4 / 19
私のお店 1.5
しおりを挟む
それでも半年ほど経てば、ようやく近所のおばあちゃん達やマンガ目当ての中学生達が顔を出して行くようになった。或いはランチを食べに来る主婦達も、常連と言えるくらいに。
「鈴ちゃん今日はお昼何があるの?」
「おにぎりはおかかと鮭で、小鉢は茄子の田舎煮です。お魚は鰯の生姜炊き、お肉はポークジンジャー」
「じゃあおにぎりちょうだい」
「わたし焼きおにぎりね」
おにぎりセットは四百円、お魚やお肉のセットは主菜にご飯、汁物と小鉢が付いて五百円。カレーも常備しているが、これと焼きおにぎりは業務用でカレーはレトルト、焼きおにぎりは冷凍だ。
「鈴ちゃんは一人でお店やってたら大変じゃない?」
「そんなに忙しくないですからねー。人を雇うほどは余裕もないし」
自分一人食っていける程度であれば、それで十分。鈴は大した欲はないし今の生活に満足している。
おばあちゃん達は暇である以上に寂しいのだろう、ご飯を頼んだときはすごくゆっくり食べて時間をつぶしている。そして仲間内でお喋りしたり。時間制なのでそこそこお金はかかるが、その辺は席料として納得しているようだ。
仮にもブックカフェと名乗って開店したのだし、目の効かなくなった彼女達のために、大活字本や写真集を書架に入れてみた。要望があってもテレビを入れる気にはならなかった、その代わりのように。幸い世界遺産や動物の写真集などの評判は悪くなく、楽しんでもらえているようで何より。
だからまさか、他のところに出店してみないかと誘われるとは思ってもみなかったのだ。増してそれが、自分の生まれ暮らした世界とは違う、所謂『異世界』になど。
「鈴ちゃん今日はお昼何があるの?」
「おにぎりはおかかと鮭で、小鉢は茄子の田舎煮です。お魚は鰯の生姜炊き、お肉はポークジンジャー」
「じゃあおにぎりちょうだい」
「わたし焼きおにぎりね」
おにぎりセットは四百円、お魚やお肉のセットは主菜にご飯、汁物と小鉢が付いて五百円。カレーも常備しているが、これと焼きおにぎりは業務用でカレーはレトルト、焼きおにぎりは冷凍だ。
「鈴ちゃんは一人でお店やってたら大変じゃない?」
「そんなに忙しくないですからねー。人を雇うほどは余裕もないし」
自分一人食っていける程度であれば、それで十分。鈴は大した欲はないし今の生活に満足している。
おばあちゃん達は暇である以上に寂しいのだろう、ご飯を頼んだときはすごくゆっくり食べて時間をつぶしている。そして仲間内でお喋りしたり。時間制なのでそこそこお金はかかるが、その辺は席料として納得しているようだ。
仮にもブックカフェと名乗って開店したのだし、目の効かなくなった彼女達のために、大活字本や写真集を書架に入れてみた。要望があってもテレビを入れる気にはならなかった、その代わりのように。幸い世界遺産や動物の写真集などの評判は悪くなく、楽しんでもらえているようで何より。
だからまさか、他のところに出店してみないかと誘われるとは思ってもみなかったのだ。増してそれが、自分の生まれ暮らした世界とは違う、所謂『異世界』になど。
1
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

ある平民生徒のお話
よもぎ
ファンタジー
とある国立学園のサロンにて、王族と平民生徒は相対していた。
伝えられたのはとある平民生徒が死んだということ。その顛末。
それを黙って聞いていた平民生徒は訥々と語りだす――

過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。

【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。



品がないと婚約破棄されたので、品のないお返しをすることにしました
斯波@ジゼルの錬金飴②発売中
ファンタジー
品がないという理由で婚約破棄されたメリエラの頭は真っ白になった。そして脳内にはリズミカルな音楽が流れ、華美な羽根を背負った女性達が次々に踊りながら登場する。太鼓を叩く愉快な男性とジョッキ片手にフ~と歓声をあげるお客も加わり、まさにお祭り状態である。
だが現実の観衆達はといえば、メリエラの脳内とは正反対。まさか卒業式という晴れの場で、第二王子のダイキアがいきなり婚約破棄宣言なんてするとは思いもしなかったのだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる