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中学のエース
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純は中学生になってからも自分で練習メニューを組み立てていた。淡々と自分で組み立てたメニューをこなし、その後は寄り道せずに帰っていく淡白な生活。純にとってはこれが青春なので、ほかは要らないと割り切っていた。カラオケに行ったり友達と夜通し遊び通したりすることの何が楽しいのかわからなかった。
「純、この後カラオケ行かね?」
「誘ってくれてありがとな、でも用があるから、また今度な」
「そっか、じゃあな!」
「あぁ、またな」
そう、休むという用事が純にはある。疲れは敵、明日へ持ち越すことは若い肉体といえど許されることではない。純はよく寝る子であった。
そして時は経ち、2年に進級する。純はエースになっていた。この時の純はより速い球をより疲れないように投げようと努力している。160キロ超えの豪速球は男子なら皆一度は憧れるものなのだ。
変化球はドロップカーブとシュートが使えるレベルになった。ストレート系の3種類もより磨きをかけており好調であった。しかし何故か最近よくボールが捉えられるようになっていた。と言ってもゴロやフライといった打ち損ないばかりだが対応され始めていたのだ。
(なんでだ?……一人で考えてもわからないし岡部に明日聞いてみるか)
純は宿題を終わらせてすぐに寝た。次の日、純は岡部に話を聞きに行く。
「なぁ、最近球がバレてる気がしないか?」
純は岡部に自分の持ち玉を軽く説明している。バッテリーを組んだ二人の前では他校の選手はヒットが打てない。しかし同じ校内の選手にはヒットが時折打たれるようになっていた。純は焦りを感じていた。
恐らく何度も見て慣れ始めてきたのであろう、なんて考えは純に浮かばなかった。自信過剰である。
「うーん、よくわからねぇけど……多分3種類のストレートで球の初速が微妙に違うんじゃねーかな?」
岡部は面倒くさいと思ったのかテキトーな感じで答える。今では純と岡部は友達で気軽に話し合える関係だ。そんな関係といえど純がすごい剣幕で絡んでいるものだから将也の顔はげんなりしていた。
「マジ?」
「個人的にはフォーシームジャイロが一番速くてツーシームジャイロが一番遅い気がするな」
それを聞いて純は少し考え込む。
「同じ速度にするか……速くするのは難しそうだな」
「いっそのこと遅くしてもいいんじゃねーかな?」
特に深くは考えていない岡部の発言に純は光明を見出した。
「それだ!ストレート系を同じ速度で投げれるようにしてみるわ。いや……ストレート系だけじゃなくて変化球の球速も調整できた方がいいな!」
「おい?どこに行くんだ?おい!話聞いてるか?……薄々気付いてはいたけどアイツ、マジで変わってるなぁ」
純は岡部を置いて練習を開始した。そして一年後と少し経った頃、中学時代最後の大会が終わった。
「……ごめん!」
「くそっ……」
「みんな、ごめん……」
「泣くな、岡部」
純たちのチームは県2位で幕を閉じた。あれから純はストレート系を全て同じ速度で投げれるようになった。校内の選手ですらボールを捉えることは難しくなっていて今回の大会も純の失点は0のまま。
身長は伸びに伸びて184センチメートル。高いリリースポイントから繰り出される球は更なる武器になった。
さらにいつも抑えながら球を投げるのでスタミナの消耗による制球力の低下が少なくなり、より際どいコースを狙い続けるようになっていた。
純は最高のコンディションで試合に臨み無失点のまま中継ぎに託した。その託した一投目。外角に甘く入ったストレートに力一杯のフルスイング。
バットが真芯を捉え白球はアーチを描く。
ピッチャーがボールの行き先を見送る。ボールは風の後押しを受け観客席に吸い込まれていった。全員が唖然としていた。
純達はこの一点を返すことが出来ず敗退することになった。結果を見れば純達のチームは敗退した。だが純だけみればその異様さがわかる。純は一点も取られていない。だが純は試合に負けて泣いていた。純は個人プレー大好きだがそれとは別に勝てないことが純粋に悔しかった。
『くそっ、次は絶対優勝してやる!』
純の目はすでに甲子園に向いていた。涙がスッと止まり平常運転に戻る。それから暫くして、部活に行くことがなくなっても純は岡部にキャッチャーマスクとプロテクターを被せて投球練習をしていた。
「岡部、どこにいく?」
「先に純から聞かせてくれよ。なぁどこ行くんだ?」
「雪月」
雪月高校は純の今いる家の近くで最も野球が強い高校だ。純の返答を聞いた岡部がウキウキで話し始める。
「俺もそうなんだよ!スポーツ推薦受かっちゃってさ!」
「良かったな」
「ん?純は?推薦は?」
「え?推薦?」
純は推薦入学の存在が分からなかった。自分には関係ないと思っていたので覚えていなかったのだ。
「推薦、知らない?」
「一般以外にあるのか?」
「あそこ去年の偏差値65だぞ?」
「そうだな、今年は64らしいぞ」
そして冬が過ぎ春を迎え桜が咲く頃。純は雪月高校の全校生徒の前に立っていた。
『だから学年首席にスピーチさせるのはおかしいって……』
結局周りの大人の懇願に負けて、純はスピーチをすることになった。断れないのがまた純らしいというべきか。スピーチを終え席に戻ると後ろに岡部 将也がニタニタと笑みを浮かべながら座っていた。
「さすが首席」
「……先生が見てる」
「うおっ……マジじゃん。悪りぃ」
純が注意すると将也はビシッと背筋を伸ばして黙った。無事に入学式が終わると将也がすぐに純に話しかけてくる。
「つーかまたデカくなったな?」
「2メートルまでは成長する予定」
「そんなの……ってお前の家系ならあり得る話だな」
岡部が純を見上げながら歩き始める。階段を4階まで登り1組の扉を開ける。階段が長い、と愚痴をこぼす岡部。それには純も同感だった。
純はドアの上部分の梁を少しをくぐるように教室の中に入り、教卓に一番近い最前列の一番左に座る。ちなみに岡部の席は一番左の一番後ろの列だ。
居眠りしやすい席だが大丈夫なのだろうか、と純は心配をする。その心配が必要ないことを願うが、恐らく必要であろう。
その後先生が教室に入って来たり、色々配布物があったりと忙しくなり、少し上の空で話を聞いていた純の名前が突然呼ばれる。
「伊藤 純 君。自己紹介をお願いします」
「はい、伊藤 純 。大体55歳です」
なにも考えていない時とっさに出る言葉というのは大体ありのままの言葉である。突然のボケに教室から笑いが出る。
「15歳だな?……ユーモアがあってよろしい、ですが真面目にやるように」
「はい、伊藤 純 15歳です。特技、趣味どちらも野球です。野球以外に取り柄はありませんが、よろしくお願いします」
「……」
彼は学年主席である。
「……えーはい、ありがとうございます。では次の方」
少し上の空だったためテキトーなことを口走ってしまったなー、と純は後悔したが教室の皆から向けられる視線が和らいだので別にいいかなと純は考えていた。自己紹介の時の鉄板ネタにでもしようかとも考えていた。
そして恒例の部活動見学……だが廊下からバタバタと足音が聞こえる。
「失礼しますっ。野球部です。伊藤 純はここにいますか」
暑苦しいさわやかなお兄さんが登場した。
「はい、野球部ですね。今から行きます」
「よし連行!岡部とやらも一緒に来い!」
「うおっ?!ちょっと先輩方? 先輩方ァ?!」
野球部のユニフォームを着た生徒達が教室に乗り込み純と将也を攫っていくのを教室にいた先生と生徒達は口を開けながら見ていた。そして連行される純だが周りの人達と背丈が同じくらいなので今は将也だけが大人数で囲まれているように見えていた。
そして野球部の部室に着くと純と将也はペンを持たされた。
「部活動登録書にサインを」
「はい、書きました。ところで練習はもう初めて大丈夫ですか?」
「おう!いいぞ!」
「ダメです、ダメですよぉー!まだ仮入部期間なんですから」
そこへ学年担当の教師が乗り込んでくる。それはもちろん『純たちが野球部に拐われた』と純の教室担当の先生から連絡が入ったためである。
「何故です?私は大丈夫ですよ」
「岡部さんは違うでしょう?」
「あ、サインこれでいいですか?」
岡部もノリノリでサインをしていたが『楷書で書くように』と書き直しを命じられていた。楷書で書いても字が汚いと書き直しを命じられて純に助けを求めていた。
「なぁ、どうしたらいいんだよぉ~」
「んなもん知るか、丁寧に書け」
「これでも限界まで丁寧に書いてるんだけどなぁ」
「汚い、やり直し」
「うげぇ……」
2週間後の日曜日。中学校と同じように入部届の提出期限の日がきた。まぁ、純と岡部には対して関係のない話であったが。なんだかんだで将也の入部届は受理された。今年野球部に入る一年生30人が全員一列に並ぶ。
「では、一人づつ自己紹介をしろ!」
純は鬼コーチと呼ばれている人物を見つめる。コーチの手元には選手達の情報が詰まったファイルとパソコンが置いてあった。監督は純を見つめるとニヒルな笑みを浮かべた。
そんな監督であるが実は手元の資料を見ながら困惑していた。
『伊藤 純。親は両方とも野球関連の仕事はしておらず、小学校から機械のようなピッチングをねぇ……ん?なんでこいつ公式の試合で一回も失点してないんだ?いくらなんでもおかしいだろ』
そして手元の資料から顔を上げて純を見つめる。背が高い、ガタイがいい。がどんなピッチングをするかは見てみないとわからない。
『やはり実物を見てみないことにはわからないな』
監督はそう思い話を始めた。
「早速だが実力を見てみたい。一年生でチームを2つ作って試合を一回やってみろ。勝った方は上級生のチームと戦わせる」
コーチは一年生同士でチームを組み戦わせることにした。
「あ、それと伊藤 純と岡部 将也」
「はい」
「はい!」
「お前らは別れろ。流石に3年間もバッテリーを組んでる奴はここには他にいないからな」
岡部の顔色は悪くなっていた。
「純以外の奴のボールとかあんまり受けたことないんだが」
彼はそう呟いた。
「純、この後カラオケ行かね?」
「誘ってくれてありがとな、でも用があるから、また今度な」
「そっか、じゃあな!」
「あぁ、またな」
そう、休むという用事が純にはある。疲れは敵、明日へ持ち越すことは若い肉体といえど許されることではない。純はよく寝る子であった。
そして時は経ち、2年に進級する。純はエースになっていた。この時の純はより速い球をより疲れないように投げようと努力している。160キロ超えの豪速球は男子なら皆一度は憧れるものなのだ。
変化球はドロップカーブとシュートが使えるレベルになった。ストレート系の3種類もより磨きをかけており好調であった。しかし何故か最近よくボールが捉えられるようになっていた。と言ってもゴロやフライといった打ち損ないばかりだが対応され始めていたのだ。
(なんでだ?……一人で考えてもわからないし岡部に明日聞いてみるか)
純は宿題を終わらせてすぐに寝た。次の日、純は岡部に話を聞きに行く。
「なぁ、最近球がバレてる気がしないか?」
純は岡部に自分の持ち玉を軽く説明している。バッテリーを組んだ二人の前では他校の選手はヒットが打てない。しかし同じ校内の選手にはヒットが時折打たれるようになっていた。純は焦りを感じていた。
恐らく何度も見て慣れ始めてきたのであろう、なんて考えは純に浮かばなかった。自信過剰である。
「うーん、よくわからねぇけど……多分3種類のストレートで球の初速が微妙に違うんじゃねーかな?」
岡部は面倒くさいと思ったのかテキトーな感じで答える。今では純と岡部は友達で気軽に話し合える関係だ。そんな関係といえど純がすごい剣幕で絡んでいるものだから将也の顔はげんなりしていた。
「マジ?」
「個人的にはフォーシームジャイロが一番速くてツーシームジャイロが一番遅い気がするな」
それを聞いて純は少し考え込む。
「同じ速度にするか……速くするのは難しそうだな」
「いっそのこと遅くしてもいいんじゃねーかな?」
特に深くは考えていない岡部の発言に純は光明を見出した。
「それだ!ストレート系を同じ速度で投げれるようにしてみるわ。いや……ストレート系だけじゃなくて変化球の球速も調整できた方がいいな!」
「おい?どこに行くんだ?おい!話聞いてるか?……薄々気付いてはいたけどアイツ、マジで変わってるなぁ」
純は岡部を置いて練習を開始した。そして一年後と少し経った頃、中学時代最後の大会が終わった。
「……ごめん!」
「くそっ……」
「みんな、ごめん……」
「泣くな、岡部」
純たちのチームは県2位で幕を閉じた。あれから純はストレート系を全て同じ速度で投げれるようになった。校内の選手ですらボールを捉えることは難しくなっていて今回の大会も純の失点は0のまま。
身長は伸びに伸びて184センチメートル。高いリリースポイントから繰り出される球は更なる武器になった。
さらにいつも抑えながら球を投げるのでスタミナの消耗による制球力の低下が少なくなり、より際どいコースを狙い続けるようになっていた。
純は最高のコンディションで試合に臨み無失点のまま中継ぎに託した。その託した一投目。外角に甘く入ったストレートに力一杯のフルスイング。
バットが真芯を捉え白球はアーチを描く。
ピッチャーがボールの行き先を見送る。ボールは風の後押しを受け観客席に吸い込まれていった。全員が唖然としていた。
純達はこの一点を返すことが出来ず敗退することになった。結果を見れば純達のチームは敗退した。だが純だけみればその異様さがわかる。純は一点も取られていない。だが純は試合に負けて泣いていた。純は個人プレー大好きだがそれとは別に勝てないことが純粋に悔しかった。
『くそっ、次は絶対優勝してやる!』
純の目はすでに甲子園に向いていた。涙がスッと止まり平常運転に戻る。それから暫くして、部活に行くことがなくなっても純は岡部にキャッチャーマスクとプロテクターを被せて投球練習をしていた。
「岡部、どこにいく?」
「先に純から聞かせてくれよ。なぁどこ行くんだ?」
「雪月」
雪月高校は純の今いる家の近くで最も野球が強い高校だ。純の返答を聞いた岡部がウキウキで話し始める。
「俺もそうなんだよ!スポーツ推薦受かっちゃってさ!」
「良かったな」
「ん?純は?推薦は?」
「え?推薦?」
純は推薦入学の存在が分からなかった。自分には関係ないと思っていたので覚えていなかったのだ。
「推薦、知らない?」
「一般以外にあるのか?」
「あそこ去年の偏差値65だぞ?」
「そうだな、今年は64らしいぞ」
そして冬が過ぎ春を迎え桜が咲く頃。純は雪月高校の全校生徒の前に立っていた。
『だから学年首席にスピーチさせるのはおかしいって……』
結局周りの大人の懇願に負けて、純はスピーチをすることになった。断れないのがまた純らしいというべきか。スピーチを終え席に戻ると後ろに岡部 将也がニタニタと笑みを浮かべながら座っていた。
「さすが首席」
「……先生が見てる」
「うおっ……マジじゃん。悪りぃ」
純が注意すると将也はビシッと背筋を伸ばして黙った。無事に入学式が終わると将也がすぐに純に話しかけてくる。
「つーかまたデカくなったな?」
「2メートルまでは成長する予定」
「そんなの……ってお前の家系ならあり得る話だな」
岡部が純を見上げながら歩き始める。階段を4階まで登り1組の扉を開ける。階段が長い、と愚痴をこぼす岡部。それには純も同感だった。
純はドアの上部分の梁を少しをくぐるように教室の中に入り、教卓に一番近い最前列の一番左に座る。ちなみに岡部の席は一番左の一番後ろの列だ。
居眠りしやすい席だが大丈夫なのだろうか、と純は心配をする。その心配が必要ないことを願うが、恐らく必要であろう。
その後先生が教室に入って来たり、色々配布物があったりと忙しくなり、少し上の空で話を聞いていた純の名前が突然呼ばれる。
「伊藤 純 君。自己紹介をお願いします」
「はい、伊藤 純 。大体55歳です」
なにも考えていない時とっさに出る言葉というのは大体ありのままの言葉である。突然のボケに教室から笑いが出る。
「15歳だな?……ユーモアがあってよろしい、ですが真面目にやるように」
「はい、伊藤 純 15歳です。特技、趣味どちらも野球です。野球以外に取り柄はありませんが、よろしくお願いします」
「……」
彼は学年主席である。
「……えーはい、ありがとうございます。では次の方」
少し上の空だったためテキトーなことを口走ってしまったなー、と純は後悔したが教室の皆から向けられる視線が和らいだので別にいいかなと純は考えていた。自己紹介の時の鉄板ネタにでもしようかとも考えていた。
そして恒例の部活動見学……だが廊下からバタバタと足音が聞こえる。
「失礼しますっ。野球部です。伊藤 純はここにいますか」
暑苦しいさわやかなお兄さんが登場した。
「はい、野球部ですね。今から行きます」
「よし連行!岡部とやらも一緒に来い!」
「うおっ?!ちょっと先輩方? 先輩方ァ?!」
野球部のユニフォームを着た生徒達が教室に乗り込み純と将也を攫っていくのを教室にいた先生と生徒達は口を開けながら見ていた。そして連行される純だが周りの人達と背丈が同じくらいなので今は将也だけが大人数で囲まれているように見えていた。
そして野球部の部室に着くと純と将也はペンを持たされた。
「部活動登録書にサインを」
「はい、書きました。ところで練習はもう初めて大丈夫ですか?」
「おう!いいぞ!」
「ダメです、ダメですよぉー!まだ仮入部期間なんですから」
そこへ学年担当の教師が乗り込んでくる。それはもちろん『純たちが野球部に拐われた』と純の教室担当の先生から連絡が入ったためである。
「何故です?私は大丈夫ですよ」
「岡部さんは違うでしょう?」
「あ、サインこれでいいですか?」
岡部もノリノリでサインをしていたが『楷書で書くように』と書き直しを命じられていた。楷書で書いても字が汚いと書き直しを命じられて純に助けを求めていた。
「なぁ、どうしたらいいんだよぉ~」
「んなもん知るか、丁寧に書け」
「これでも限界まで丁寧に書いてるんだけどなぁ」
「汚い、やり直し」
「うげぇ……」
2週間後の日曜日。中学校と同じように入部届の提出期限の日がきた。まぁ、純と岡部には対して関係のない話であったが。なんだかんだで将也の入部届は受理された。今年野球部に入る一年生30人が全員一列に並ぶ。
「では、一人づつ自己紹介をしろ!」
純は鬼コーチと呼ばれている人物を見つめる。コーチの手元には選手達の情報が詰まったファイルとパソコンが置いてあった。監督は純を見つめるとニヒルな笑みを浮かべた。
そんな監督であるが実は手元の資料を見ながら困惑していた。
『伊藤 純。親は両方とも野球関連の仕事はしておらず、小学校から機械のようなピッチングをねぇ……ん?なんでこいつ公式の試合で一回も失点してないんだ?いくらなんでもおかしいだろ』
そして手元の資料から顔を上げて純を見つめる。背が高い、ガタイがいい。がどんなピッチングをするかは見てみないとわからない。
『やはり実物を見てみないことにはわからないな』
監督はそう思い話を始めた。
「早速だが実力を見てみたい。一年生でチームを2つ作って試合を一回やってみろ。勝った方は上級生のチームと戦わせる」
コーチは一年生同士でチームを組み戦わせることにした。
「あ、それと伊藤 純と岡部 将也」
「はい」
「はい!」
「お前らは別れろ。流石に3年間もバッテリーを組んでる奴はここには他にいないからな」
岡部の顔色は悪くなっていた。
「純以外の奴のボールとかあんまり受けたことないんだが」
彼はそう呟いた。
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