26 / 37
第26話 邪教の村その1
しおりを挟む
「幽霊のやつめ……俺に妖術を掛けやがって……」
アレジオは幽霊の妖術で立ったまま寝ていたと苦しい言い訳をし、俺はそれをニヤニヤしながら見ていた。
俺の便所の件は何故か報告をされなかった。
それから3日後。
副団長に俺とアレジオが呼び出される。
副団長室に入ると机に向かっていた副団長が顔を上げて話しかけてくる。
「ここから西に一昼夜のところにあるアリアダス村で邪教徒による蛮行が行われているらしい。お前たち二人にはその調査に向かって欲しい」
邪教徒か。邪神ガシャデールを崇拝してる連中だったっけ……この邪教徒の掃討も騎士団の仕事。確か人間を邪神の生贄するために人をさらったりしているとんでもない連中。
腕が鳴るぜ! 暗黒教団をぶっ潰した俺が今度は邪教集団をぶっ飛ばす! と意気込んでいると……俺の横に居るアレジオは肩をすくめながら答えた。
「邪教徒の調査? そんな下らない任務をこのアレジオにさせるというおつもりなのですか? 副団長は」
……一体この人は何様なんだ……
そう言ったアレジオに副団長はニコッと笑いかける。
「最近アレジオくんの元気がないなと思ってね。この名誉ある任務を二人に任せようと団長に進言したんだよ。アレジオ君が断ると言うなら別の人に任せようかな」
そういいながら立ち上がった副団長はアレジオの肩を叩きながら耳打ちをする。
聴覚強化(特)になっている所為で副団長がアレジオに何を言っているのかはっきりと聞こえてくる。
(最近、ミス続きだしここらで汚名を返上しないと君の立場危うくなるよ。君のお兄さんも君の失態は知っているしね)
副団長がそう言うとアレジオは真っ赤な顔をしている。
「し、仕方ありませんな……副団長がそこまでいうならこのアレジオ、必ず役に立てて見せましょう」
「それじゃ期待してるよ。アレジオ君にウェブ君」
ということで俺達は馬車にのってアリアダス村というところに向かっている。騎士団という身分がバレると連中は姿を隠す。そのため自分たちはその身分を偽って村に潜入するということになる。
そのためのシナリオはアレジオが貴族で俺がそのお供をしている従者という設定で村に迷い込み村を調査するというものだ。
アリアダス村に向かう馬車の中、アレジオが俺に話しかけてくる。
「わかってるよなウェブ。邪教徒を見つけ次第、俺に報告。俺が邪教徒を全員叩き斬るからな。腰抜け副団長は調査だと抜かしやがったが、俺様による掃討作戦に変更をする」
「はい。逐一報告して遠巻きに見ています」
「俺の活躍をしかとその目に焼き付けておけ。そしてそれを本部に全て報告するんだいいな」
「分かりました。アレジオさんの活躍を逐一報告します」
「違うだろ? お前は俺の従者なんだからアレジオ様だろ?」
偉そうに怒りながらアレジオは言った。
夕方頃に馬車がアリアダス村の全景がみえる場所に辿り着く。馬車から降りると眼下に村の中央に教会らしき白い建物見え俺が指を差す。
「あそこの村ですね」
「ではいくぞ」
近くに馬車を止めて、俺が荷物を背負って二人で村に向かう。
村はずれにある家の扉をノックする。
「私、フォーデ家の従者をしているものですが、馬車が故障してしまって……ここまで歩いてきたのですが泊めていただけませんか?」
俺がそういうとドアが開き、中からくたびれた男の人の顔が見える。
「それは大変でしたね。どうぞおはいり下さい」
「ありがとうございます。こちらが我が主人のアレジオ・フォーデ様です」
アレジオは貴族らしい尊大な態度で家の中に入っていく。
「庶民の家は狭っ苦しくて息が詰まる」
貴族らしい嫌味を言うアレジオ。
家の中にはこの男性の妻なのだろうか、くたびれた表情をした女性と幼い子供たちが3人いる。
その表情と着ているものから明日食べるもの困っているというような貧しさが漂っている。
それでも気にかけてくれるのか女性が声を掛けてくる。
「お夕飯はどうなさいましょう」
「まだですがお構いなく……」
と俺が答えるとアレジオがさも当然とばかりに口を開く。
「庶民が貴族の俺様をもてなすのは当たり前こと。この家で一番の酒と馳走でもてなせ」
偉そうにアレジオが言うと奥さんは嫌な顔一つもせずに「はい。分かりました」と答え台所に入って行く。
ドアをノックする音が聞こえ、3人の男達が手に食材や酒瓶を持って訪れる。
「儂はこの村の村長ですじゃ。フォーデ家の方がこの村に訪れたと聞いたので、是非おもてなしをと思い馳せ参じた次第ですじゃ」
アレジオも偽名なのに悪い気はしなかったようで、満更でもない表情をしている。
そして次々人々が手に食材を持ってやってくる。
そして料理が並び、アレジオと村長を囲んで宴が始まってしまった。
アレジオは幽霊の妖術で立ったまま寝ていたと苦しい言い訳をし、俺はそれをニヤニヤしながら見ていた。
俺の便所の件は何故か報告をされなかった。
それから3日後。
副団長に俺とアレジオが呼び出される。
副団長室に入ると机に向かっていた副団長が顔を上げて話しかけてくる。
「ここから西に一昼夜のところにあるアリアダス村で邪教徒による蛮行が行われているらしい。お前たち二人にはその調査に向かって欲しい」
邪教徒か。邪神ガシャデールを崇拝してる連中だったっけ……この邪教徒の掃討も騎士団の仕事。確か人間を邪神の生贄するために人をさらったりしているとんでもない連中。
腕が鳴るぜ! 暗黒教団をぶっ潰した俺が今度は邪教集団をぶっ飛ばす! と意気込んでいると……俺の横に居るアレジオは肩をすくめながら答えた。
「邪教徒の調査? そんな下らない任務をこのアレジオにさせるというおつもりなのですか? 副団長は」
……一体この人は何様なんだ……
そう言ったアレジオに副団長はニコッと笑いかける。
「最近アレジオくんの元気がないなと思ってね。この名誉ある任務を二人に任せようと団長に進言したんだよ。アレジオ君が断ると言うなら別の人に任せようかな」
そういいながら立ち上がった副団長はアレジオの肩を叩きながら耳打ちをする。
聴覚強化(特)になっている所為で副団長がアレジオに何を言っているのかはっきりと聞こえてくる。
(最近、ミス続きだしここらで汚名を返上しないと君の立場危うくなるよ。君のお兄さんも君の失態は知っているしね)
副団長がそう言うとアレジオは真っ赤な顔をしている。
「し、仕方ありませんな……副団長がそこまでいうならこのアレジオ、必ず役に立てて見せましょう」
「それじゃ期待してるよ。アレジオ君にウェブ君」
ということで俺達は馬車にのってアリアダス村というところに向かっている。騎士団という身分がバレると連中は姿を隠す。そのため自分たちはその身分を偽って村に潜入するということになる。
そのためのシナリオはアレジオが貴族で俺がそのお供をしている従者という設定で村に迷い込み村を調査するというものだ。
アリアダス村に向かう馬車の中、アレジオが俺に話しかけてくる。
「わかってるよなウェブ。邪教徒を見つけ次第、俺に報告。俺が邪教徒を全員叩き斬るからな。腰抜け副団長は調査だと抜かしやがったが、俺様による掃討作戦に変更をする」
「はい。逐一報告して遠巻きに見ています」
「俺の活躍をしかとその目に焼き付けておけ。そしてそれを本部に全て報告するんだいいな」
「分かりました。アレジオさんの活躍を逐一報告します」
「違うだろ? お前は俺の従者なんだからアレジオ様だろ?」
偉そうに怒りながらアレジオは言った。
夕方頃に馬車がアリアダス村の全景がみえる場所に辿り着く。馬車から降りると眼下に村の中央に教会らしき白い建物見え俺が指を差す。
「あそこの村ですね」
「ではいくぞ」
近くに馬車を止めて、俺が荷物を背負って二人で村に向かう。
村はずれにある家の扉をノックする。
「私、フォーデ家の従者をしているものですが、馬車が故障してしまって……ここまで歩いてきたのですが泊めていただけませんか?」
俺がそういうとドアが開き、中からくたびれた男の人の顔が見える。
「それは大変でしたね。どうぞおはいり下さい」
「ありがとうございます。こちらが我が主人のアレジオ・フォーデ様です」
アレジオは貴族らしい尊大な態度で家の中に入っていく。
「庶民の家は狭っ苦しくて息が詰まる」
貴族らしい嫌味を言うアレジオ。
家の中にはこの男性の妻なのだろうか、くたびれた表情をした女性と幼い子供たちが3人いる。
その表情と着ているものから明日食べるもの困っているというような貧しさが漂っている。
それでも気にかけてくれるのか女性が声を掛けてくる。
「お夕飯はどうなさいましょう」
「まだですがお構いなく……」
と俺が答えるとアレジオがさも当然とばかりに口を開く。
「庶民が貴族の俺様をもてなすのは当たり前こと。この家で一番の酒と馳走でもてなせ」
偉そうにアレジオが言うと奥さんは嫌な顔一つもせずに「はい。分かりました」と答え台所に入って行く。
ドアをノックする音が聞こえ、3人の男達が手に食材や酒瓶を持って訪れる。
「儂はこの村の村長ですじゃ。フォーデ家の方がこの村に訪れたと聞いたので、是非おもてなしをと思い馳せ参じた次第ですじゃ」
アレジオも偽名なのに悪い気はしなかったようで、満更でもない表情をしている。
そして次々人々が手に食材を持ってやってくる。
そして料理が並び、アレジオと村長を囲んで宴が始まってしまった。
21
お気に入りに追加
2,484
あなたにおすすめの小説
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
種から始める生産チート~なんでも実る世界樹を手に入れたけど、ホントに何でも実ったんですが!?(旧題:世界樹の王)
十一屋 翠
ファンタジー
とある冒険で大怪我を負った冒険者セイルは、パーティ引退を強制されてしまう。
そんな彼に残されたのは、ダンジョンで見つけたたった一つの木の実だけ。
だがこれこそが、ありとあらゆるものを生み出す世界樹の種だったのだ。
世界樹から現れた幼き聖霊はセイルを自らの主と認めると、この世のあらゆるものを実らせ、彼に様々な恩恵を与えるのだった。
お腹が空けばお肉を実らせ、生活の為にと家具を生み、更に敵が襲ってきたら大量の仲間まで!?
これは世界樹に愛された男が、文字通り全てを手に入れる幸せな物語。
この作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!
酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。
スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ
個人差はあるが5〜8歳で開花する。
そのスキルによって今後の人生が決まる。
しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。
世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。
カイアスもスキルは開花しなかった。
しかし、それは気付いていないだけだった。
遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!!
それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!
秋田ノ介
ファンタジー
主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。
『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。
ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!!
小説家になろうにも掲載しています。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる