38歳、門番です

道端之小石

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3章 美味いものを求めて、五里夢中(誇張)

罪な夜食と、おっさんです

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 腹が膨れすぎたのかアイクは寝た。若いのにそんなに食えないとは思わなかったんだ、許してくれ。俺の若い時なんてラーメンとチャーハンと餃子に唐揚げまで食えたからな。ラーメンは替え玉何回かしてた覚えがあるし。

 っと、これは前世の記憶だな。前世で企業戦士になってからは食生活を見直すことになって我慢してたが、今世では我慢なんて一切しないぜ。

 どうも、おっさんです。ラーメン1杯と餃子……何個食ったんだろ、餃子を沢山食べた程度では腹が満たされるわけがないので夜食を食べていきます。

 やっぱりね、チャーハンも唐揚げも食ってないのでその分お腹に余裕があるわけですよ。なのでチャーハン+唐揚げ以上のカロリーを作っていきたいと思います。

 用意するものはこちら。パンとチーズとじゃがいも、あとさっきのチャーシューの残りだ。そして……なんとですね、胡椒買ってきちゃいました! 

 いやぁ、売ってる店を見つけるのに苦労しました。値段も結構高いけどやっぱり胡椒って大事だよ。肉焼いて食うだけでも胡椒あるだけで全然ちがうからね。

 まぁ、そんなことはどうでも良いんですよ。夜食作っていきます。

 作るのは、グラタン的なハイカロリー料理だ、というか料理と言って良いのかわからん。

 切ったパン、茹でて半分に切ったじゃがいも、チャーシューを好きなだけ耐熱皿にぶち込み、少しばかりラーメンに使った鶏ガラスープに小麦粉を加え、若干とろみをつけた液体を注いだ後にチーズを山盛りにかけてオーブンにぶち込む。これだけです。

 焦げないで欲しいという思いを込めて耐熱皿にバターを塗っておいたのが吉と出るか凶と出るか。多分この工程要らない気がする。

 もう焼き上がるのを待つだけだが、一応言っておく。レシピなんかねぇよ。油と肉と炭水化物だけの料理を作ったら絶対に美味いという思想のもと実験してるだけだからな。

 さて、焼き上がりを待つ間に……フライドポテトを作ります。これは絶対に外れないだろ。ケチャップもどきも作るぞ。

 さっき耐熱皿の中に入らないほど切ってしまったジャガイモを熱した油の中にIN! 良い音が鳴りますねぇ。あとはいい感じになったら油からあげれば完成だ。油と芋のコラボレーション。不味いわけがない。

 さてケチャップ作りだ。鍋の中にみじん切りにしながらトマトを入れてみた。

 ケチャップ作りってこの後にどうするのかよく知らねぇんだよな。とりあえずニンニク入れるか。

 ソースみたいにしないといけないからすりおろすのが正解だろうが……すりおろし機ないので頑張って切ります。

 ついでに、ラーメンの鶏ガラスープに使った玉ねぎも潰しながら投入するぜ!多分不味くはならんやろ。ついでに鶏ガラスープも投入してみた。

 一旦、味見……これタダのトマトスープじゃね? 

 ケチャップ感を感じられないのでここで砂糖を一掴み……は多すぎるか、スプーン山盛り2杯くらい入れとくか。あとは、そういえば確か酢が必要だったような……えー、量はどれくらい入れるのが正解なんだ?

 えー、わからないので適当に鶏ガラスープと同じくらいの入れてみました。ちょっと酸っぱい匂いが漂っております。これ、このまま続けて大丈夫なんだろうか……わかんねぇわ。よし、あとは煮詰めるだけだな!

 ここでフライドポテトが揚がったようなので油から引き上げます。皮を剥くのが面倒だったから皮付きフライドポテトだ!絶対うまい。

 では早速、塩を振って……いただきます。

 うん、熱いっ! 揚げたてはやっぱクソ熱いなぁ! 味? 熱くてわかんねぇに決まってんだろ。これは一旦冷まそう。手で持った時点ではいけると思ったんだけどな。

 さて、そろそろ耐熱皿にぶち込ちこんだチーズもいい感じになってるだろ。オーブンから皿を取り出すとチーズが焦げる良い匂いがしていた。

 これだよこれ、このドロドロに焦げつつも溶けてるチーズ。そしてそのチーズに浸されたパンやらじゃがいもへ胡椒を振って食うんだよ。絶対美味いだろ? 

 チーズにフライドポテトを突っ込んでもいいしな。ケチャップもどきはどうしよう……なんか勢いで作ってみたけど、どうしよう。一旦、煮詰めるか。煮詰まったらケチャップになるかもしれないし。

 えー、俺の思うケチャップにはなりませんでした。出来たのはピザのトマトソース的なアレ……のパンチが弱いバージョンです。何これ、不味くも美味くもないんだけど。

 ……えー、今からピザを作ろうと思います。トマトソース勿体無いしな。具材はトマトソースとチーズとバジルです。そうですね、マルゲリータです。

 ピザ釜なんてないのでオーブンで焼きます。パン焼くオーブンならピザも焼けるやろ。この国の魔術省が作った魔導具を信じろ。多分いける。

 ピザ生地はパン生地を伸ばしたものを使います。パン生地と同じ生地で良いのか知らないけどこれしかないから仕方ないね!

 では、いざ焼き上げ。っていっても魔導具にお任せだけどね。こうやって覗き窓からチーズが焦げる瞬間とか見るのが意外と好きだったりする。

 ちょっと目が疲れた。金と宝石でも見て目を休めよう、あー癒される。金と宝石って良いよね……銀はゴミ。金、銀、財宝って同じ括りにしないで欲しいよな。

 あっ、やべ。ピザ焦げるわ。急ぎ、オーブンからピザを救出。なんか思ったより膨らんでるんだけど。やっぱパン生地使ったのが不味かったかな。まぁ、でも許容範囲内か。結構美味そう。

 はい、というわけで夜食が出来上がりました。

 1品目、パンと肉と芋のチーズ煮
 2品目、皮付きフライドポテト
 3品目、マルゲリータ
 4品目、玉ねぎとキノコのトマトスープ

 なんか、普通に美味そう。あと、やっぱりトマトソースは消費しきれなかったので鶏ガラスープを足してトマトスープにしてみた。具材に玉ねぎとしめじとエリンギを入れたから良い感じにはなってると思う。

 というわけでまずスープから食ってくぞー!

 ……なんかコレジャナイ感。なんでだろ。塩と胡椒入れるか。

 入れてみたらマシになった。多分あれだ。お酢を入れたのが失敗だったのかもしれねぇ。でも、まぁ普通に食える。不味くはない。パン浸して食ったりするのに良い感じ。

 自画自賛するのもあれだけど自作した鶏ガラスープが美味かったから、それにキノコとか入れた方が美味かったかもしれない。トマト不要説出て来たわ。

 そういえば不要だったケチャップもどきを無理やりスープにしたんだった。そう考えると美味いな。

 で、なんで俺はこのスープに芋も肉も入れなかったんだろうね。体に悪そうなカロリー爆上げっていうコンセプトが崩れてるんだけど。普通に体に良さそうなスープじゃダメだろ。

 まぁ、これ以上なんかするのもめんどくさいし普通に食うか。そもそも健康に良いものを食うことは良いことだしな。それで不味いってのが許せないだけで。

 ではマルゲリータを一口。トマトとチーズとバジルの味がする。

 ……色々足りてねぇわ。トマトソースのパンチがまるで足りてないのは確かだ。プロのピザってなんであんなに美味いんだろうな。プロの味に近づけたいが、何を入れれば良いのかはまるでわからないのでお手上げだ。

 とりあえず胡椒振ってみたけどダメだわ、なんか違う。不味くはないんだけどなぁ。ニンニクも足りてない気がするし、生地もなんか違うし、色々足りない料理でした。

 気を取り直し、フライドポテトを食べてみる。美味い……やはり芋は外れないな。この塩加減、芋のホクホク感と味と香り。最高だ。ビールがあればパーフェクトなんだけどな。ちょうど切らしてる……というか腐ってたんだよね。保存方法が不味かったっぽい。というか

 なんかね、ダンボールみたいな匂いがした。毒物耐性があっても流石に飲む気にはなれなかったね。

 さて、気を取り直してメインを食っていくぞ~。見た目はグラタンっぽいこの料理ですが、味はというと……チーズと鶏ガラスープが混ざってめっちゃ美味い。

 なんかね、短いパスタ……マカロニとか入れても普通に美味い感じに仕上がったわ。中に入れたパンは鶏ガラとチーズの旨みが染み込んでて非常に美味しい。パンの香りも消えてないのがGood。

 じゃがいもを食べてみる。当然、チーズにも鶏ガラスープにも合う食材だ、美味い。ホクホクした食感に鶏ガラの旨みを吸収したチーズを纏わせながら食べると非常に美味い。なんというかね、チーズフォンデュ的な雰囲気で食える。

 胡椒のおかげで鶏ガラとチーズの味が引き締まるというか、スパッとした味わいになって良いね。ただ単に胡椒が好きだからという理由もあるけどね。スープとかにね、ついつい胡椒を振りたくなるタイプの人間なんですよ。

 一応、誤解されないように弁明しますと胡椒が好きって言っても常識の範囲内で、ですよ? 何にでも唐辛子をかける人種と一緒にしないでいただきたい。

 さて、話を戻そう。あと食べてないのは、チャーシューか。チーズまみれのチャーシュー。実に食欲をそそる見た目じゃあないか。

 口に入れた途端に主張してくるのはチーズの香りと胡椒の香りだ。

 それに続くようにチャーシューのタレに使った醤油の旨みと香り、チーズの油っぽい旨みが強調される。

 しかし、それだけでは終わらない。

 噛むほどに深い旨みが口の中に広がっていく。チーズに混ざっている鶏ガラスープの複雑な味わいや、チャーシューの肉自体が持つ肉の旨み……それらがチーズや醤油、胡椒といったものがあくまで調味料にすぎないと主張する。

 あぁ、肉と脂を食っている。俺は体に悪いものを食っているという実感を得ている。すかさず、チーズまみれになっているじゃがいもとパンを食う。……最高だよ。

 もしやと思い、出来損ないのピザとチーズまみれのチャーシューを一緒に食らう。……なかなかいけるな。チャーシューを入れればよかったのか。

 でもこれ、マルゲリータじゃなくて照り焼きピザじゃね? トマトが入ってるし、バジルがあるからそれともちょっと違うんだけど……美味いから良いか。

 フライドポテトをチーズに付けて食ってみる。うん、美味い。フライドポテトをチーズに付けるって行為は非常に罪を感じるね。しかも今は深夜だぞ。罪の係数がマシマシだ。しかして、罪の味は美味なんだよなぁ?

 堪えろ、深夜にこんなハイカロリーなものを食べるなんて……くぅ、俺の中の天使と悪魔が争っているー


『炭水化物を揚げたものを、脂の塊に浸して食う。あー、いけませんダイエット中の皆様。カロリー注意報です』

『まぁ、俺はダイエットなんぞしてないから普通に食うぜ。うーん、美味でございます! うめー。こんなに美味いものがこの世にあって良いんですかー?』

『は? 良いに決まってんだろ、食え』

 
 おっさんの中に天使がいるわけないだろ。というわけで食います、もう食い始めてる後なんだけどね。ちなみに俺の中に悪魔なんていないので自分でボケて突っ込んでるだけです。虚しいねぇ……

 ……はぁ、1人で食う飯ってのは虚しいねぇ。1人で食いたい時もあるけどさ、やっぱり仲の良い人間と一緒に食べてる時が1番美味しいのよ。

 と、こんなシケっぽい表情で食うもんじゃねぇな。せっかくの飯が不味くなっちまう。それに一緒に食ってくれそうな奴も来たことだしな。

「邪魔するぞ、兄貴」
「よく来たなアーサー、ラーメン食ってくか?」
「あぁ、食ってくよ。……アイクはやっぱりここにいたか」

 こりゃ、夜食はまだまだ続きそうだな。俺と同じでアーサーもよく食うからなぁ。

「兄貴、すげぇもん食ってるな。美味そうだけど、この時間にこれか」
「別に太りはしないだろうが」
「それが最近、たるみ始めてる気がしてさ。俺ももう36だし」

 とか言いながら服を捲ったアーサーの腹筋はバキバキのシックスパックだし、腕もムキムキだ。細マッチョよりマッチョだが、魅せる筋肉ではない実用性のみ考えられた筋肉だ。

 彫刻みたいな身体しやがって……弟の癖にマウント取りに来てるな? 兄に勝る弟なんぞいないことを証明してやろうじゃないの。

「年齢のせいにするんじゃねぇ。こっちは38でもバキバキだっての。もっと肉食え」
「うぉ、兄貴の筋肉相変わらずヤベー……」
「だろ?」

 どうだ、俺もまだ現役だぞ。

「ま、その話はおいといて。王から召集がかかってるよ」
「クリフォードから? 今回は俺なんもやってねぇぞ」

 本当に、何もやってないから。

「いや、どうも共和国絡みの話なんだ」

 あ、それはちょっと首突っ込んだかも。
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