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第29話 邪教の村その4

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 俺が騎士であると話すと旦那さんと奥さんは二人顔を見合わせ旦那さんがすがるような表情で話しかけてくる。

「あなたが……あなたが騎士様……お願いします。どうか私たちをいやこの村を助けて下さい!」

 キメ顔を崩さずに二人こう言い放つ。
「安心して下さい。俺はそのためにこの村にやってきたんですから」

「はい……早く王都に帰って騎士団の皆さんに報告して下さい!!」

 キメ顔のまま俺は眉をひそめて答える。
「いや、流石にアレジオさん助けないと……」

 夫婦で首を横に振り旦那さんが話を続ける。
「無理です! 一人じゃどうにもできません。あいつらの力は強力なんです。いくら騎士様がお強くても一人じゃ敵う相手じゃ到底ありません」

「でも、今晩殺されちゃうんでしょ?」

 コクリと頷いた旦那さんは話を続ける。

「アレジオさんはおそらくこの村の教会の地下に監禁されています。地下の入口には強力な魔物サイクロプスが守っています……それにサイクロプスを倒したとしても村長がいるんです……村長の力はとても強力で……一人で勝てる相手じゃない……アレジオさんは諦めて下さい……」

「諦めろかぁ……」
 俺がそういうと二人は頷く。

 アレジオあいつなにかとうるさいけど、助けないと俺が見殺しにしたようなもんだし……

 瞬間移動を使って王都に戻ったとしても討伐隊で組織してここまでやってくるのには丸2日は掛かる。そして今晩アレジオが死んじゃう。


 俺は再び緩めたキメ顔を作って、旦那さんに肘を曲げて力こぶを作りながら話し掛ける。
「旦那さんは腕立て伏せ何回できますか?」

 とうとうにそう聞かれた旦那さんはきょとんした表情で答える。
「え? 何を突然?」

 キメ顔のまま俺は続ける。
「俺は腕立て伏せ5000回以上できるんですよね。多分1万は余裕。そんな俺が負けると思いますか? 力S+のこの俺が」

「……何を言ってるのか意味が……」

 旦那さんに親指を立てて見せるとキメ顔で自信満々の表情で俺はこういった。
「アレジオを助けて邪教も俺一人でぶっ飛ばすってことです」

 俺はそう言って家を後にしようとする。すると旦那さんが背後から話しかけてくる。
「ま、待って下さい! サイクロプスがいるんですよ! 人間が一人で勝てる相手じゃない! ほ、ほんとに一人で行くんですか!?」

「俺は一人で暗黒教団をぶっ潰しました。1つ目なんて余裕です」

「……わかりました……止めても無駄みたいですね……」

 俺は右手を上げてそれに答える。

 そのままズンズンと歩いて村の真ん中にある教会を目指す。朝だというのに村はひっそりと静まり返っており、人っ子一人、道を歩いていない。

 白い壁の教会の扉を開く。

 入った正面ある大きなステンドグラスが目に飛びこんでくる。

 すると昨日村長とやってきた男がびっくりした表情で俺を見ている。
「お、おまえは毒で死んだはずじゃ……」

「残念だな。俺は毒耐性(特)でな……」

「俺は剣ではちょっと有名でな……疾風のシュウの名を聞いても俺に挑むか?」
 そう言って剣を抜く。

「知らない。誰それ?」

 真っ赤な顔して「ほざけ!」といって斬りかかってくる。

 当然俺にはハエが止まるような剣の速度。そのまま剣をバシッと掴む。

 押しても引いても動かない剣を持ったまま真っ赤な顔をしている村人A

「は、はなせよ。化け物!」

 俺は剣を振り回す。相手は剣を離さまいと必死に剣を掴んでおり、そのままぽいっと放り投げると教会のステンドグラスを突き破って飛んで行ってしまった。

 さて……地下の入り口はどこかな……耳を澄ましてみる。

 すると……

「お、俺の兄は騎士団の参謀だ。俺が兄に言ってなんとかしてやるから俺を助けてくれないか? お前らの罪は帳消しになるんだぞ。それがいいだろ?」

「ガシャデール様は貴族の血を欲しておられるのじゃ! お前の兄がなんだのしらん! お前今日ここで死ぬのじゃ!!」

「……お願いします……おねぇがぁいぃしぃまぁすぅ!! いのちだけはいのちだけわぁぁぁぁぁぁ」
 風にのってアレジオの半泣きの声と怒鳴る村長の声が聞こえてくる。

 その声は祭壇の前に置かれた机の下から聞こえてきている。机をどかすと下に向かう扉があった。
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