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私のお店・3
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店は流行っている、と言える程ではないが鈴が一人で食べていける程度には客が入る。
「うーん、景気悪いねえ」
「まあ、新聞に書いてある限りじゃねえ」
新聞の紙面を睨んでしかつめらしく宣う近所のおばちゃんに鈴は苦笑する。
ブックカフェを名乗る以上、本棚いっぱいに本を並べてはいるが概ね鈴の個人的趣味なので、実際にそれらを手に取る人は少ない。マンガの棚を端から浚っていく中高生達がいるくらいで、彼等が来る放課後までは新聞や週刊誌などの雑誌に目を通す人がぽつぽついる程度だ。全国紙三紙と地域で発行される二紙を並べれば、手に取ってくれる人は一定数いる。新聞屋には微妙な顔もされたが、その辺の他の飲食店でも新聞は並べているので、勘弁してもらえた。
雑誌にしても本屋にいい顔はされなかったが、鈴が雑誌以外に毎月書籍をごっそり買い込むので目を瞑ることにしてくれたらしい。ちなみに古本屋も活用するが、巻数をまとめて揃えるには本屋に注文する方が早かった。
そうして経費で本を買える、のが鈴には一番嬉しいかもしれない。何しろ現状書籍購入費が店の維持費では一番比重が大きい。食材は近所にあるJAのグリーンセンターや通販で業務用を購入したりと抑制しているが、本に関しては全く自重していない。元々学生時代から本代だけは惜しまなかった。友人達のようにゲームやアニメにはさほど注ぎ込まなかったが、その分が本に向いた。小説、マンガを問わぬ『本読み』であったのだ。
店内の一画には趣味の本棚があるが、あまり気がつく人はいない。本を手に取る人もマンガや雑誌・新聞以外は話題になったベストセラーくらいが関の山だ。
客層に合わせて話題作や或いは名作の大活字版も置いているが、その辺自分でもお座なり感が否めない。ただリクエストで置いた写真集はそこそこ人気だ。写真集、と言ってもアイドルとか人物写真ではなく、風景や動物の写真が主。これが一定数の人気があって新作を購入すると早速皆で楽しそうに眺めている。
「可愛いわねえ」
「子猫はねー、あーふわふわー」
子猫や子犬の写真集はまず外れない。実際には飼えないけど眺めるのは好き、という層に安定した人気がある。
今も掘り炬燵席で額を寄せ合ってお喋りしている近所のおばあちゃん達は幸せそうだ。
「あらー、とよさん一人なんだし飼えばいいじゃない」
「やあねえ、一人だからこそよー。自分が倒れたら面倒見るのがいないからねー。みやちゃんこそお父さんいるんだから飼えばどうよ」
「自分の面倒自分で見れない亭主が、生き物の世話なんか出来る訳ないわよー」
きゃっきゃとなかなか楽しげだ。声量もかなり大きいが、平日午前中は他に客もないので多少は大目に見てしまう。それに案外にこの手のおばちゃん達は回りの空気を読んでいて、本を読みたい客がいる時はあまり騒がない。全員にそれが出来るとは言わないが、その辺を弁えないのは少数派だ。
「うーん、景気悪いねえ」
「まあ、新聞に書いてある限りじゃねえ」
新聞の紙面を睨んでしかつめらしく宣う近所のおばちゃんに鈴は苦笑する。
ブックカフェを名乗る以上、本棚いっぱいに本を並べてはいるが概ね鈴の個人的趣味なので、実際にそれらを手に取る人は少ない。マンガの棚を端から浚っていく中高生達がいるくらいで、彼等が来る放課後までは新聞や週刊誌などの雑誌に目を通す人がぽつぽついる程度だ。全国紙三紙と地域で発行される二紙を並べれば、手に取ってくれる人は一定数いる。新聞屋には微妙な顔もされたが、その辺の他の飲食店でも新聞は並べているので、勘弁してもらえた。
雑誌にしても本屋にいい顔はされなかったが、鈴が雑誌以外に毎月書籍をごっそり買い込むので目を瞑ることにしてくれたらしい。ちなみに古本屋も活用するが、巻数をまとめて揃えるには本屋に注文する方が早かった。
そうして経費で本を買える、のが鈴には一番嬉しいかもしれない。何しろ現状書籍購入費が店の維持費では一番比重が大きい。食材は近所にあるJAのグリーンセンターや通販で業務用を購入したりと抑制しているが、本に関しては全く自重していない。元々学生時代から本代だけは惜しまなかった。友人達のようにゲームやアニメにはさほど注ぎ込まなかったが、その分が本に向いた。小説、マンガを問わぬ『本読み』であったのだ。
店内の一画には趣味の本棚があるが、あまり気がつく人はいない。本を手に取る人もマンガや雑誌・新聞以外は話題になったベストセラーくらいが関の山だ。
客層に合わせて話題作や或いは名作の大活字版も置いているが、その辺自分でもお座なり感が否めない。ただリクエストで置いた写真集はそこそこ人気だ。写真集、と言ってもアイドルとか人物写真ではなく、風景や動物の写真が主。これが一定数の人気があって新作を購入すると早速皆で楽しそうに眺めている。
「可愛いわねえ」
「子猫はねー、あーふわふわー」
子猫や子犬の写真集はまず外れない。実際には飼えないけど眺めるのは好き、という層に安定した人気がある。
今も掘り炬燵席で額を寄せ合ってお喋りしている近所のおばあちゃん達は幸せそうだ。
「あらー、とよさん一人なんだし飼えばいいじゃない」
「やあねえ、一人だからこそよー。自分が倒れたら面倒見るのがいないからねー。みやちゃんこそお父さんいるんだから飼えばどうよ」
「自分の面倒自分で見れない亭主が、生き物の世話なんか出来る訳ないわよー」
きゃっきゃとなかなか楽しげだ。声量もかなり大きいが、平日午前中は他に客もないので多少は大目に見てしまう。それに案外にこの手のおばちゃん達は回りの空気を読んでいて、本を読みたい客がいる時はあまり騒がない。全員にそれが出来るとは言わないが、その辺を弁えないのは少数派だ。
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