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セラフィアータ伯爵曰く

大人もそれなりに変わる

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「話は、どの程度ご存知でしょうか」
おずおずとミカエラが尋ねる。
立場的にはもっと尊大になってもおかしくないのに、彼女は幼いうちから礼儀を弁えていた。子どもと侮る相手には、逆にやり返すこともして退ける逞しいところもある。
「一通りは伺いました。……第二王子もね、なかなか問題の多い子だったようだから」
そして実は王宮では、彼以上にその母親が問題になっていた。元々無理矢理既成事実を作り上げた女性で、その言われようからわかる通り第二王子のパトリックは本当に国王の子どもなのかさえ疑う声が根強い。もちろん当のパトリックは知らないだろうし、側妃の実家も火消しに回っているが。
今回のことでその疑念は再燃し、彼を王族から外してかつ母親の側妃も謹慎として修道院送り、という処分に反対意見はほぼ出なかった。これまでにパトリックだけでなく母親やその実家もかなり傲慢に振る舞っていたこともある。権力はそれなりにあるがいずれも人望がない。
「トーラスや他の子は、それぞれの家から私にも詫びを言われて。……二人とも、大変だったね」
どちらも、実年齢よりしっかりした子どもだとは知っている。それでもあらぬ疑いをかけられたりそれをはね除けるには、負荷がかかる。
それを伯爵は実体験として承知しているから、子ども達を極力助けてやりたい。
彼自身、学生時代は苦労した。剣術にこそ優れたものの、爵位を継ぐあてはなく当時騎士団の一部から嫌われていたのだ。簡単に言えば容姿と腕前に嫉妬されていたので、同級生のフェルナンドと王太子(現国王)の援助が無ければどうなっていたことか。
兄が継いだ伯爵家のもめ事にも手を貸してもらえた、その借りを直接返すことは難しい分、他の者のために出来る限りの助力はする。巡り巡って彼等の助けになると信じて。それがセラフィアータ伯爵の、密かな決意。
「父上、今日は一つお願いがあって参りました」
姿勢を正して切り出すセフィロスにミカエラも倣う。
「言ってご覧」
「伯爵家は義兄上が継がれるので、問題はないと思いますが。私は騎士団に入るのではなく、ミカエラと共に市井に降りて冒険者として生きたく望みます」
きっぱり宣言するセフィロスは、普段口数の少ない分熱のこもった口調だった。明るい紫の瞳も、常より煌めいて見る者をはっとさせる。
幼い頃から彼には意に添わぬ暮らしをさせることが多かった、と父親である伯爵もわかっている。だからこそその望みを叶えてやりたい。
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