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セラフィアータ伯爵曰く

その旅路に祝福を

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「……わかった。気をつけて、いきなさい」
あっさり頷いた彼にセフィロスはぱっと表情を輝かせた。我が子ながら眩しい程の美貌だ。
「ありがとうございます!」
「って、おじ様、セフィロス、え、ええー」
対照的にミカエラは困惑の声をあげる。父子を見比べていっそ途方に暮れた様子。
「どうかしましたか、ミカエラ様?」
「……おじ様、私はもう公爵令嬢ではありません。お父様に公爵家とは縁を切ってもらって、ただの冒険者です。……セフィロスを連れてっちゃっていいのですか?」
どうも彼女としては、伯爵が息子を止めてくれると思っていたらしい。爵位を継がないとは言え騎士団に見込まれた成長株だ、引き留めるのは当然と考えるのは別に特異でもない。
ただ伯爵にとってミカエラは信頼に値する人間だし、彼女の父兄もだ。そしてセフィロスには、負い目を感じてもいる。
「この子には、昔から我慢をさせてきました。その子が、自分で選んだ路を行きたいというのなら、是非助けになりたいのですよ」
穏やかに微笑んで告げると、セフィロスは面映ゆいような、照れ臭そうな顔をした。普段表情を動かさない彼のそんな表情は、年相応に可愛げがある。
幼い頃の彼は、それなりに表情豊かな元気のいい子どもだった。それが、父親を伯爵家に連れていかれ、その後伯爵家に引き取られてきた時には既にかなり表情が固くなっていた。決定打は義母になった女性だろう。『この見た目なら幾らでも引取り手が見つかるわ、出来るだけ高値をつけてもらわなくちゃ』等と本人の前で言い放っていたらしい。それを咎めても証拠があるのかと開き直り、果ては実家から借りた金も返さないのに文句を言うな、と荒れ狂う彼女には、真面目な兄が失踪するのもわからないではないと思っていたのだが。身勝手な思い込みで彼を『処分』していたことが明るみに出て、実家の子爵家は取り潰し、本人も既に処刑されている。
まだ領地は栄えているとは言い難いが跡取りの義子は勉学に鍛錬にと励んでおり、伯爵も時には帰って話をし、その成長を見守っている。代官として領地を治めている者達とも関係は良く、彼等も跡取り息子の教育に加わってくれていた。この先、領地は任せられるようになっていくだろう。その領地にも爵位にも関わりない実子は好きにさせてやりたい。
「それにしても、フェルナンドやフェリクス様に良く許してもらえたね?」
笑いかけるとミカエラの方が困った顔をする。もちろん父や兄の許可を得るのが大変だったのは否定しない。
「時間を掛けましたもの。お二人とも、快く送り出していただきました」
「うん、ミカエラ様にはそうでしょうね」
視線を向けられたセフィロスはしかし真顔で応じる。
「いろいろお話はしましたが、最終的には納得していただきました。条件は付けられましたけど、これから一つずつこなしていきます」
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