型はふくよかなのだ。 性格ははっきりとした現実主義なトコもあるけれど、何時か自分を好きになってくれる男性が現れるのでは…という乙女心も捨てきれない。 両親が持ってくるお見合いは全て彼女を通して豊かなレクストンを手に入れたいと思う男性ばかりだ。 だから彼女は見合いがくるたびに断っていたのだ。 だが今夜姪の社交界デビューの舞踏会が開かれる。 どうせ自分は壁の花…?なのに両親は出席を命じる。 見栄を張る為だけの夜会なのに…と不服ながらも出席した夜会で彼女は…。

悪役令嬢が残した破滅の種

八代奏多
恋愛
 妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。  そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。  その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。  しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。  断罪した者は次々にこう口にした。 「どうか戻ってきてください」  しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。  何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。 ※小説家になろう様でも連載中です。  9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。

処理中です...