猫が湯ざめをする前に

くさなぎ秋良

文字の大きさ
48 / 50

なくてもいいけど、あったら最高に贅沢なもの

しおりを挟む
 私のように脳内に住む猫には食べ物はいらないが、実際に生きている猫となるとそうはいかない。

 くさなぎ家の愛猫たちは普段ドライタイプのキャットフードを食べているが、夜だけ夫が猫缶を開けている。そうでもしないと、晩酌の肴に猫4匹が群がって大変なことになるのだそうだ。

 彼の言い分はわかるが、猫たちは彼が帰ってくると嬉々として出迎え、猫缶を開ける前から群がっているし、晩酌のときも猫たちがじっと見つめて無言の圧力をかけている。猫缶をあげてもあげなくても、同じではないかとしか思えない。

 夫が夜勤でいないとき、猫たちは静かなものだ。群がることもなく、にゃあにゃあと鳴いて催促することもない。くさなぎは決して猫缶を開けないと知っているのだ。彼女は「水分補給がきちんと出来ているうちは猫缶はいらない」と考えている。

 猫たちにとっては猫缶は『なくてもいいけど、あったら最高に贅沢なもの』なのだろう。

 くさなぎにとって、それは真昼間に飲むビールの一口目だ。もしくはプロにお願いするマッサージ、あるいは風呂上がりのアイスである。

 この『なくてもいいけど』というのが『なくてもいいや』にできず『なくてもいいけど、なくせない』になると、節約できなかったり物をためこんでしまうから注意がいる。
 実際、くさなぎは『なくてもいいけど』洗剤などの日用品のストックを多めにしておかないとソワソワしてしまうため、スペースの確保に困ることが多い。

 『なくてもいいけど』は煩悩との戦いがつきものの言葉なのだ。そう考えると、人間は面倒な生き物だ。

 さて、今宵はここらで風呂を出よう。

 猫が湯ざめをする前に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

Web小説のあれやこれ

水無月礼人
エッセイ・ノンフィクション
 沢山の小説投稿サイトが存在しますが、作品をバズらせるには自分と相性が良いサイトへ投稿する必要が有ります。  筆者目線ではありますが、いくつかのサイトで活動して感じた良い所・悪い所をまとめてみました。サイト選びの参考になることができたら幸いです。 ※【エブリスタ】でも公開しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...