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いらっしゃいませ・2

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そう言って腰を下ろした二人の前のテーブルに置いたのはどうやら菓子の類いを盛った鉢らしかった。らしい、というのはその中身が彼等には見慣れないものでおそらく菓子なのだろうと何となく推察される程度のものだったから。
 焼いた生地の中心に赤いジャムを置いたもの、白いクリーム様のものを挟んだものは甘く、十分に熱い茶と合わせて口にすると疲れが取れるようだった。
それに安堵して、今度は見慣れない菓子もつまんでみる。こちらも焼かれて硬く、けれど表面はつるりと光沢を帯びていた。香りも甘いとは言えずむしろ塩っぱい香ばしさ。
 口にしてみればその香りの通り塩っぱくて、けれどぱりっと砕けるその感触も快い。甘みはないがお茶や或いは軽い酒のつまみとしても良さそうだ。
 「……これは美味いな」
 「ええ。普通に売っているものとは違うようだけど、とても美味しい」
ぽつぽつとそれをつまみながら言葉を交わしている二人の前に、皿が出された。
 思わずその皿を見てそれから顔を見た店主は、その幼さを残す顔に笑みを浮かべて彼等を見返した。
 「それではこちら、ホットサンドです。熱いので、お気を付けて」
 置かれているのは焦げ色の三角形をした、どうやらパンの中身らしいものだ。普通のパンは皮が固くこんな風にはならない。
おそるおそる手に取ると確かに熱を持っていた。しかし「気をつけて」と言われるほどの熱さでは、と思いながらかぶりついたフレディは悲鳴を上げる。
 「熱っ」
 「ああ、中身。中身が熱いんで!」
 口にした途端、中から熱いものがあふれてきた。見ればチーズがそこからとろけている。
 「熱い……けれど、美味しいわ」
フレディの様子を教訓に用心しながら小さくかじりついたリアンナが感心する。そうしながら吹き冷まして熱心にかじっている様子を見ると、確かに味も気に入ったのだろう。
ずいぶんと柔らかいパンの中身はそのとろけるチーズと燻製肉ハム、少しばかりの野菜が入っている。熱くてとても美味しい。
 夢中になって殆ど無言のまま、二切れずつそれを食べ終えると人心地付いた気になった。
 「……ご馳走様。幾らだ?」
 「お二人で合わせて二百ポンです」
 問いに素早く切り替えされて頷く。安いとは言えないが高くもない。適正か、といえばむしろ思ったよりは安いくらいだ。
 「では、これで」
 「美味しかったわ、ありがとう。……あなた、一人でこの店を切り盛りしているの?」
フレディの置いた硬貨を受け取り、リアンナの問いに苦笑する。
 「ええ、そんなに忙しくはないですし。意外と村が近いんですよ。わざわざ寄るのは基本的に旅の人です」
 「……そう、なのか?」
その答えにはフレディが困惑した。
 「街道をもうちょっと行ったら村が見えますよ。一応ギルドの支部もあるし、宿屋もある」
 冒険者ギルドは、どんな辺境の村でも一応は置かれているしそれがある以上宿屋の一軒くらいはあるものだ。そこまで至らなければそこはまだ村ではなく集落にすぎないことになる。
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