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最高の褒美

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  僕がベッドから降りられたのは、五日後の事だった。
  兄に散々組み敷かれて嬲られた身体は、一日では回復しなかった。そして回復しないまま、また夜になると兄がベッドに潜り込んできて「カッツェ、可愛いね…。良い子だ」とキスと愛撫をされ続け、兄を拒否することなど嘘でも出来ない自分は、流されるまま致してしまっていた。

  さすがに四日もその状態が続くとフレイが「レーヴェ様!カッツェ様を衰弱死させますよ!」と止めに入ってくれたのでなんとか助かった。兄は舌打ちをしてフレイを睨みつけて居たが、僕のぐったりした様子にようやく攻め手を納めてくれた。

「カッツェ~……大丈夫?大丈夫??」

「セティ。少し腰がダルいくらいで……もう大丈夫ですよ」

  従者になってからも良い意味で気安く話しかけてくれる。まだベッドの住人の僕に、セティはベッドに顎を乗せてコテンと首を傾げて可愛らしく尋ねてくる。こういうのを素で出来る所にフレイはやられたんだろうなぁと納得した。

  セティの頭を優しく撫でると、えへへとニコニコ笑う。

「メイドや他の使用人が全然来ないのですけど…セティが任されたのですか?」

  ここ5日ほど、カッツェの世話をしてくれるのは兄とセティのみだ。シャワーですら兄が手伝ってくれていて、そのまま流されて風呂場でも致したことは言うまでもない。

「カッツェのね?色気が凄いから、出入りはぼくだけ許されたんだよ」

「……いろ、け?」

「うん! あんまりそういうのが分かんないぼくでもため息ついたカッツェがえっちなのは分かる!」

  確かに何度かため息をついた覚えはある。兄が残す悦を身体から逃がそうとしたのだ。
こないだからなんだか急に芙蓉の精霊だの、えっちだの……色々言われて困る。兄にだって「カッツェの感度が良すぎて困る」と真剣な顔して言ってきた。

「でも良かった……カッツェが無事に帰ってきて……ぼく、ぼくが、渡した手紙のせいで……っ」

  セティは笑っていたはずなのに瞳を徐々に潤ませていく。ワナワナと感情が昂り、ひく、としゃくり上げてわんわんと泣き出した。

「セティのせいではないですよ……お兄様も言っていたでしょう? 」

「でも……」

「セティに手紙を渡したメイドは解雇したと聞きましたよ。ミラー伯爵の手引きだったようですし、セティは利用されただけです。そしてその後の行動にもセティに責任はありませんよ」

「……うぅ……も、もうぼくに黙ってどっか行かないで、役に立たないかもしれないけど……一人にしないで…!」

「ごめんなさい、セティ…、もう二度としません。お兄様にもこっぴどく叱られてしまいましたので」

  セティは、うううぅと泣きながら抱きついてくる。針のむしろのような生活をしてきたセティには、ずっと家族のように接してきた。
  セティの為と言いつつ、何も伝えなかったのはただの独りよがりだったかもしれないと深く反省した。

「……レーヴェ様がカッツェに怒るの?なんだか信じられないや」

  へらりと泣き笑いのセティの涙を指で救いながら苦笑する。

「僕も驚きました。とても怖いんですね、お兄様を怖いと言っていたフレイの気持ちが少し分かった気がします」

「フレイ兄様は昨日もため息ついてたの。『早くカッツェ様が執務室に来てくれると助かる』って」

「……お兄様は八つ当たりするようなお方ではないのですが、フレイに当たってるのでしょうか……」

  一緒に首を傾げる。セティもどうやら深い意味はわかって無さそうだ。

「カッツェ」

  寝室の扉が開いて名を呼ばれた方を見ると兄、レーヴェが立っていた。

「お兄様」

「起き上がれるようになったんだね。セティ。紅茶を準備してくれる?」

「はぁい!」

  ぴょんと立ち上がってパタパタと走って行く姿は可愛らしくて微笑ましい。なんだかんだ僕はセティが働く姿に癒されている。
  兄が僕のベッドに近づき、腰を下ろすと僕の頬に手が触れる。手の温かさが心地よく、頬ずりするように首を傾げると兄の目が優しく慈愛に満ちたものへ変わった。

「休憩中ですか?」

「ああ。じゃないとセスとフレイがここに来るのを許さない」

「ふふ…今まで休んでいたせいですね」

「カッツェと抱き合うのに四日じゃ足りないくらいだがな」

  ちゅ、と唇にキスを落とされ、起き上がっていた背を優しくベッドに戻される。

「ん……っ、お兄様……お仕事は」

「午前中頑張った兄にご褒美をくれても良いだろう?」

「……ぁ、ん…」

  首元や鎖骨にキスを落とされ、手は兄の手によって恋人繋ぎでベッドに縫い付けられている。この四日でどう兄を受け入れるか覚えてしまった身体は簡単にその気になってしまう。

「お兄様……ぁ、ああ…んっ、ふ……ぁ」

「乳首もすっかり勃ち上がってるね、期待した?」

  こくりと素直に頷く。顔が微かに火照っているのが分かる。
  嬉しそうに兄が乳首の近くで微笑むと、息がかかるその感触だけでぶるりと震えた。

「ごめんね、カッツェ。このまま君を貪りたいけど一旦ストップだ」

  心も身体もすっかり抱かれる体勢になっていたのに、兄がスっとベッドから離れ、僕の服の合せを戻してしまった。セティが紅茶を持って部屋に入ってきたからだった。

「お待たせしましたぁ」

「ああ、ありがとう。セティ、フレイも休憩中だからそっちへ行くといいよ」

「えっ、でも……」

「こっちは私がカッツェの世話をするから」

  ニコリとセティに微笑む。セティは少し戸惑っていたが、フレイに会えると分かるとソワソワしだして「ありがとうございます!」と部屋を出ていった。

「……お兄様、ぁ」

「やはりセティは良い子だね。あとは礼儀マナーが身につけば完璧だ。さ、カッツェ。続きを…」

「はい…、お兄様……んっ…ん、ぅ……」

  すぐにまたベッドに逆戻りさせられ、深いキスをされた。兄の舌でぬるりと僕の口腔を弄り、まだ情事の後の倦怠感が残る身体を開かれていった。


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