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私のお店 1.5

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それでも半年ほど経てば、ようやく近所のおばあちゃん達やマンガ目当ての中学生達が顔を出して行くようになった。或いはランチを食べに来る主婦達も、常連と言えるくらいに。
「鈴ちゃん今日はお昼何があるの?」
「おにぎりはおかかと鮭で、小鉢は茄子の田舎煮です。お魚は鰯の生姜炊き、お肉はポークジンジャー」
「じゃあおにぎりちょうだい」
「わたし焼きおにぎりね」
おにぎりセットは四百円、お魚やお肉のセットは主菜にご飯、汁物と小鉢が付いて五百円。カレーも常備しているが、これと焼きおにぎりは業務用でカレーはレトルト、焼きおにぎりは冷凍だ。
 「鈴ちゃんは一人でお店やってたら大変じゃない?」
 「そんなに忙しくないですからねー。人を雇うほどは余裕もないし」
 自分一人食っていける程度であれば、それで十分。鈴は大した欲はないし今の生活に満足している。
おばあちゃん達は暇である以上に寂しいのだろう、ご飯を頼んだときはすごくゆっくり食べて時間をつぶしている。そして仲間内でお喋りしたり。時間制なのでそこそこお金はかかるが、その辺は席料として納得しているようだ。
仮にもブックカフェと名乗って開店したのだし、目の効かなくなった彼女達のために、大活字本や写真集を書架に入れてみた。要望があってもテレビを入れる気にはならなかった、その代わりのように。幸い世界遺産や動物の写真集などの評判は悪くなく、楽しんでもらえているようで何より。

だからまさか、他のところに出店してみないかと誘われるとは思ってもみなかったのだ。増してそれが、自分の生まれ暮らした世界とは違う、所謂『異世界』になど。
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