ことわざ人生

くさなぎ秋良

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無駄方便

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 『無駄方便』とは、一見無駄のように思われることでも、使い方ややり方次第では案外役に立つこともあるということ。

 さて、私事ですが平成28年8月9日に第二子を出産しました。
 お世話になった産婦人科は個人病院で売店もなく、夫に「あれを持ってきて」「これを買ってきて」とお願いすることが多々あったのですが、そのときのお話です。

 出産前、病室に入ってすぐ「吸水シートを買ってきて」と電話で夫にお願いしました。出産前は尿漏れしやすいのと、おりものが出たときに備えてつけていたんです。
吸水シートとは、おりものや軽い尿漏れ用のシートですね。大きさは生理用品と変わらないのですが、血液でなく水分用のシートです。

 夫は電話の向こうで「俺、そういうのわからないんだよ」と困惑。一緒にいたらしい姑に「尿漏れとかの吸水シートって何?」と訊いている。
 すると「薬局に行かないとないよ!」という姑の声が聞こえてきました。コンビニでも小さいサイズで売っていそうだけど、なんだか通じてないぞ……と、嫌な予感がしたので、慌てて「あればでいいよ。無理しないで」と付け加えました。

 結局、その後思ったより早く出産となったので吸水シートは不要になったのですが、病院に夫が持ってきたものはいやに大きなピンクの袋……介護用の尿取りパッド……おしっこ3回分吸収。

「それ……違うよ」

「だから、俺はこういうの、わかんねぇんだよ」

 まぁねぇ、私も薬局で勤務してなかったら尿漏れ用シートと尿取りパッドと間違えるかもしれない。それに、パッケージにドラッグストアのテープが貼ってあったので、わざわざ遠回りして買ってきてくれたこともわかりました。

 そこで、家に帰ってから悪露おろ(子宮の内側や膣の傷口などからでる粘膜・血液・分泌物の混ざったもので、産後一ヶ月は出る)対策として、夜寝るときに使おうと考えました。
 本来は尿のパッドなので用途は違うけど、要は漏れなきゃいいんだ、大きいし……そう考えたのです。

 ところが、思ったよりも悪露の出が多く、準備したお産パッド(生理用品に似た、悪露用のシート)がすぐになくなってしまいました。看護師さんに言えば買えたらしいのですが、ふと目についたのが、夫の持ってきた尿取りパッド。サイズも大きく、横になっていても漏れずに安心。結局、入院中に使い切り、とても役に立ったのでした。

 そのほかにも、彼が持ってきたカップヌードルも、最初は「お湯なんてないよ」と苦々しく思っていたのに、病院側が私の病院食を出し忘れるというハプニングの際に、ちゃんと役だったのです。
 ふと目についたもの……それは、赤ちゃんのミルクのために使う湯沸かし器。そうだ、これを使えばいいんだよ……と、そのお湯でカップヌードルをすすることができたのでした。家に戻ってから食べようと思っていましたが、ここで役に立つとは。

 尿取りパッドにしろ、カップヌードルにしろ、入院したときには「ここでは使わないよ」と思っていたものに限って、役に立ったという……。

 夫にそんな話をしたら、「ほらな、万物に無駄なものはないんだよ」となにやら得意げでした。
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