親子誕生

くさなぎ秋良

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病室編

退院

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 息子は生まれてきたとき、右目は一重で左目が二重でしたが、翌日にはふよふよした身体がいくらか締まって、両眼ともくっきり二重になっていました。一日で顔がすごく変わるのにはびっくりしました。

 おっぱいよりも哺乳瓶のほうが楽だと気がつくと、おっぱいに癇癪を起こしてみたり、なかなか面白かったです。
 言葉はありませんが、思いつく限りの消去法や推理、観察をして彼の思うこと、願うことを知ろうとする。それには相手を知りたい、いたわりたいという想いがあるからで、コミュニケーションの最も基本的なことに気付かされる場面もありました。

 退院までの一週間は、面会時間になると、夫や姑、夫の友人たちが次々に面会に来てくれました。正直に言うと、本当は赤ちゃんが寝ている間は自分も寝ていたいところですが、やっぱり祝ってくれるのは嬉しいものです。
 ちょうど、大阪に就職した小児科医の友人がこちらに遊びに来ていて、駆けつけてくれたのも嬉しかったです。私の実家は北海道で、こちらに知り合いもいなかったからです。

 それにしても、子どもを産んだらお腹がすとんと引っ込むものだと思っていましたが、翌日になってもお腹は出たままなことにがっくりしました。
 なんだか、もう一人くらい入ってそうな出っ張り具合です。あれだけスイカのように伸びきった皮膚が戻るには時間がいるんでしょうが、こんなに大きな子どもが出てきたらもう少し引っ込んでもいいんじゃないかと恨めしく思いました。

 そして私は産後、妊娠性の湿疹と裂傷の痛みに苦しみました。
 湿疹が痒くてたまらないのです。水疱瘡のようなものがお腹を中心に腕やお尻、足などにまで広がって、総合病院内の皮膚科を受診しました。
 そして浮腫、つまりむくみもひどくなり、足の甲が丸くふくれあがり、歩くとぶるんっとふるえました。
 多分、出産に時間がかかったのも、浮腫も、体重が増えすぎたせいもあるのかなぁと、今では思います。

 初産で普通分娩だったので、一週間ほどの入院でしたが、辛いときには赤ちゃんを看護師さんに預けることもでき、すぐにあれこれ相談もできて、一番傷が痛むけど、一番楽だったときでもありました。
 祝い膳も嬉しかったなぁ。入院する前は『廃業したあっちの病院のほうがご飯が美味しいって聞いたのに』と不安がってごめんなさいと、心の中で謝りました。美味しかったです。

 そうそう、これから入院を予定している方におすすめしたいのは、スリッパに必ず靴下をはくこと。裸足にスリッパだと、すぐに臭いがするようになるんですよねぇ。靴下をはくとそうでもないです。これは知らなかったなぁ……。

 こうして、2月26日に産まれた息子は聴覚や黄疸なども異常なく、3月4日に無事、退院となりました。
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