万能すぎる創造スキルで異世界を強かに生きる!

緋緋色兼人

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4巻

4-3

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《3 後処理》

 アイリの絶叫を聞いた俺は、一体何事かと一気に警戒態勢に入る。
 しかし、注意深く周囲を見渡しても、特に危険があったりするわけではなさそうだった。
 皆も何があったのか理解できていない表情だ。
 アイリだけが何かに気付いたってことか?

「アイリ、いきなりどうしたんだ?」

 俺が問いかけると同時に、アイリは少し離れた所で四つん這いになっているトランに向かっていき、延髄蹴えんずいげりを見舞う。
 トランはその一撃で気絶したみたいで、泡を吹いて倒れた。
 冷気がこもっているような瞳でトランを一瞥したアイリは、すぐに俺たちのほうに戻ってきて口を開く。

「この男が、クロスとアーシャに奴隷狩りの依頼をした貴族です。クロスたちに裏切られて奴隷にされたショックやルイ様に二度と会えない絶望で記憶が薄れていたのですが、あの二人がトランの名前を口にしていたのを思い出しました」

 は? マジかよ! こいつのせいで、リサとアイリは一時とはいえ奴隷になっていたのか。

「アイリ、それは本当なの!?」
「ええ、マリア様。間違いありません」

 それを聞いたマリアは【ダウンバースト】の威力を強めた。気絶したトランの身体から、みしみしと骨がきしむような嫌な音がする。
 このままだとぺしゃんこになると危惧きぐした俺は、すぐさまマリアに言う。

「マリア、それ以上やるとトランが潰れてしまう! 本当だとは思うが、一応トランからも事実確認をしておこう」
「わかったよー。とりあえずこの辺で勘弁しておくね」
「ああ、すまないな」

 マリアが【ダウンバースト】を停止させると、今度は俺がトランに魔法を使う。

「【ハイヒール】」

 俺は魔法で回復させたトランに近付き、軽いビンタを数発食らわせて目を覚まさせる。
 目を見開き、わかり易く驚愕しているトランに向かって、俺は言い放つ。

「お前は無駄なことをしゃべるな。俺の許可なく口を開くなよ」
「ひ、ひ、ひぃぃ、な、なんだ!? お前たちはなんなんだ!?」
「うるさい。黙れ!」

 再びトランの頬を平手で打つ。出来物できものが多くて汚いこいつの顔にはあまり触りたくないが、しょうがない。
 トランはおびえを隠しもせず、肉で埋もれてしまっている首を一生懸命縦に振っている。

「お前に聞きたいことがある。正直に答えないと……そこらに転がっているむくろと同じ運命をたどるぞ」

 俺は周りの肉塊を指差し、トランにそう伝えた。

「ひぃぃ、私の護衛がああ! ――――ぐあっ」

 トランがまた勝手に叫んだため、俺のビンタが炸裂。
 はぁ、俺はビンタするにも慎重に気を遣ってるんだぞ? 軽く軽くやらないと、首が一八〇度回るからな。きっと俺の努力はこいつに伝わらないと思うが……

「これ以上、俺の許可なくその臭そうな口を開くなよ。じゃあ、聞くぞ? お前はクロスとアーシャという名前に覚えがあるか?」
「あ、あるぞ! 私はその者たちに依頼もしていたというのに、なぜか最近連絡が取れないんだ! せっかく依頼をしてやったというのに……まさかお前たちはクロスたちの居場所を知っているのか?」

 こんなにあっさりと口を割るとは思わなかったな。こいつは馬鹿なのか? 正直者なのか? ただ単に怯えているだけって可能性も捨てきれないな。
 アイリがクロスから聞いた話と今の発言から、リサとアイリが奴隷になったのはこのトランのせいだと確定した。
 さてさて、こいつはどうしてくれよう?

「ああ。俺は二人の居場所を知っている。そういえば、アーシャについては俺より詳しい奴がいたんだっけ? なぁ、ロウガ」

 一瞬考えたような素振りを見せたロウガだったが、すぐに口を開く。

「ああ、あいつね。あの子はもう壊れたから、すでに魔物のえさになったね。ってことでアーシャの居場所は魔物の胃袋の中! あっ、結構前のことだし、もう消化されてるはずだから、厳密にはそうじゃないかな。それにしても、奴隷狩りは一応禁止されているんだけど、トラン伯爵は奴隷狩りをしてたのか。まぁ、怪しいとは思ってたけどねぇ」

 ロウガは心底楽しそうな笑みを浮かべながら、アーシャの顛末てんまつを語った。こいつ、結構危ない奴なんだな……

「クロスのほうもすでに死んでいる。ロウガに殺されたようだぞ」
「あの二人が死んだだと!? あいつらはSランクの冒険者で、実力は確かだったはずだ!」
「そうだねぇ、クロスはダークラス隊の俺が殺してやったよ。強さは大したことなかったなぁ」
「お前はダークラス隊の者なのか!? 貴様、なぜこんな奴らと一緒にいるんだ! お前も帝国の一員なら早く私を助けるのだ! こいつらを殺せぇぇ――――痛いいいい」

 教育がなっていないうるさいトランに、俺はまたビンタをかます。

「皆、こいつはどうしたらいいと思う?」
「俺なら魔物に食べさせるかなぁ」
「お前は……そんなに魔物に食わせるのが好きなのかよ……」
「そうだよ! 俺の趣味とも言える!」

 ロウガの悪趣味に付き合う必要はない。こいつのことは放っておいて、と……
 皆それぞれ思案中のようで「うーん、うーん」と唸っている。
 拷問の末に殺された奴隷たちのことや、リサとアイリを奴隷にしようとしたことを考えたら、俺たちがトランを憎む気持ちはかなりのものだ。だが、次はティターニアを助けに行かなければならないから、あまり時間をかけていられない。

「本当は生き地獄を味わわせてあげたいと思うけど、これでいいんじゃない? 【アースチェンジ】」

 突如マリアが魔法を使用した結果、トランの足元に直径三メートル程の穴が開く。

「ぎゃああぁぁ」

 当然、トランはその穴に落下。覗き込んでみると、深さは一〇メートル程度だった。落ちた痛みで気絶したみたいで、奴は動かない。
 トランを〈鑑定〉して持っているスキルを見る限り、一人で上ってくるのは不可能だろうし、ここに閉じ込めておくってことか?

「これで仕上げだね。〈アースチェンジ〉」

 マリアが再び魔法を使い、穴の入り口はほぼ閉じた。開いているのは直径一センチ程度。
 空気穴だけ残したってところか。これはマリアの優しさか? わからんな。

「マリア、さすがなのです! とても良い案なのです!」
「でしょー?」

 マリアを褒めるエレノアに、ドヤ顔のマリア。


「餓死するまで充分に苦しめばいいのです。マリア様、ありがとうございます」

 溜飲が下がったのか、アイリが笑顔でマリアにお礼を言った。
 トランはマジックバッグとかも持っていなかったし、奴の屋敷は壊滅していて、人通りも少ない。トランが生きているうちに誰かが見つけることはないだろう。

「これでトランのことは終わりにしよう」

 一件落着とばかりに、俺はリベロさんとレシアさんに向き直る。
 彼らは顔をらせていたが、俺の視線に気が付くと表情をつくろう。

「トランはリサのことも奴隷にしたし、相当あくどいことをしていたみたいだから、あの扱いも仕方ないだろう」
「あ、ああ。大丈夫だ。皆なかなか思い切りがいいからビックリしただけだよ。う、うん、大丈夫。少し驚いただけさ。トランに同情もしていないしね」
「私はまだ詳しく知らないけど、ここにいる女の子たちはたくましそうでいいわね」

 リベロさんとレシアさんの返答に頷いてから、俺はまた口を動かす。

「さて、二人をどこに送ればいい? 俺が行ったことのある場所であれば魔法を使って送れるが」
「では、とりあえずミドリアに連れていってくれるかな。そこでゆっくり休みながら、今後の予定を考えようと思う」
「わかった。ところで、どうしてミドガル王国なんだ?」

 俺はリベロさんに問いかけたのだが、答えたのはレシアさんだった。

「私たちはしばらくの間、世界中を回って旅をしてきたわ。今回みたいなことが起きたのが旅のせいだと思わないけど、少し疲れちゃってね。そろそろゆっくりしたくなったの。リベロから聞いた話だと、ミドリアはすでに戦争の脅威もなくなって安全らしいじゃない? それに以前あそこに少し行ったことがあって、差別とかもなくて住みやすい所だって知っているのよ」
「うん。まぁ、先立つ物がないからギルドで軽い依頼を受けながらだけどね。ギルドカードは帝国に没収されてしまっているけど、幸いにしてギルドですぐに再発行できるから」

 お金については俺が余らせてるから、リベロさんたちに渡したいが……帝国に来る前に聞いたときも援助はいらないって言っていたし、ここで再度言うのも話を長引かせてしまうだけか。
 続いてレシアさんが口を開く。

「再発行手数料くらいなら、その辺で魔物を倒して素材を持ち込めば稼げるし、大丈夫よ」

 この二人は強いし、本当に問題ないのだろうと判断する。

「それじゃあ送るから、二人とも俺の肩に――」

 言っている途中で、この場はマリアに【ワープ】を使ってもらったほうがいいなと気が付いた。
 ここにはロウガがいるからな。フェンリルもいるとはいえ、俺が目を光らせておこう。
〈直感〉スキルの感覚では、何か起きるという感じはしないのだが、人は考えが変わる生き物だ。どこでどう変化するかわからない。
 なにせ、ロウガはついさっきまで敵だった男だし、そもそも味方というわけじゃない。そんな相手を残して俺が離れるわけにはいかないだろう。
 マリアを見ながらそう考えていると、俺の視線を疑問に思ったのか、彼女が口を動かす。

「ん? ルイルイどうしたのー? 送っていかないの?」
「ああ、予定変更だ。マリアがリベロさんたちをミドリアまで連れていってあげてくれ。俺は――」

 ロウガに視線を移してから、俺は一旦句切った言葉を続ける。

「念のためロウガを見張っていよう」
「ああ、そういうことね。了解! 僕に任せて! リベリベ、レシレシ! 行くよー!」

 苦笑しているロウガに構わず、マリアが明るい声で転移を引き受けてくれた。
 さらに、リベリベとレシレシという呼び方を聞いたリベロさんたちは唖然あぜんとしている。

「リベリベとレシレシ! 固まってないで、行くよ! ほらほら早くー。私の肩に手を置いてね!」

 どこかぎこちない動きで、リベロさんたちはマリアの言う通りにする。

「じゃあ、行ってくるよ。すぐ戻るからねー! 【ワープ】!」

 マリアの魔法が発動し、三人は俺たちの前から消えた。
 この後は、ロウガをどうするかだな。
 ロウガは心からステアニア帝国に忠誠を誓っている感じはしない。むしろ好きなことができるという理由でこの国にいるみたいだから、今後多少は利用できるだろう。

「ロウガ、お前の誓約の腕輪を外すから腕を出せ」
「へぇ、やっぱりこれを外せるんだ?」

 ロウガは自分の腕輪を指差しながらそう口にして、さらに言葉を続ける。

「アヤカ・テンドウたちがしていたはずの誓約の腕輪が見当たらないから、変だと思ってたんだよねぇ。聞いても教えてくれなさそうだから、聞かなかったけど」

 こいつなら気が付くか。帝国の暗部として活躍していたくらいだし、結構目ざとい奴なのだろう。
 俺はロウガに近寄っていき、差し出された腕を掴んで腕輪の上に手のひらを置く。

「【リリース】!」

 取り外した腕輪は【アイテムバッグ】に保管しておく。ロウガは今まで腕輪がはまっていたところをさすっている。
 そこへ、頼み事をしていたファフニールが戻ってきた。
 ファフニールは俺に突進してきて、褒めてほしそうに頭を胸に擦りつけてくる。だから俺は何度も撫でてあげた。
 この国は物騒だし、ファフニールはこのまま出しておこう。シルフィたちはまだ【サモンワールド】の中で待機でいいかな。危ない雰囲気を感じ取れば勝手に出てきて、俺たちのパーティの中で防御力が低めの子を守ってくれるだろう。
 ファフニールは俺に甘えるのに満足したのか、次はフェンリルとじゃれ合って遊び出す。
 少しの間二匹を見て心を和ませていると、少し離れた場所に魔力の揺らぎ感じた。
 そして虚空からマリアが現れる。

「ただいまー!」
「おかえり」
「おかえりなのです! マリアは【ワープ】が使えて羨ましいのです! 私も早く使えるようになりたいのです!」

 俺とエレノアに続き、皆もマリアに声をかけたのだった。



《4 ステアニア帝城へ》

 「ルイルイ! 僕たちがいたミドリアの宿屋に二人を送り届けて、ついでにシャンプーとかの使い方も教えてきたよ」

「ああ。ありがとう」

 さて、これで帝城に向かえるな。ロウガから情報を引き出しておくか。

「ロウガ、ステアニア帝城にいる戦力はどれくらいだ?」
「はぁ、答えるしかないかぁ。ダークラス隊だと隊長のハヤテ様と隊員が五〇人程度。リネガル様がまとめている魔法騎士団が三〇〇人前後。第二騎士団もいると思うけど、そっちは人数不明かな」
「万単位でいると思ったら、そうでもないんだな」
「それはそうでしょ。この国に攻めてくる国家なんて基本的にないし、ほとんどの騎士団は国境近くの砦を守っているから。今言った戦力があれば基本的に事足りるし、リネガル様は転移魔法を使えるから情報の伝達も早いしね」

 それもそうか。帝国は軍事力が相当あるけど、その分版図はんとが広いから守るのも大変なんだな。

「君みたいに転移魔法がある敵は厄介だけど……前提条件として、使い手は相当少ない。不確定要素が多い危険のために国境近くの守りをおろそかにしたらそれこそ……ね? あ、君たちが返り討ちにした軍隊も、少し前まではこの国に常備されていたけどね」

 言われてみれば、来るか来ないかわからない転移魔法の使い手を必要以上に警戒して、他国に侵略されてしまえば元も子もない。
 それでも、今回俺がこうして来てしまったことは、運がなかったと諦めてもらう。

「よし、このまま城に乗り込むぞ。立ち塞がる相手には容赦しなくていいが、必要以上にやりすぎることもない」

 ロウガと一緒にいたダークラス隊も、気絶で済ませたしな。こっちから攻め込んで殺すっていうのは、やはり少なからず抵抗がある。
 とはいっても、もし俺の仲間が帝国に捕らえられている状況であれば、その限りではないが。

「よし、また屋根の上を走って最短距離で行く。ファフニールは飛んでこい。行くぞ!」

 しばらく移動して帝城近くまで着いたら道に降り、俺は楓に話しかける。

「意外と気が付かれないもんだな」
「そりゃあ、皆身体能力が高いから。そうじゃなかったら普通に目立ってると思うよ?」
「そうだな。よし、城に入るときはロウガに任せるぞ」
「はいはい、どうせ抵抗したらひどい目に遭わされるんだよね?」
「ああ」

 ロウガはため息をつくが、心底嫌がっているようには見えない。根本的に性格が気ままなようだ。
 俺はロウガからステアニア帝城に視線を移して見上げる。
 この中のどこかに、皇帝であるレオンがいるはず。敵の兵もできれば殺したくないが……まぁ、出たとこ勝負か。
 続いて仲間たちに目を向ける。それだけで、全員が頷いてくれた。それを受けて、俺は無言のまま城へと足を踏み入れた。


「おい! お前らは何者だ!? ここをステアニア帝城と知っていて来たのか? お、おい……エルフ族に獣人族もいるじゃねーか! それになんだ、その見たこともない狼に龍は! 首輪をしているところを見るとテイムされているようだが、城内に入れることはできないぞ!」

 この門番が俺たちの正体を看破していないことから、ファフニールに運ばれていったダークラス隊から情報は漏れていないと見える。
 もともとレシアさんの救出にはそれ程時間を取られていないから、それも当然か。
 門番の侮蔑の視線がエレノアやマリアに突き刺さる中、それをさえぎるようにロウガが前に進み出る。

「やあやあ! 警備の仕事頑張ってるねぇ。俺はダークラス隊副隊長のロウガ。皇帝陛下の密命で、俺はこの人たちを客人として連れてきた。だから警戒しなくてもいい」
「ほ、本当ですか!? 私たちは何も連絡をいただいていないのですが……」
「はぁ? お前は俺の言葉を疑うのか? どうやら死にたいらしいな」
「ひ、ひぃい、す、す、すみません! どうぞお通りください!」

 きちんと仕事をしようとしていた門番は正しい。しかし、この世界は理不尽が溢れているから、どうしようもない……
 同情しなくもないが、こいつはエレノアたちに失礼な真似をしたからなぁ。
 そんなやり取りがあった後、俺たちは無事に城内に入ることができた。そしてロウガに案内されるがまま、しばらく進む。
 途中でそこそこ兵士を見かけたが、ロウガを見るとすぐに離れていく。この男の権力は相当なものなのかな? 
 歩きながら城内を観察すると、アースで一番大きな国だけあって、ミドガル王城以上に高価そうな装飾品や調度品が並べられているし、造りも美しい。
 俺はふと思い出して、地球育ちの彩花、楓、石動に話しかける。

「彩花たちはここにしばらく住んでいたんだし、この辺を通ったことはあるのか?」
「この辺はないかな。楓と愛美は?」
「全然記憶にないから、来たことはないと思う」
「私もない」

 俺たちの少し前を歩いていたロウガにも、今の話が聞こえたのだろう、振り返りもせず話に加わってくる。

「なくて当然。この辺は余程の地位じゃなければ立ち入れない区域だから。さて、もうすぐ皇帝陛下の私室に到着するんだけど……ここまで不自然なまでに警戒されていなかったよね。だから多分――」

 ロウガの言葉が突如途切れ、その瞬間に空間がぶれたのを感じた。
 今まで通路を歩いていたはずなのに、俺たちが今いる場所は大広間になっている……?

「ああ、やっぱりね」

 ロウガは一人、納得顔で頷いていた。

「何があった?」
「この場所は、本来の造りであれば大広間なんだ。けどいつもはそれを、リネガル様が作った魔道具の力で通路にしているんだよ。で……あそこ、ほら、ね?」

 そう言ってロウガが指差した先には、三人の男が立っていた。
 フルプレートアーマーを着用している一人は、エレノアが戦ったというハヤテで間違いない。
 その横にいるのは、片手に杖を持ち、紫を基調とした一見布製に見える気品が溢れる服を着ている男。彼が着用している服は俺たちのと同様、見た目通りの防御力ではなさそうだ。髪の色は服と同じ紫で、顔立ちはいいほうである。
 エレノアから聞いた、【ワープ】を使ってハヤテの助けに入った奴と特徴が一致している。こいつがリネガルか? 只者じゃない雰囲気だ。
 その横に立っているのは騎士っぽい奴。名前と能力を知りたかったが……こいつらは揃いも揃って俺の〈鑑定〉を弾きやがった。まぁ、危機感を感じる程じゃないから問題はないか。

「ねぇ、楓、あの鎧を着ているのは……スタンリー団長じゃない?」

 騎士らしき男を見て、彩花が言った。

「うん、間違いないと思う。こんな所で待ち伏せしているなんてね」
「ああ、そうそう。君たちに耳よりの情報があるよー? 聞きたい? 聞きたい? どうしようかなぁ」

 にやにやした顔のロウガに一瞬イラッとして殴りそうになったが、なんとか理性で押し留めた。
 しかしすぐに収まりそうになかったので、憂さ晴らしのために殺気をロウガに少しぶつける。

「も、もう! 君は本当に短気だね! 俺より短気なんじゃないの!?」

 は? ロウガみたいな残虐非道な奴と一緒にしないでほしい……と思っていたら、ロウガは言葉を続ける。

「実はさ、君たちがさっきまで一緒にいたエルフ族の男女なんだけど、あの二人を捕獲してきたのはスタンリー団長なんだ。どう? なかなかいい情報だったでしょー!? 俺はこうやって君たちを助けているんだし、このゴタゴタが終わったら、できれば見逃してほしいんだよねぇ」

 聞き逃せない情報を聞かされて腹が立っている最中、ハヤテが怒声を上げる。

「おいおい、いつまでくっちゃべってるんだ? それにロウガ! お前は俺たちを……いや、ステアニア帝国を裏切るつもりか? そんな奴らを城内に引き入れやがってよ!! ダークラス隊の副隊長として恥ずかしくないのか!」

 こいつらの言い合いはどうでもいいが……ここからどうするか。
 まずは相手の名前を小声でロウガに確認する。するとやはり、杖を持っている奴はリネガルということだった。
 この場で一番厄介なのはリネガルで間違いない。真っ先に潰さなければ、転移魔法で逃げられてしまう。ハヤテは、再戦したそうにしているエレノアに任せるか? スタンリーは楓がやりたそうな目をしているし、あとは……

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