11 / 19
きゃっちあんどいーと1
しおりを挟む
薄切り食パンにキャベツとタルタルソースをたっぷり乗せ、斜めにフライを重ねる。もう一枚パンを乗せてフライと対角線になるよう包丁を入れれば、魚フライのタルタルサンドイッチの出来上がりだ。
付け合わせは彩りを考えてトマトとブロッコリー。肉体労働の男性には物足りないかもしれないが、女性にはそれなりにお腹にたまりそうな軽食だ。
「……いただきます」
後から来店した女性の方が先にそれに手を伸ばした。手掴みに対して躊躇いがないのは、貴族から離れてある程度時間が経っているからか、こうした料理だと納得しているからか。
かじりついた彼女の口許からざくりといい音がする。柔らかいパンに揚げたての衣、瑞々しいキャベツ。中身はまだ十分熱い、はふはふとその熱を逃がしながら彼女は目を輝かせている。
「……美味しい……!こんな内陸の田舎で、こんな美味しい魚を食べられるなんて、思ってもみなかったわ……!」
手掴みでサンドイッチにかじりついていても下品な印象を与えない辺り、この女性は骨の髄まで上品な所作が染みついているのかもしれない。
そんな躾は受けているはずもない男は、と言えば。おそるおそるつまみ上げたそれにかじりついたかと思えば一瞬固まった。
連れの女性の方はその反応を横目で伺いながら自分もサンドイッチに噛みつく。端っこの、多分フライがない辺りだったが、それでも目を瞬かせる。
「お、おいしい……」
勢いづいてぱくぱく食べてくれる、それが鈴にとっては嬉しい。 それはこちらの世界でもあちらでも同じ事だ。
「お気に召したのなら良かったです」
付け合わせは彩りを考えてトマトとブロッコリー。肉体労働の男性には物足りないかもしれないが、女性にはそれなりにお腹にたまりそうな軽食だ。
「……いただきます」
後から来店した女性の方が先にそれに手を伸ばした。手掴みに対して躊躇いがないのは、貴族から離れてある程度時間が経っているからか、こうした料理だと納得しているからか。
かじりついた彼女の口許からざくりといい音がする。柔らかいパンに揚げたての衣、瑞々しいキャベツ。中身はまだ十分熱い、はふはふとその熱を逃がしながら彼女は目を輝かせている。
「……美味しい……!こんな内陸の田舎で、こんな美味しい魚を食べられるなんて、思ってもみなかったわ……!」
手掴みでサンドイッチにかじりついていても下品な印象を与えない辺り、この女性は骨の髄まで上品な所作が染みついているのかもしれない。
そんな躾は受けているはずもない男は、と言えば。おそるおそるつまみ上げたそれにかじりついたかと思えば一瞬固まった。
連れの女性の方はその反応を横目で伺いながら自分もサンドイッチに噛みつく。端っこの、多分フライがない辺りだったが、それでも目を瞬かせる。
「お、おいしい……」
勢いづいてぱくぱく食べてくれる、それが鈴にとっては嬉しい。 それはこちらの世界でもあちらでも同じ事だ。
「お気に召したのなら良かったです」
1
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説
身分を隠して働いていた貧乏令嬢の職場で、王子もお忍びで働くそうです
安眠にどね
恋愛
貴族として生まれながらも、実家が傾いてしまったがために身分を隠してカフェでこっそり働くことになった伯爵令嬢のシノリア・コンフィッター。しかし、彼女は一般人として生きた前世の記憶を持つため、平民に紛れて働くことを楽しんでいた。
『リノ』と偽名を使って働いていたシノリアの元へ、新しく雇われたという青年がやってくる。
『シル』と名乗る青年は、どうみても自国の第四王子、ソルヴェート・ステラムルにしか見えない男で……?
巻き込まれ召喚~影が薄いのに神ですか!?~
水魔沙希
ファンタジー
影が薄い事で、他人に認識されない事が多い、白石陽翔。
昼食を外で食べている最中に近くで、学校一イケメンと言われる、桐生大翔が近寄ってくる。タイミングが悪いことにその際、大翔の足元に魔法陣が発動しているのに陽翔は気付く。けれども、すでに時遅し。
陽翔も魔法陣吸い込まれてしまうのであったー・・・。
婚約破棄された公爵令嬢のお嬢様がいい人すぎて悪女になれないようなので異世界から来た私が代わりにざまぁしていいですか?
すだもみぢ
ファンタジー
気が付いたら目の前で唐突に起きていた誰かの婚約破棄シーン。
私は誰!?ここはどこ!?
どうやら現世で塾講師だった私は異世界に飛ばされて、リリアンヌというメイドの娘の体にのり移ったらしい。
婚約破棄をされていたのは、リリアンヌの乳姉妹のメリュジーヌお嬢様。先妻の娘のお嬢様はこの家では冷遇されているようで。
お嬢様の幼い頃からの婚約者はそんなお嬢様を見捨てて可愛がられている義理の姉の方に乗り換えた模様。
私のすべきことは、この家を破滅に導き、お嬢様の婚約者に復讐し、お嬢様を幸せにすることですね?
※成り上がりストーリーですが、恋愛要素多めです。ざまぁは最後の方です。
※主人公はあまり性格よくありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
アサの旅。竜の母親をさがして〜
アッシュ
ファンタジー
辺境の村エルモに住む至って普通の17歳の少女アサ。
村には古くから伝わる伝承により、幻の存在と言われる竜(ドラゴン)が実在すると信じられてきた。
そしてアサと一匹の子供の竜との出会いが、彼女の旅を決意させる。
※この物語は60話前後で終わると思います。完結まで完成してるため、未完のまま終わることはありませんので安心して下さい。1日2回投稿します。時間は色々試してから決めます。
※表紙提供者kiroさん
ヒビキとクロードの365日
あてきち
ファンタジー
小説『最強の職業は勇者でも賢者でもなく鑑定士(仮)らしいですよ?』の主人公『ヒビキ』とその従者『クロード』が地球の365日の記念日についてゆるりと語り合うだけのお話。毎日更新(時間不定)。
本編を知っていることを前提に二人は会話をするので、本編を未読の方はぜひ一度本編へお立ち寄りください。
本編URL(https://www.alphapolis.co.jp/novel/706173588/625075049)
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる