前世は仕事のやりすぎによる過労死を経験したので次の人生ではのんびり生きたい

幼少編

私の努力

どんな人間を演じるかも決めたことだし、早速試してみよう。
（この考えがまとまるまで、およそ五秒)
「そうですかー、じゃあ私のことはそう呼んでくださーい。私もあなたのことをアルシェイド様とお呼びしますー」
間抜けっぽく言葉の端を伸ばしてみた。
演じている私が言うのもなんだが、ちょっとむかっとするな。
自分の行動にイラつく。
しかし、私の頑張りは灰塵に帰した。
「そうかでは、グレーティエ様、改めましてよろしくお願いします」
と丁寧な口調で言い、腰を曲げてお辞儀をしてきた。
つい私も彼につられて、
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
そう答えながら、幼女がするには違和感を覚えてしまうほど綺麗な礼をしてしまった。
このときアルシェイドの口がにやりと動いたかは誰もしらない。

初対面から一か月が過ぎた。
私は心の底からうざい女の子を装って彼と接している。
両親がいるときは当たり障りのない程度の態度でいながら、彼の前ではあほの子のように演じた。
誰か私の苦労を誉めてください。切実に。
彼は何が面白いのか、私があほの子を演じているときは終始、生暖かい目で私を見ている。
私は彼のそんな視線に思うところがあった。
もうこればれてない？と。
人生積んだ気がするのは私の気のせいなのかな。
むしろ気のせいであってほしい。
気のせい万歳。
変なふうに壊れそうだ。