ことわざ人生

くさなぎ秋良

文字の大きさ
上 下
63 / 64

冬来りなば春遠からじ

しおりを挟む
 『冬きたりなば春遠からじ』とは、今は不幸な状態にあるけれども、やがてはきっと幸せが巡ってくるに違いない。だから、じっと堪え忍び、辛抱せよというたとえ。

 寒くて暗い冬が来ているということは、暖かく明るい春がやって来るのもそう遠くないはずだという意味で、イギリスの詩人シェリーの『西風に寄する歌』の一説からきているそうです。

 思い返せば、小学生・中学生だった頃の私には、たとえではなく本当に冬は辛抱の季節でした。正確には『冬』というより『冬の体育』です。
 私が小学生時代を送った山形では、冬の体育はスキー授業でした。これが憂鬱でたまらなかったのです。

 両親ともにスポーツをしないので、スキーは学校で習うだけ。家庭でスキー場に行く子はやっぱり華麗に滑っていて、なんだか尻餅をついてばかりの自分が惨めでした。それこそ、じっと春が来て雪が溶けるのを待ちわびていました。

 それに、スキー道具も一回り年上の従兄弟のおさがりで恥ずかしかったんです。自分のものを買ってもらったのは中学生になってからですが、それまでは旧式のスキー板やウェアが不便で恥ずかしくて……。
 今となっては「おさがりでいいじゃない、いただけるだけありがたいじゃない」って思うんですけれど、あの頃はみんなと同じじゃない不安が怖かったのです。
 それに、スポーツの道具って毎年新しいモデルが出ますから、十数年前のスキー道具はかなり旧式で、使い勝手も確かに悪かった。

 第一、高所恐怖症なのでリフトに乗りたくなかったんです。
 スキー場にみんなでバスに乗って行くスキー遠足など、車酔いしやすいタイプだったのでなおのことアンニュイでした。

 中学一年になって北海道に転校したとき、スキーがないといいなと淡い期待をしていたのですが……やっぱりスキー授業はありました。そりゃあ、雪国から雪国に転校したんだから、なくなるはずがないですねぇ。北海道でもじっと春を待ったものです。でも、基本的に体育が嫌いだったので、気持ちの上では万年冬だったのかも。

 ただし、当時小学生だった弟はスキーではなくスケート授業になりました。
 北海道でも地域によって違いますが、うちの地元では小学生はスピードスケートを授業で習うのです。
 私はフィギュアもスピードスケートもまったく出来ないので、そのときばかりは「中学からはスキー授業でよかった」と胸を撫で下ろしたのでした。だって、転んだとき氷に尻をつくより雪についたほうがまだ痛くないですからね。

 それにしても、雪国の冬は長かったなぁ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

気がつけば、おマサさん

くさなぎ秋良
エッセイ・ノンフィクション
嫁ぎ先は、とんでもなくワイルドで毒舌ばあちゃんが育てた一族だった。 群馬を舞台に繰り広げられる、パワフル一族の一コマ。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完結】何かの日記

九時せんり
エッセイ・ノンフィクション
九時せんりが日常で気になったことや面白かったこと、面白くなかった事をダラダラ書くだけの脱力系エッセイ。書くことから離れないをモットーにやってます。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。

カレイなる日々

隠井迅
エッセイ・ノンフィクション
2022年の夏から巡り始めた書き手のカレー題材のエッセイです。

処理中です...