万能すぎる創造スキルで異世界を強かに生きる!

緋緋色兼人

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2巻

2-1

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《プロローグ 天童彩花てんどうあやか

 幼馴染おさななじみ柏木類かしわぎるいが私――天童彩花をかばって亡くなってから早一か月。
 私は今日も学校を休んでいた。もう二週間になる。
 類が私の身代わりになった後、私の世界は灰色に染まった。
 彼が亡くなってから聞いた噂がある。それはあの人がイジめられていた子を助けた、というもの。
 そこで終わりの話なら良かったんだけど……イジメの次なる標的にされたのは他でもない――類だったらしい。
 私は噂の真偽を確かめるため、色々な人に話を聞いた。
 少し苦労もしたけど、その結果、噂は本当であるとわかった。
 そうなると一つの疑惑が浮かび上がってくる――類が私と距離を取っていたのは、もしかしたら彼なりに考えた上での行動だったのでは?
 私は根が臆病者おくびょうもので、精神的に弱いと自覚している。そんな私にイジメの被害が及ぶのを避けるために、交流を断っていたんじゃないかな?
 臆病者な私は……彼に完全に拒絶されるのが怖くて、なぜ距離を取るのか直接聞けなかった。
 私は類が大好き。心から愛してる。
 結局彼が生きているうちに距離を縮められなくて……もっともっと彼と一緒にいたかったし、話したかった……いくら悔やんでも悔やみきれないよ……
 類をイジめてた奴らに仕返しをしたい気持ちはあるけど、どうしても気力がわかない。
 そうやって一人悩みながら、私は怠惰たいだな日々を無駄に過ごしていた。本当にバカで臆病な自分が嫌で嫌でたまらない。
 ベッドに寝転がりながら、最近良く見るアルバムに視線をやった。
 そこには小さい頃の私と彼が写真に写っている。
 改めて思う、この頃は楽しかったな……
 そうやって自分の世界に浸っていると、ベッドの脇に置いてあるスマホがピカピカ光る。
 毎日毎日、友達からSNSでこうやってスマホに連絡が来るけど、どうしても返事ができない。
 今日も点滅を繰り返すそれを放置して布団を被り、暗闇の中、愛しき人の顔を思いだし――妄想の世界へ旅立つ。


 類のことを考えて眠りについた私は、翌朝、憂鬱ゆううつに目を覚ました。

「はぁ、本当になんで私は生きているのよ……あのとき私が死ぬべきだったのに。なぜ私は最愛の人の命を奪ってまで生き長らえているの?」

 そんな独り言を呟いていると、スマホの着信音が鳴る。

「うー、うるさいなぁ。バイブにしておけば良かった」

 そう言いつつも、一応誰からかかってきたのか確認すると――凄く珍しい人からだった。
 久しく他人と話していなかった私は、一瞬躊躇ためらったものの、結局は通話ボタンを押した。そしてその人から、一方的に色々と言われてしまった。
 電話をくれたのは、二年前に引っ越しをするまでうちの空手道場に通っていた男の子。
 彼は類と凄く仲が良くて、いつも二人で模擬戦をしていた。大抵類が勝っていたんだけどね。
 その男の子は、類が亡くなったことを人伝ひとづてに聞いたという。さらに今の私の状況も知り、こうやって電話してきたんだそうだ。
 散々説教された私は、絶対に類のことを吹っ切れはしないけれど……それでも今のままではダメなんだと気付かされた気がした。
 大好きな彼が、文字通り命を懸けて救ってくれた私の命。今みたいに死んだように過ごすのは、そんな類に対して凄く失礼な行為なんだって理解した。
 それでも私は――あなたにいたいよ。
 あなたがいない世界は灰色に染まったままだけれど……それでも私は、これからの人生を先に向かって歩んでいこうと決意した。


 ◇ ◇ ◇


 最愛の人が亡くなってから、およそ一年の月日が流れた。時が流れるのは速いもので、私はもう高校二年生。彼より一歳年上になってしまった事実に対して、憂鬱ゆううつになる。
 いつになっても色褪いろあせない思い出。それだけが私の心の癒し。
 それでも、前を向いて生きていこうと決めたあの日から、私は徐々に疑似的な明るさを取り戻してきた。
 学校に到着した私は、自分の下駄箱から上履うわばきを取り出した。すると、それと一緒に四通の手紙がパサパサと床に落ちる。

「はぁ、本当になくならないなぁ、これ」

 足下に散らばったラブレターに目をやって、そう呟く。私は類以外の男に絶対興味をもたない。だからこういう物は受け取らないし、嬉しく感じることもない。

「はぁ、とりあえずここには置いておけないよね」

 屈んでそれらを拾い上げ、教室に向かう途中にあったゴミ箱に投棄していく。
 そうした行動を見ていた人から非難の声が上がるが、そんなの気にしない。類がいないこの世界において、私は誰にどう思われてもどうでも良くなっていた。
 足早に歩いていき、教室のドアを開く。そしてそのまま自分の席に向かう途中、話しかけてくる人がいた。

「おはよー。今日もラブレター捨てたんだって? もう噂になってたよ」
「そう? まぁ、好きなだけ噂してくれていいよ」

 彼女の名前は、屋島楓やしまかえで
 高校二年生になってから出会ったこの子とは、もう親友と呼べる間柄になっていると思う。
 といっても、初めて楓を見かけたのはもっと前だ。
 彼女は昔、空手をしていた。そのため、正確にいつ頃か定かではないけど、類が出場した大会の応援に行ったときに見たことがあった。
 楓には本当に頭が下がる思いでいっぱいだ。私の類に対する想いや後悔など、色々と話を聞いてくれるし、相談に乗ってくれるからだ。
 毎日そんな話をしているにもかかわらず、いつもいつも親身になって付き合ってくれる。
 その彼女が、私に向かって再び口を開く。

「今日は機嫌悪い?」
「んー、まぁ、いつになっても手紙がなくならないからね」

 そう言って苦笑した私は、改めて楓を見る。
 顔はそこいらの芸能人より可愛くて、綺麗で柔らかそうな黒髪をゆるふわパーマのボブカットにしている。体形もうらやましいくらいにスレンダーだけど、胸が少し小さめなのがコンプレックスらしい。
 彼女を見ていると、こういった髪型もいいなぁ、と思うこともある。
 だけど私は……類に庇われた自分をいつまでも忘れたくないので、常にあのときと同じ長さ、同じ髪型を維持するようにしていて、今もセミロングのままだ。

「とりあえず、座ろうか」
「そうだね」

 楓の席は私の右隣だ。
 当然のことながら彼女は非常にモテる。同級生はもちろん、先輩や後輩からも告白されている。

「私にラブレターのことを言うけど、楓だって似たようなものじゃない?」
「まぁ、そう言われると弱いよねぇ。私もいつも断っているし。たはは……」

 つやのある髪の毛、その毛先をくるくると指で回しながら、苦笑いを浮かべる楓。

「でもしょうがないんだー。付き合いたいと思わないし。今までそう思った人もいないからねぇ」
「せっかく楓は可愛いのに、もったいないね」
「ふふ、ありがと! あやも可愛いよ?」

 楓はそう言って、魅力的な笑みを浮かべる。
 この子は私のことを『あや』と呼ぶ。最初は『彩花』だったけど、いつの間にかそうなっていた。
 それにしても、付き合いたいと思わない、かぁ。
 私は、類が生きていたときは、彼と付き合いたいと思っていた。今となっては叶わない夢物語。だからこそ、これからの未来――誰かと付き合いたいという気持ちは一切ない。今も昔も、ずっと彼しか見ていない。
 それでも何回断っても告白してくる人はいて、正直うざいと思ってしまう。
 皆、『試しに誰かと付き合ってみればいいじゃん?』と言ってくる。でも、楓だけは私の気持ちをわかってくれて、『誰とも付き合わないっていう選択も、それはそれでいいんじゃない? あやの人生だからね』と言ってくれる。
 しばらく二人で雑談していると、先生が教室にやってきてホームルームが始まった。
 そしてそれが終わっても、担任の先生は教室を出て行かず、なぜかこちらにやってきた。明らかに視線が私に向いていることから、何か用事があるらしい。
 私の目の前まで来た担任が言う。

「放課後、三者面談のことで天童に話がある。授業が終わっても帰らないで教室に残っていてくれ」
「はい」

 そういえばもうそんな時期なんだ。将来のこと……私の小さい頃からの夢は、類のお嫁さんになることだった。今となってはそれは叶わないから、どうしようかなぁ。
 まぁ、今の段階で深く考えてもしょうがない。特にしたいこともないし。
 そんなこんなで授業が進み、昼休みは楓と一緒にご飯を食べる。
 ウインナーを咀嚼そしゃくした後、楓に話しかける。

「あっ、今朝両親に旅行のこと聞いたんだけど、一応オッケーだった」
「おー! やったね、あや! 私も行けるからさ、二人でぱーっと遊ぼうね」
「うん」

 楽しい昼休みはすぐに終わり、午後の授業に突入した。
 それも類のことを考えていたら、あっという間だ。うーん、全然授業聞いてなかったなぁ。まぁいいか。
 そんな能天気な感じで、授業が終わった後も楓と一緒に教室で雑談していた。視線を周囲に向けると、残っている生徒はまだいて、皆私たちのように楽しく話している。
 そのうちにドアが開いて、先生が教室に入ってきた。

「天童、残ってもらって悪かったな。ちょっと場所を変えるから着い――」
『キーーーーン』

 担任の言葉をさえぎり、甲高く耳障みみざわりな音が教室内に鳴り響いた。
 それと同時に、幾何学きかがく的な模様が天井付近の空間に浮かび上がる。
 教室にいた全員が全員、何が起きたのかわからず、騒いでいる人が多数と、放心状態の人が少し。私と楓は二人とも無言で、その光り輝く模様に目を奪われていた。
 私の脳裏には『まさかライトノベルみたいに異世界に行くのかな?』なんてバカらしい考えが浮かんできていたけど……徐々に眩暈めまいがしてきて、目を開けていられなくなる。
 そして激しい頭痛に襲われ、意識が途切れた――


 ◆ ◆ ◆


 アースの世界にある八つの国の中の一つ、ステアニア帝国。圧倒的な戦力を有し、広大な大陸の三分の一をも支配する強国だ。
 ステアニア帝国の皇帝レオン・フォン・ステアニアは、生まれながらの支配者であり、物心ついた頃から自国をより大きくするためにどうすればいいのか、常に考えを巡らせていた。
 彼が皇帝に即位してから早一〇年。数年越しでさまざまな策を練り上げてきたレオンは、他国へ多数の間者を放っていた。
 そうやって集めた情報を精査した結果、とんでもない事実が判明する。
 それは――エレンガルド神聖教国には、代々教皇のみに伝えられる、〈異世界召喚の儀式〉と呼ばれる秘中の秘の術法がある、というものだ。
 この儀式は、にえを捧げることでアースではないどこかの世界から、無理やり人を呼び出すものであるらしい。
 呼び出された異世界人にはさまざまなスキルが付与され、中には世の中を平定する程の強さを手に入れられる素質すら与えられる者もいるそうだ。
 また、はるか昔に神より授けられたと言い伝えられてきたこの術だが、とある理由から未だに使われたことがないという。
 これをなんとか手に入れたいと考えたレオンは、圧倒的な武力を背景にした交渉の末、エレンガルド神聖教国との間に不可侵条約を結ぶ。その対価として、〈異世界召喚の儀式〉という至高の術法を受け取ることに成功する。
 そしてレオン・フォン・ステアニアの勅命の下、早速この術法を実行すべく、さまざまな準備が進められていった。
 儀式に必要な術式を展開できる神官団がステアニア帝国に派遣され、にえとなる一〇〇〇人の奴隷も用意されるなど、全てが整った運命の日。
 帝都スタラバヤにある帝城の中の、どこか神聖さが感じられる非常に大きな広間において、おごそかな雰囲気の中――白い服を着た男性がその場にいる者に声をかける。

「それでは始めましょう。皆さん用意はいいですね?」

 幾何学的な模様が描かれた魔法陣の上には、隷属の首輪をはめられた奴隷たちが所狭しと押し並べられている。

「コリン大司教様、準備は整いました」
「ご苦労様です。では開始としましょう」

 大司教は深呼吸をしてから、また口を開く。

「贄を捧げ、世界を繋ぐ橋を架ける。はるか彼方に存在せし者たちよ、アースの世界に降り立ちたまえ! エレンガルド様の力をもって今こそ顕現けんげんせよ! 魔法陣よ魂を喰らえ! 〈異世界召喚の儀式〉」

 彼の言葉が終わると同時に、魔法陣がまばゆい光を放つ。
 そしてその上にあった奴隷たちの身体は、服や隷属の首輪も含めて半透明に変化し、存在が希薄になっていく。
 しばらくして輝きが収まった頃、魔法陣の上に奴隷たちの姿はなかった。
 ……代わりに、一〇〇人程の見慣れぬ姿の人々が横たわっていた。
 ちょうど、ルイとエレノアがミドガル王国の王都ミドリアに到着した日のことであった。



《1 Aランク試験と狂気の男》

 俺――ルイはまどろみから徐々に自分の意識が覚醒していくのを感じた。
 ゆっくりまぶたを開くと、今日も左腕にエレノア、右腕にマリアがくっついて寝息を立てているのが見える。
 このマリアと出会ってからもう三か月か……今の俺は幸せだな。
 そんなことを考えながら腕に伝わる柔らかい感触をしばらく堪能たんのうしていると、エレノアのまぶたが徐々に開いていく。
 寝惚ねぼまなこのエレノアが口を開く。

「ご主人様、おはよう……なの……です……」
「おはよう。起こしちゃったか?」

 まだまだ眠たいようで、目をこすり、言葉もおぼつかないエレノア。
 こういうときは尻尾を握るといい反応をするんだよな。そう思い、エレノアの尻尾をにぎにぎした結果――

「ひいぃぃ! 朝からダメなのです!」



 怒られるのはわかっていたので、甘んじて受け止めようとしたら、今の声でマリアが目を覚ます。
 表情から察するに、彼女は少し不機嫌だ。

「あー。朝から二人でいちゃいちゃしてずるいぃ。僕も入れてよ!」

 そう言いながらマリアは俺にかぶさってきた。ついでにエレノアも。
 反撃として二人を抱きしめたら、そのまま流れで可愛い恋人たちを朝から可愛がることに。
 そんなこんなで始まった朝は、気が付いたら昼になっていた。
 うん、少し自重しないとダメだな……


 ◇ ◇ ◇


 朝飯を抜いてしまった俺たちは、宿屋の女将おかみに頼んで用意してもらった昼飯を食べる。
 食事中は、今日行くつもりのAランク冒険者試験について話し合った。
 この試験があるため、他の予定は入れていない。まあ、予定といってもいつもしていることは、デート、ギルドの依頼をこなす、のんびり宿屋で休む、のどれかだ。
 ここしばらく、俺たちはこのミドリアの街で仲良く依頼をこなし、冒険者ランクを上げてきた。その甲斐かいあって、今現在は三人ともBランクになっている。
 スタートが違うため、俺とエレノアだけ先にAランク試験の資格を得たのだが、どうせなら全員一緒に受けたほうがいいと、マリアのランクポイントが貯まるのを待っていた。
 その間、俺とエレノアのランクポイントは無駄になることなく仮ポイントとして貯まっている。これは冒険者ギルドにおいて、割りとメジャーなシステムみたいだ。
 それにしても、出会ったときと比べてエレノアもマリアもなかなか強くなった。
 周りにバレて大騒ぎになるのを避けるため、現在二人のステータスとスキルは全て隠蔽いんぺいしてある。


 名前:エレノア
 性別:女 種族:獣人族 年齢:15
 レベル:52(ステータスとスキルは隠蔽中)
 称号:大食い犬娘・ルイの忠犬・ルイの寵愛を受けし者・Bランク冒険者
 HPヒットポイント:6845/6845 MPマジックポイント:2981/2981
 筋肉:1345 耐性:1053 敏捷:1147
 器用:608 魔力:292 精神:542
 スキル

【特殊スキル】

 ステータス増強Lv3・スキル成長速度アップLv4・ステータス成長速度アップLv5・取得経験値アップLv5・経験値共有Lv4

【武器・身体スキル】

 ウェポンマスターLv3・フィジカルマスターLv3

【魔法スキル】

 マジカルマスターLv1

【その他】

 状態異常耐性Lv2・精神耐性Lv2・シックスセンスLv4・探知Lv5・解体Lv6・奉仕Lv5・生活魔法


【フィジカルマスター】

〈最大HP上昇〉〈HP回復速度アップ〉〈身体強化〉〈超再生〉の効果。
 スキル〈創造〉により〈最大HP上昇〉〈HP回復速度アップ〉〈身体強化〉〈超再生〉を統合すると〈フィジカルマスター〉となる。
 スキルレベルは統合されたスキルの平均値になる。
 統合されているうちのどのスキルを使っても熟練度が増えるため、スキルレベルが上がりやすい。


【マジカルマスター】

〈最大MP上昇〉〈MP回復速度アップ〉〈魔力操作〉〈詠唱破棄〉の効果。
 スキル〈創造〉により〈最大MP上昇〉〈MP回復速度アップ〉〈魔力操作〉〈詠唱破棄〉を統合すると〈マジカルマスター〉となる。
 スキルレベルは統合されたスキルの平均値になる。
 統合されているうちのどのスキルを使っても熟練度が増えるため、スキルレベルが上がりやすい。


【状態異常耐性】

 毒、麻痺、石化、腐敗に耐性を得る。
 スキル〈創造〉により〈毒耐性〉〈麻痺耐性〉〈石化耐性〉〈腐敗耐性〉を統合すると〈状態異常耐性〉となる。
 スキルレベルは統合されたスキルの平均値になる。
 統合されているうちのどのスキルを使っても熟練度が増えるため、スキルレベルが上がりやすい。


【シックスセンス】

〈危機察知〉〈直感〉の効果。
 スキル〈創造〉により〈危機察知〉〈直感〉を統合すると〈シックスセンス〉となる。
 スキルレベルは統合されたスキルの平均値になる。
 統合されているうちのどのスキルを使っても熟練度が増えるため、スキルレベルが上がりやすい。


 名前:マリア・フォン・フォール
 性別:女 種族:エルフ族 年齢:16
 レベル:46(ステータスとスキルは隠蔽中)
 称号:家出王女・フォール王国の第二王女・元毒舌娘・ルイの寵愛を受けし者・Bランク冒険者
 HP:2180/2180 MP:8782/8782
 筋肉:323 耐性:436 敏捷:436
 器用:660 魔力:1192 精神:1351
 スキル

【特殊スキル】

 ステータス増強Lv2・スキル成長速度アップLv4・ステータス成長速度アップLv5・取得経験値アップLv5・経験値共有Lv4

【武器・身体スキル】

 槍術Lv6・弓術Lv8

【魔法スキル】

 全属性魔法Lv3・マジカルマスターLv4

【その他】

 状態異常耐性Lv2・精神耐性Lv2・危機察知Lv5・直感Lv5・解体Lv4・奉仕Lv3・生活魔法


 俺と同様、エレノアとマリアにも統合系のスキルを覚えさせた。
 しかし〈創造〉スキルは一日に一回だけ使用可能、そして〈ウェポンマスター〉は十一個のスキルを統合するため、覚えるのに十二日も要してしまう。
 また、デメリットは日数以外にもある。それは、新しく創ったスキルはレベルが1になってしまうということだ。例えばエレノアに〈ウェポンマスター〉を覚えさせないで〈短剣術〉のままで上げていたら、今頃レベル7程度になっていたんじゃないかな。マリアの〈風魔法〉と〈全属性魔法〉にしてもそうだ。
 が、そんなデメリットより非常に強力というメリットが目立つ。先行投資として、思い切って決断したのだった。今後も統合できるスキルはどんどんそうしていきたい。
 そして今、二人の鑑定結果を見て思う――これならAランク試験も余裕だろう、と。
 そんな考え事をしていたら、いつの間にかエレノアもマリアも昼食を食べ終わっていた。
 二人にかされ、俺たちはAランク試験を受けるために冒険者ギルドへと向かった。


 ◆ ◆ ◆


 先ほどからいらつきが止まらない俺――タイラと、同僚のリューとコーネリアは、ミドリアにある宿屋の一室で話し合っていた。
 三人とも、隠密性に優れた黒いフード付きローブを着用している。
 リューはエルフの中では珍しいタイプで、筋肉質で鍛えられた体躯。
 コーネリアはエルフ族に多く見られる端整な顔立ちながら、いつも通りに無愛想だ。

「マリア姫様を捜し始めて六か月……ようやく見つけたわね……」

 コーネリアが疲れ切った表情のままそう言うと、リューもため息をついてからそれに続く。

「ああ、本当にようやくだぜ。なんとか無事に連れ戻したいものだ」

 それから、マリア姫様捜索隊の隊長である俺も口を開く。その声は自覚できる程低くなっている。

「マリア姫様が大人しく帰参してくれることはないと思う……姫様を気絶させるのと馬車に運ぶのはコーネリアがやってくれ。さすがに男の俺たちがマリア姫様の肌に触るのは躊躇ためらわれるからな」
「ええ、わかったわ。あと、私が集めた情報だと、マリア姫様は冒険者パーティを組んでいて、今日Aランク試験におもむくみたい」
「パーティのことは俺も調べた。構成は人族の男と獣人族の女が一人ずつ。マリア姫様はこの人族の男とよく密着しているという……」

 それを聞いて思わず、目の前にあるテーブルの端を握りつぶしてしまいそうになり、静かな空間に『ミシミシ』と乾いた音が響く。
 自分の中に宿る狂気にそのまま身をゆだねたくなるのを我慢しながら、俺は再度口を開く。

「まず間違いなくその男がマリア姫様の想い人だ……ランドルフ陛下は、現場に判断を任せてくれると言っていた。さてさて、ゴミ掃除をマリア姫様の前でやるか、もしくは策を練って姫様と離してからやるか……お前らはどっちがいい?」

 その男に対するありったけの殺意を己の中で燃え上がらせながら、二人にそう問いかける。
 我らがフォール王国においても美少女として有名なマリア姫様。あの方に想い人がいるかもしれない――そう考えるだけではらわたが煮えくりかえる想いだ。
 しかし、今は冷静に任務を遂行しなければならない。

「んー、俺はごちゃごちゃやるのは面倒だ。Aランク試験が終わり次第、襲ってしまえばいいんじゃないか? 試験で疲れ切っていそうだしな」
「私は……そうねぇ、策があるに越したことはないわね。だけど多分、陛下が言っていた言葉の意味――あれはマリア姫様の前で殺せってことだと思うの」

 リューも同意を示す。


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