ことわざ人生

好きには身をやつす

　『好きには身をやつす』とは、好きなことのためには、人はどんな苦労も苦労と思わず、その身がやせ細るほどに打ち込むということ。『やつす』とはものごとに熱中するという意味です。

　学生時代から自他共に認める多趣味ですが、私の場合、やせ細ったのは身ではなく財布でした。何をするにもお金というものはかかるものです。本当に身が細ってくれたほうがありがたいんですけれどね。
　けれど、その分多くの経験と技術、思い出が糧となったので、悔いはありません。小説の執筆でも大いに役立ちます。

　習い事は習字、ピアノ、バイオリン、チェロ、クラシック・ギター、英会話、スペイン語などなど。
　自分の趣味としてはミニチュアの料理やドールハウス作り、ちぎり絵、葉書絵もしてました。音楽もジャズやクラシック、ロックから雅楽まで聴くし、スポーツも見るのは好きです。読書はもちろん、大好きです。多分、忘れているけれどもっとあるはず。

　ところが、夫がやつしたものといえば『映画』だけでした。
　本当に一筋なのですが、それがものすごくディープなのです。いわゆるマニアですね。一体、生涯で幾らの時間とお金をかけたんだろう？
　洋画も観ていますし、日本映画はもっと好きなようです。
　年代も白黒から今年の新作まで観てないものはないんじゃない？　というほど。アニメ映画も特撮映画も大好きみたいです。
　どんなにマイナーな映画でも「あぁ、あれね」と詳しく話してくれます。しかも、俳優さんたちや監督などの情報、作品にまつわるエピソードにまで精通しています。

　実家やアパートにはDVDが山積みで、映画専門チャンネルで録画したものはきちんとダビングして名前をメモしてとっておくのです。そこらのレンタルショップより作品量があるかもしれないです。

　私も映画は好きでしたが、20代で若年性老眼とドライアイになって観るのが辛くなって離れてしまいました。
　それに映像はダイレクトに感受性を刺激するので、名作ほど世界にとらわれて抜け出すのにしんどいのです。
　テレビを観ないせいもあり、私は俳優さんに疎いのですが、夫から時々マニアックな情報をもらうせいで知識に偏りが生まれています。

　夫は毎日必ず何か映画を観るので、横目で見て興味がわいたら一緒に観ています。夫と結婚していなければ、一生知らなかっただろうなと思う映画が次から次へと……。
　ときには『あぁ、これを観てよかったな。けれど、夫が観ていなければ観なかったなぁ』と思う作品もあるので、夫とも映画とも、ご縁というものがあるのだなぁとしみじみします。