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ゲームとは違う
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12月、雪が降っていないというのに練習試合は組めず、ただひたすらに基礎練習を繰り返す日々が続いていた。だがこの基礎練習が全てなのだ。野球でやれることは多くない。
しかし、言い換えればプロもアマチュアも同じ動作をするということ。その差を産み出すのが1つ1つの動作の正確性や迅速性であり、それらを支えるのが鍛え抜かれた身体能力と精神力なのだ。
だからこそ野球に興味ない人間からはトチ狂ってるんじゃないかと思うような時間から一部の高校球児達は練習を重ね、その全てを試合で発揮せんとするのだ。
しかし今日という日だけは練習を休もうと文句は言われないだろう。今日は12月の24日、クリスマスイブなのだから。
「雪月ィー!」【ファイっ!】「オー」
【ファイっ】「オー」【ファイっ】「オー」
クリスマスイブだと言うのにどうしてだろうか。彼らは皆、朝早くから走っていた。誰も文句は言わないだろうに。皆ネックウォーマーを付け手袋装着の上で走っている。何が彼らを駆り立てるのか。
体が温まったところで練習が始まる。これがいつものパターンだ。といっても個別練習でシートノックなどを彼らはやらないわけだが。だがどういうわけか、今日は1人も何かするわけでなく部室の中へと引っ込んでいった。
「今日は本来休みだしな。部室でゲームやろうぜ!色々持ってきたぜ?」
将也が持参したゲーム機を部室備え付けのモニターに繋ぎ、カバンの中に入っていたソフトをいくつか見せた。
「えぇ、電気代とか大丈夫なんすか」
「大丈夫だって! あ、この中に彼女いるやついるか? いや、流石にいないよなぁ?!」
ここで普通ならば彼女持ちが炙り出されるのだろうが、本当に雪月高校野球部に彼女持ちはいなかったのだ。皆、周りを見渡すが全員に彼女がいないと言うアリバイがあった。ほぼ毎日一緒に遊ぶか勉強するか野球をしている人間しかその場にはいなかったのだ。
「まじで、誰もいないのかよ~」
将也が落胆の声を上げる。そう大して興味もない癖に、と新野は苦笑いし、それもそうだけどな、と将也が答えつつ鈍器になりそうな分厚い本を取り出した。
「げ」
「げ、とは何だよ」
その分厚い本はTRPGのルールブックであった。
「いや、みんな体調悪くなったし」
「それはTRPGのせいじゃないからな? TRPGはいいぞ、みんな やろう!」
何時ぞやのリベンジを、と意気込んでいた将也であったが周りの皆の反応は薄い。
「今日はパスで」
「俺もパスかな」
「えぇ……じゃあ、今度の大会の時にしようぜ」
「それも縁起が悪いからダメだな」
「それよりゲームしません?」
モニターは幸いなことに3つある為、将也の他にもゲーム機を持ってきた輩達が思い思いのゲームを起動した。
「将也、花札やろうぜ」
「え、ルール知らないんだけど」
「あー、そっか。ダメ元で聞いてみたけど将也には分からないよな」
「あぁ?なんだと……今ルール覚えた! ボコボコにしてやる!」
秋山は花札を持参してきていた。秋山が将也を煽ると将也はそれにわざと乗った。運ゲーならワンチャンスあると考えたしい。タブレット端末をチラ見してルールを覚えたらしい将也は実に自信満々である。
「遊び方はこいこいでいいよな?」
「え、こいこい以外に遊び方あるの……?」
既に将也の勝利に暗雲が立ち込めている。
「じゃあ、こいこいでいいな」
「よし、いざ勝負! 手加減無用!」
「マジで言ってる?」
「俺IQ300あるから余裕よ」
現在の叡智、インターネットを所有した将也は自称IQ300。その恵まれたIQから生み出される神の一手は確実に将也の首を締め付けていた。
「お前、なんで手加減しないの? 俺、初心者!」
「IQ300のプレイは負け方がお上手ですねぇ?」
「はぁあ?!クッソ次は負けねぇ! チェスやるぞ!」
「ごめん、俺これからゲームしなきゃいけないんだ」
「ク ソ が よぉ」
この有様である。秋山は勝ち逃げで大乱闘オールスターズをプレイしている一団の中に入っていった。純と新野は知らぬうちに外に出ていったきり帰ってきていない。絡む相手を探す将也は部室を見渡し獲物を見つけた。
熱狂ガチプロ野球、通称ガチプロ。そのやきうゲームを起動していたスミダ達3人に将也は絡みにいった。
「ガチプロじゃん。本年度版?」
「モチのロンよ」
そして話題はゲームに能力を数値化された実在選手達へ。どうやらゲームの査定に納得いっていないようだ。
「てか須藤の能力もっと高いし三振っておかしくね?」
「美鳥だってエラーついてるしおかしいよなぁ」
「チャンスGってなんだよ。Eくらいはあるだろ。そもそも8番打者だからチャンスの総数が少ないんだって」
各々何やら文句はあるようだが文句を言って楽しんでいるようだ。そして実在選手のデータを気になるところだけ見るとオリジナル選手育成モードを選択し遊び始めた。
「うわ、何この能力……」
「4G!ゴミゴミだねぇ!」
「はぁ……使えねぇなぁ」
どうやら育成する選手の能力数値がかなり低かったらしく、ついつい口から文句が出てゆく。ここで操作を一旦止め、少しの間相談タイムに入った。
「どうする? 一回リセットする?」
「いや! このまま行く!」
「強情だねぇ、名前を『天 才児』にでもしとくか」
「それいいねぇ」
そしてオリジナル選手の育成をあーだこーだ文句を言い合いながら進めていくスミダ達と将也、一年の有識者もそれに加わり架空の球児『天 才児』をどのように育てるのか議論が進んでいった。もちろんゲームの方も進行していった。
「どうする、守備の人にする?」
「パワー極みマンにしよーぜ?」
「守備位置外野だし、とりあえず走らせないか」
「いや、やっぱりさ……え?ちょっと待って」
「うわ!天才イベント来たじゃん!」
【『天 才児』は天才だと発覚した】という文字がゲーム内に現れ興奮するスミダ達。この天才イベントというのはかなりの低確率で育てている選手の能力が凄く上がるというもの。レアイベントである。
「うわ……見栄え良くなったねぇ」
「オールD以上は強いなぁ」
「これが天才か、うーんこれで天才なのか」
何故かスミダ達は秋山の方を一瞬チラッと見た。
「いや、これは偽物の天才だろ」
「ちゃんとオールC以上にセンス○ついてないと天才じゃないわ」
「秋山目標はちょっとキツくね?」
「伝説のプロよりマシよ」
ここで将也が口を挟んだ。
「つーか天才だとわかった瞬間に能力上がるのはおかしいよなー」
「それな、天才は最初からおかしい能力してるからな」
将也は周りにいる部員を見ながらそう言った。スミダ達は秋山の方を見ているが将也はスミダ達のことも視界の中に入れていた。
「これならだいぶ秋山に近づけれるんじゃね?」
「もしかしたら俺たちは秋山のことを過大評価してる可能性あるぞ」
「打てる、走れる、守れる、三拍子揃った化け物だと思うが?」
「完全に同意」
秋山のことについて考える流れに将也はガヤを入れることもなくそのまま集団からフェードアウトしていった。
このクリスマス企画を立案し計画し先生方への根回しをし、実行に移した主催者は将也だというのに、何故ハブられているのか……誰がハブってくれと頼んだ、誰がハブってくれと願った、将也はハブられたことに少し不満を持った。
しかし、逆襲の為の手札が将也の元にはなかった。この前の試合、ベンチで行った性癖暴露が最後のネタだったのだ。居場所を見失い仕方ないといった様子で将也は部室からゆっくりと出ていった。
将也が背を伸ばすとポキポキというような音がした。どうやらだいぶ身体が固まっていたらしい。時計を見てみれば既に昼少し前、なんだかんだで4時間は遊んでいることになる。
12月の乾いた風が吹き付ける。幸いグラウンドの土が舞い上がるようなことはない。密室だったこともありそこそこ部室の中は暑く、外の涼しい風は火照った体にとってありがたいものだった。
新野と純はそこで練習していた。いや、練習というより遊んでいた。
「ハズレ!」
「よく全部入るな」
「おーい何やってんだ?」
小さく少し背の高い段ボール箱が何個も地面に置いてあり純達はそこへボールを山なりに投げて放り込んでいた。純は将也の顔を見てめんどくさいものを見た、とでも言うようにしっしっ、と手を振り払った。
「コントロール練習だから帰れ帰れ」
「いや、それ輪投げじゃん」
純がコントロール練習だと言い張っているがどう見ても縁日のそれに近いように見受けられる。実際さっきまで2人で騒ぎながら球入れに興じていたのだからなんとも説得力のないことである。
純も新野もユニフォームではなく片方はキャラクターがプリントされたTシャツを着ており片方は無地の黒Tシャツを着ているので練習風景のようにはとても見えなかった。
「お祭りとかでよくあるやつだろ、ちょっと俺にもやらせろよ」
「お前がコントロール良くなってなんの役に立つんだよ」
「盗塁を刺すに決まってるだろ。ほらボール貸せって」
新野も嫌がって苦言を放っているが将也はお構いなしにボールを10個手に取るとリズム良く山なりに投げていく。ボールは10個のうち7個段ボールの中に入った。
「あれ? もしかして? もしかして?」
「うるせぇな、 たまたま調子が悪かっただけだ」
「負け惜しみかなぁ?」
「はぁ? んなわけ無いだろ、次は勝つ」
なお、先程の新野の記録は6個。純の記録は10個である。純は高みの見物とばかりにおやつとして持ってきたササミを食べながら座り心地がいいところを見つけて腰掛けた。
「やーい、ノーコンピッチャー!」
「……もういっかい!」
「大分入るようになって来たし、次は距離伸ばそうぜ」
「おう、負けないからな」
この後、トイレに行く際にこの様子を見た光希が乱入。龍宮院や2軍のピッチャー兼外野達も何人かついて来た。雪月高校野球部、第一回玉入れ選手権がここに開催された。実況は雪月高校の正捕手岡部将也、解説は雪月のユーティリティ岡部将也。1人2役で喋り倒している。
「え~新野選手、8個見事にボールを投げ入れました。解説の岡部さん、これはどうでしょうか。 そうですね、大分距離感も掴めて来たみたいでコントロールが良くなってますね。 松野さんありがとうございます。果たして新野選手の記録8個を抜かすことはできるのか、続いて松野選手の挑戦です。その初球……おっと?制球が定まりません、なんということだぁ!なんと・・・」
だんだん人が集まってくると純は部室の中へ入っていった。好き好んで外で座っていたいわけではないのだ。単純に密集していた部室の中が息苦しかったので純は外で時間を潰していたのである。
軽々と開くドアの先、部室の中には未だに大乱闘オールスターズとガチプロを続けている少数の面々だけが残っていた。
モニターは3つあるはずだがその1つは野球観戦、メジャーリーグの映像を流していた。ガチプロをしながらスミダ達は彼らのプレーに圧倒されていた。
「やべー! ウィック!ヤベ!」
「あれ、よく打てるよな」
「俺もあんな風に打って守れるようになりてぇ」
メジャーリーグの有名なショートのプレーを見て沸くスミダ達。今年33歳で9度目のゴールドグラブ賞を受賞している。目立つグラブトスや正確な送球、試合を変えるようなファインプレーも多い。本塁打もそこそこ打ち、打率も今季は3割に乗らなかったものの強打者といって差し支えない選手だ。
ただ、純には守備能力だけを見れば今のスミダ達と今年のかなり衰えたウィックのプレーには遜色がない、むしろ少しスミダ達の方が勝っているように見えた。
「このプレーすげー!よく取れるよな!俺も取れるかな」
「飛びついて取るのスゲー!」
「このトス見ろよ!カッケー!」
お前らなら飛び付かずとも追いついてるだろ、とか、もっと気持ち悪いような守備連携やってるだろ、と純は言いたくなったがやめておいた。なにせ純は守備をやったことがないので正確な評価が出来ないのだ。
高校のエースピッチャーは打ても守れもするような人間が多々いるが純はピッチャーだけでやって来ているのでその辺りのことは全く分からないのだ。
「メジャーはレベルが上すぎて参考にならないよな」
純としてはそれが本音であった。メジャーのやってることはたまに高度すぎてよくわからないことがあったのだ。160キロ超えの速球を何十球も投げられるのは純からすれば理解不能な世界であった。メジャーであんな風に投げれたら面白そうだけど肩とか肘が壊れそう、というのが純の意見である。
「あー、それは確かに。160キロのシンカーとか打てるわけないよな」
「実際向こうのプロもなかなか打てない訳だしな」
画面に写っているクローザーは95マイルのスライダー、102マイルのストレートの後に100マイルのシンカーを投げ込み三振を取っていた。
「純ならワンチャン投げれる?」
「そんなことしたら肘から先がもげる」
「だよなぁ……今さガチプロでメジャーのプロ再現しようぜって話してたんだけどちょっと難しいんだよな」
三振を奪われた選手はこのリーグの首位打者だったがその後の打率2割4分、32本というスラッガーが見事に160キロシンカーを捕らえライトスタンドに叩き込み試合を終わらせた。
「選手を数値化しようってのがそもそも難しい話だろう」
「ゲームより現実の方が意味わからないわ。この人変化球とか打てる人じゃないでしょ」
「だから面白いんだろうな」
そう言いながら純は初めてゲームのコントローラーを握った。実の所ゲームをするのは初めてである。アニメを見るようになったりと色々とやり始めた頃から皆がやっているので少し気になっていたのだ。
「つまらん」
「想像を超える下手さなんだけど」
「打撃操作が下手なのは分かるけど投球操作まで下手くそなのなんで?」
「現実とゲームは違うんだよ!この選手なら俺が投げたら抑えれるから」
純はダメダメだった。ガチプロをやってみたはいいものの全く打てず、守れず、投げても打たれ、拗ねてしまった。
「こっちのゲーム、どうです?」
「ガチプロはダメだ」
その後大乱闘オールスターズもやってみたものの、全く勝てず純は荷物を纏めて外に出て行った。というか帰って行った。
「はぁ、俺帰るわ」
純が部室から出ていき扉が閉まった。
「あれは短気ついてるな」
「打たれ強さFじゃん」
「ゲーム×付いてる」
その後、外で玉入れをしていた将也達が色々と口うるさいと有名な先生(生徒指導を担当)に見つかり、将也が大声で騒ぎ始めた。
「野球部は確か練習休みじゃなかったか?何やってる?」
「コントロール練習です!」
「これがコントロール練習なのか?」
「はい、コントロール練習です!」
部室の中にいる彼らも危険を察知。大急ぎで見られてまずいものを片付け、慌ててトランプをしている事にした。しかしなかなか先生が来ないので帰りに買うアイスを賭けてポーカーを始めた。
「今ここにいるのはどこのポジションなんだ? 私が覚えてる限りではピッチャーじゃない生徒もいるようだが」
「先生!どのポジションでもコントロールは大事です!」
「確かにそれはそうだな……そもそもこの玉入れでコントロールが良くなるのか? 打撃練習は大丈夫か? 春勝てそうか?」
「山なりに玉を投げて指定の位置に入れるというのは距離感覚を養うためにいい練習になります。この距離感覚はかなりコントロールに関係します。今日はそれを鍛える狙いです! あと、打撃は先生もご存知の通り強打者揃いですから守備、今日は特に送球の強化が目標ですね」
自信をもって発言している将也だが、全て口から出まかせである。
「成程な。ところでなんで君は騒いでいたんだ? 何を言っていたのかは分からないが職員室まで聞こえて来てね」
「声出しですね!」
「その、声出しは必要なのか?」
「自分はキャッチャーなので指示を出す必要があります!故に発声練習は必要です!」
「そ、そうなのか。今回は昼だったからいいけど朝早くに大声は出さないように気をつけなさい。ところで人数がやや足りないように感じるのだが、彼らはどこにいるんだ?」
ポーカーをしていた輩の手が止まる。将也に売られた場合は将也を恨むだろう。
「あぁ、今ここにいない奴らは部室の中にいますよ」
「そうか」
「機材のメンテナンスとかメジャーとかの試合映像から研究をしてるんです」
「熱心で結構、そうそう本題なんだけど今日は頑張ってる君たちに差し入れでね。こんなものを持って来たんだ。春の甲子園期待してるよ」
生徒指導の先生はそう言ってチョコレート菓子を将也に渡して来た。思っていたのとなんか違う感じで他の部員は固まっていたが将也は固まってはいなかった。
「ありがとうございます! 春の甲子園、優勝目指して頑張ります!」
「じゃあ頑張ってね。教師一同応援してるよ」
「ありがとうございます!」
頭を下げてから周りにアイコンタクトをする将也に続いて皆が教師に頭を下げた。
それから『遊んでいる場合じゃないのでは』と誰かが練習し始めた事で全体的に練習が始まった。
「今日はなんか調子というかコントロールの調子が良い気がするわ」
「あ、それ分かる。でも俺はなんか思った場所に投げれないんだよなぁ」
光希も何かが違うのをなんとなく実感しているらしい。
「光希はリリースポイント安定してないからしょうがないと思うけど」
「なんか身長一気に伸びてから感覚がおかしいんだよなぁ。球入れのおかげでふんわり狙いをつけてる感じなのがバシッと一点を狙う感覚に変わったのは良いんだけど……やっぱフォームチェックとかかな?」
光希は自分の感覚と現実の動きのズレがどうも気になるらしく軽く投げ込みをして思ったところに投げれない事に首を傾げている。
「球入れ?……あれが練習って冗談とか言い訳の類じゃなかったのか?」
「え?あれ将也の冗談だったの?」
「いや、純のだけど」
「え?」
「え、マジであれコントロール練習だったの?」
こうして雪月高校のクリスマスイブが終わった。
しかし、言い換えればプロもアマチュアも同じ動作をするということ。その差を産み出すのが1つ1つの動作の正確性や迅速性であり、それらを支えるのが鍛え抜かれた身体能力と精神力なのだ。
だからこそ野球に興味ない人間からはトチ狂ってるんじゃないかと思うような時間から一部の高校球児達は練習を重ね、その全てを試合で発揮せんとするのだ。
しかし今日という日だけは練習を休もうと文句は言われないだろう。今日は12月の24日、クリスマスイブなのだから。
「雪月ィー!」【ファイっ!】「オー」
【ファイっ】「オー」【ファイっ】「オー」
クリスマスイブだと言うのにどうしてだろうか。彼らは皆、朝早くから走っていた。誰も文句は言わないだろうに。皆ネックウォーマーを付け手袋装着の上で走っている。何が彼らを駆り立てるのか。
体が温まったところで練習が始まる。これがいつものパターンだ。といっても個別練習でシートノックなどを彼らはやらないわけだが。だがどういうわけか、今日は1人も何かするわけでなく部室の中へと引っ込んでいった。
「今日は本来休みだしな。部室でゲームやろうぜ!色々持ってきたぜ?」
将也が持参したゲーム機を部室備え付けのモニターに繋ぎ、カバンの中に入っていたソフトをいくつか見せた。
「えぇ、電気代とか大丈夫なんすか」
「大丈夫だって! あ、この中に彼女いるやついるか? いや、流石にいないよなぁ?!」
ここで普通ならば彼女持ちが炙り出されるのだろうが、本当に雪月高校野球部に彼女持ちはいなかったのだ。皆、周りを見渡すが全員に彼女がいないと言うアリバイがあった。ほぼ毎日一緒に遊ぶか勉強するか野球をしている人間しかその場にはいなかったのだ。
「まじで、誰もいないのかよ~」
将也が落胆の声を上げる。そう大して興味もない癖に、と新野は苦笑いし、それもそうだけどな、と将也が答えつつ鈍器になりそうな分厚い本を取り出した。
「げ」
「げ、とは何だよ」
その分厚い本はTRPGのルールブックであった。
「いや、みんな体調悪くなったし」
「それはTRPGのせいじゃないからな? TRPGはいいぞ、みんな やろう!」
何時ぞやのリベンジを、と意気込んでいた将也であったが周りの皆の反応は薄い。
「今日はパスで」
「俺もパスかな」
「えぇ……じゃあ、今度の大会の時にしようぜ」
「それも縁起が悪いからダメだな」
「それよりゲームしません?」
モニターは幸いなことに3つある為、将也の他にもゲーム機を持ってきた輩達が思い思いのゲームを起動した。
「将也、花札やろうぜ」
「え、ルール知らないんだけど」
「あー、そっか。ダメ元で聞いてみたけど将也には分からないよな」
「あぁ?なんだと……今ルール覚えた! ボコボコにしてやる!」
秋山は花札を持参してきていた。秋山が将也を煽ると将也はそれにわざと乗った。運ゲーならワンチャンスあると考えたしい。タブレット端末をチラ見してルールを覚えたらしい将也は実に自信満々である。
「遊び方はこいこいでいいよな?」
「え、こいこい以外に遊び方あるの……?」
既に将也の勝利に暗雲が立ち込めている。
「じゃあ、こいこいでいいな」
「よし、いざ勝負! 手加減無用!」
「マジで言ってる?」
「俺IQ300あるから余裕よ」
現在の叡智、インターネットを所有した将也は自称IQ300。その恵まれたIQから生み出される神の一手は確実に将也の首を締め付けていた。
「お前、なんで手加減しないの? 俺、初心者!」
「IQ300のプレイは負け方がお上手ですねぇ?」
「はぁあ?!クッソ次は負けねぇ! チェスやるぞ!」
「ごめん、俺これからゲームしなきゃいけないんだ」
「ク ソ が よぉ」
この有様である。秋山は勝ち逃げで大乱闘オールスターズをプレイしている一団の中に入っていった。純と新野は知らぬうちに外に出ていったきり帰ってきていない。絡む相手を探す将也は部室を見渡し獲物を見つけた。
熱狂ガチプロ野球、通称ガチプロ。そのやきうゲームを起動していたスミダ達3人に将也は絡みにいった。
「ガチプロじゃん。本年度版?」
「モチのロンよ」
そして話題はゲームに能力を数値化された実在選手達へ。どうやらゲームの査定に納得いっていないようだ。
「てか須藤の能力もっと高いし三振っておかしくね?」
「美鳥だってエラーついてるしおかしいよなぁ」
「チャンスGってなんだよ。Eくらいはあるだろ。そもそも8番打者だからチャンスの総数が少ないんだって」
各々何やら文句はあるようだが文句を言って楽しんでいるようだ。そして実在選手のデータを気になるところだけ見るとオリジナル選手育成モードを選択し遊び始めた。
「うわ、何この能力……」
「4G!ゴミゴミだねぇ!」
「はぁ……使えねぇなぁ」
どうやら育成する選手の能力数値がかなり低かったらしく、ついつい口から文句が出てゆく。ここで操作を一旦止め、少しの間相談タイムに入った。
「どうする? 一回リセットする?」
「いや! このまま行く!」
「強情だねぇ、名前を『天 才児』にでもしとくか」
「それいいねぇ」
そしてオリジナル選手の育成をあーだこーだ文句を言い合いながら進めていくスミダ達と将也、一年の有識者もそれに加わり架空の球児『天 才児』をどのように育てるのか議論が進んでいった。もちろんゲームの方も進行していった。
「どうする、守備の人にする?」
「パワー極みマンにしよーぜ?」
「守備位置外野だし、とりあえず走らせないか」
「いや、やっぱりさ……え?ちょっと待って」
「うわ!天才イベント来たじゃん!」
【『天 才児』は天才だと発覚した】という文字がゲーム内に現れ興奮するスミダ達。この天才イベントというのはかなりの低確率で育てている選手の能力が凄く上がるというもの。レアイベントである。
「うわ……見栄え良くなったねぇ」
「オールD以上は強いなぁ」
「これが天才か、うーんこれで天才なのか」
何故かスミダ達は秋山の方を一瞬チラッと見た。
「いや、これは偽物の天才だろ」
「ちゃんとオールC以上にセンス○ついてないと天才じゃないわ」
「秋山目標はちょっとキツくね?」
「伝説のプロよりマシよ」
ここで将也が口を挟んだ。
「つーか天才だとわかった瞬間に能力上がるのはおかしいよなー」
「それな、天才は最初からおかしい能力してるからな」
将也は周りにいる部員を見ながらそう言った。スミダ達は秋山の方を見ているが将也はスミダ達のことも視界の中に入れていた。
「これならだいぶ秋山に近づけれるんじゃね?」
「もしかしたら俺たちは秋山のことを過大評価してる可能性あるぞ」
「打てる、走れる、守れる、三拍子揃った化け物だと思うが?」
「完全に同意」
秋山のことについて考える流れに将也はガヤを入れることもなくそのまま集団からフェードアウトしていった。
このクリスマス企画を立案し計画し先生方への根回しをし、実行に移した主催者は将也だというのに、何故ハブられているのか……誰がハブってくれと頼んだ、誰がハブってくれと願った、将也はハブられたことに少し不満を持った。
しかし、逆襲の為の手札が将也の元にはなかった。この前の試合、ベンチで行った性癖暴露が最後のネタだったのだ。居場所を見失い仕方ないといった様子で将也は部室からゆっくりと出ていった。
将也が背を伸ばすとポキポキというような音がした。どうやらだいぶ身体が固まっていたらしい。時計を見てみれば既に昼少し前、なんだかんだで4時間は遊んでいることになる。
12月の乾いた風が吹き付ける。幸いグラウンドの土が舞い上がるようなことはない。密室だったこともありそこそこ部室の中は暑く、外の涼しい風は火照った体にとってありがたいものだった。
新野と純はそこで練習していた。いや、練習というより遊んでいた。
「ハズレ!」
「よく全部入るな」
「おーい何やってんだ?」
小さく少し背の高い段ボール箱が何個も地面に置いてあり純達はそこへボールを山なりに投げて放り込んでいた。純は将也の顔を見てめんどくさいものを見た、とでも言うようにしっしっ、と手を振り払った。
「コントロール練習だから帰れ帰れ」
「いや、それ輪投げじゃん」
純がコントロール練習だと言い張っているがどう見ても縁日のそれに近いように見受けられる。実際さっきまで2人で騒ぎながら球入れに興じていたのだからなんとも説得力のないことである。
純も新野もユニフォームではなく片方はキャラクターがプリントされたTシャツを着ており片方は無地の黒Tシャツを着ているので練習風景のようにはとても見えなかった。
「お祭りとかでよくあるやつだろ、ちょっと俺にもやらせろよ」
「お前がコントロール良くなってなんの役に立つんだよ」
「盗塁を刺すに決まってるだろ。ほらボール貸せって」
新野も嫌がって苦言を放っているが将也はお構いなしにボールを10個手に取るとリズム良く山なりに投げていく。ボールは10個のうち7個段ボールの中に入った。
「あれ? もしかして? もしかして?」
「うるせぇな、 たまたま調子が悪かっただけだ」
「負け惜しみかなぁ?」
「はぁ? んなわけ無いだろ、次は勝つ」
なお、先程の新野の記録は6個。純の記録は10個である。純は高みの見物とばかりにおやつとして持ってきたササミを食べながら座り心地がいいところを見つけて腰掛けた。
「やーい、ノーコンピッチャー!」
「……もういっかい!」
「大分入るようになって来たし、次は距離伸ばそうぜ」
「おう、負けないからな」
この後、トイレに行く際にこの様子を見た光希が乱入。龍宮院や2軍のピッチャー兼外野達も何人かついて来た。雪月高校野球部、第一回玉入れ選手権がここに開催された。実況は雪月高校の正捕手岡部将也、解説は雪月のユーティリティ岡部将也。1人2役で喋り倒している。
「え~新野選手、8個見事にボールを投げ入れました。解説の岡部さん、これはどうでしょうか。 そうですね、大分距離感も掴めて来たみたいでコントロールが良くなってますね。 松野さんありがとうございます。果たして新野選手の記録8個を抜かすことはできるのか、続いて松野選手の挑戦です。その初球……おっと?制球が定まりません、なんということだぁ!なんと・・・」
だんだん人が集まってくると純は部室の中へ入っていった。好き好んで外で座っていたいわけではないのだ。単純に密集していた部室の中が息苦しかったので純は外で時間を潰していたのである。
軽々と開くドアの先、部室の中には未だに大乱闘オールスターズとガチプロを続けている少数の面々だけが残っていた。
モニターは3つあるはずだがその1つは野球観戦、メジャーリーグの映像を流していた。ガチプロをしながらスミダ達は彼らのプレーに圧倒されていた。
「やべー! ウィック!ヤベ!」
「あれ、よく打てるよな」
「俺もあんな風に打って守れるようになりてぇ」
メジャーリーグの有名なショートのプレーを見て沸くスミダ達。今年33歳で9度目のゴールドグラブ賞を受賞している。目立つグラブトスや正確な送球、試合を変えるようなファインプレーも多い。本塁打もそこそこ打ち、打率も今季は3割に乗らなかったものの強打者といって差し支えない選手だ。
ただ、純には守備能力だけを見れば今のスミダ達と今年のかなり衰えたウィックのプレーには遜色がない、むしろ少しスミダ達の方が勝っているように見えた。
「このプレーすげー!よく取れるよな!俺も取れるかな」
「飛びついて取るのスゲー!」
「このトス見ろよ!カッケー!」
お前らなら飛び付かずとも追いついてるだろ、とか、もっと気持ち悪いような守備連携やってるだろ、と純は言いたくなったがやめておいた。なにせ純は守備をやったことがないので正確な評価が出来ないのだ。
高校のエースピッチャーは打ても守れもするような人間が多々いるが純はピッチャーだけでやって来ているのでその辺りのことは全く分からないのだ。
「メジャーはレベルが上すぎて参考にならないよな」
純としてはそれが本音であった。メジャーのやってることはたまに高度すぎてよくわからないことがあったのだ。160キロ超えの速球を何十球も投げられるのは純からすれば理解不能な世界であった。メジャーであんな風に投げれたら面白そうだけど肩とか肘が壊れそう、というのが純の意見である。
「あー、それは確かに。160キロのシンカーとか打てるわけないよな」
「実際向こうのプロもなかなか打てない訳だしな」
画面に写っているクローザーは95マイルのスライダー、102マイルのストレートの後に100マイルのシンカーを投げ込み三振を取っていた。
「純ならワンチャン投げれる?」
「そんなことしたら肘から先がもげる」
「だよなぁ……今さガチプロでメジャーのプロ再現しようぜって話してたんだけどちょっと難しいんだよな」
三振を奪われた選手はこのリーグの首位打者だったがその後の打率2割4分、32本というスラッガーが見事に160キロシンカーを捕らえライトスタンドに叩き込み試合を終わらせた。
「選手を数値化しようってのがそもそも難しい話だろう」
「ゲームより現実の方が意味わからないわ。この人変化球とか打てる人じゃないでしょ」
「だから面白いんだろうな」
そう言いながら純は初めてゲームのコントローラーを握った。実の所ゲームをするのは初めてである。アニメを見るようになったりと色々とやり始めた頃から皆がやっているので少し気になっていたのだ。
「つまらん」
「想像を超える下手さなんだけど」
「打撃操作が下手なのは分かるけど投球操作まで下手くそなのなんで?」
「現実とゲームは違うんだよ!この選手なら俺が投げたら抑えれるから」
純はダメダメだった。ガチプロをやってみたはいいものの全く打てず、守れず、投げても打たれ、拗ねてしまった。
「こっちのゲーム、どうです?」
「ガチプロはダメだ」
その後大乱闘オールスターズもやってみたものの、全く勝てず純は荷物を纏めて外に出て行った。というか帰って行った。
「はぁ、俺帰るわ」
純が部室から出ていき扉が閉まった。
「あれは短気ついてるな」
「打たれ強さFじゃん」
「ゲーム×付いてる」
その後、外で玉入れをしていた将也達が色々と口うるさいと有名な先生(生徒指導を担当)に見つかり、将也が大声で騒ぎ始めた。
「野球部は確か練習休みじゃなかったか?何やってる?」
「コントロール練習です!」
「これがコントロール練習なのか?」
「はい、コントロール練習です!」
部室の中にいる彼らも危険を察知。大急ぎで見られてまずいものを片付け、慌ててトランプをしている事にした。しかしなかなか先生が来ないので帰りに買うアイスを賭けてポーカーを始めた。
「今ここにいるのはどこのポジションなんだ? 私が覚えてる限りではピッチャーじゃない生徒もいるようだが」
「先生!どのポジションでもコントロールは大事です!」
「確かにそれはそうだな……そもそもこの玉入れでコントロールが良くなるのか? 打撃練習は大丈夫か? 春勝てそうか?」
「山なりに玉を投げて指定の位置に入れるというのは距離感覚を養うためにいい練習になります。この距離感覚はかなりコントロールに関係します。今日はそれを鍛える狙いです! あと、打撃は先生もご存知の通り強打者揃いですから守備、今日は特に送球の強化が目標ですね」
自信をもって発言している将也だが、全て口から出まかせである。
「成程な。ところでなんで君は騒いでいたんだ? 何を言っていたのかは分からないが職員室まで聞こえて来てね」
「声出しですね!」
「その、声出しは必要なのか?」
「自分はキャッチャーなので指示を出す必要があります!故に発声練習は必要です!」
「そ、そうなのか。今回は昼だったからいいけど朝早くに大声は出さないように気をつけなさい。ところで人数がやや足りないように感じるのだが、彼らはどこにいるんだ?」
ポーカーをしていた輩の手が止まる。将也に売られた場合は将也を恨むだろう。
「あぁ、今ここにいない奴らは部室の中にいますよ」
「そうか」
「機材のメンテナンスとかメジャーとかの試合映像から研究をしてるんです」
「熱心で結構、そうそう本題なんだけど今日は頑張ってる君たちに差し入れでね。こんなものを持って来たんだ。春の甲子園期待してるよ」
生徒指導の先生はそう言ってチョコレート菓子を将也に渡して来た。思っていたのとなんか違う感じで他の部員は固まっていたが将也は固まってはいなかった。
「ありがとうございます! 春の甲子園、優勝目指して頑張ります!」
「じゃあ頑張ってね。教師一同応援してるよ」
「ありがとうございます!」
頭を下げてから周りにアイコンタクトをする将也に続いて皆が教師に頭を下げた。
それから『遊んでいる場合じゃないのでは』と誰かが練習し始めた事で全体的に練習が始まった。
「今日はなんか調子というかコントロールの調子が良い気がするわ」
「あ、それ分かる。でも俺はなんか思った場所に投げれないんだよなぁ」
光希も何かが違うのをなんとなく実感しているらしい。
「光希はリリースポイント安定してないからしょうがないと思うけど」
「なんか身長一気に伸びてから感覚がおかしいんだよなぁ。球入れのおかげでふんわり狙いをつけてる感じなのがバシッと一点を狙う感覚に変わったのは良いんだけど……やっぱフォームチェックとかかな?」
光希は自分の感覚と現実の動きのズレがどうも気になるらしく軽く投げ込みをして思ったところに投げれない事に首を傾げている。
「球入れ?……あれが練習って冗談とか言い訳の類じゃなかったのか?」
「え?あれ将也の冗談だったの?」
「いや、純のだけど」
「え?」
「え、マジであれコントロール練習だったの?」
こうして雪月高校のクリスマスイブが終わった。
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