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雪が降っている。
馬車の轍以外は雪が積もり始めていた。
空は曇っているが、まだ昼の時間。
気温が低く、陽も出ていない。雪は溶けずに新雪に積もる。


「シュニィ。走ったら危ない」
「うるさい。良いんだよ」


馬車から降りると、素っ気ない返事をするシュニィは、新雪に足跡を付けるのが楽しいのか走り出した。
足跡は私のより一回り小さい。私はシュニィがつけた足跡を崩さないように足跡を避けて歩いた。


「ハル、早く」
「はいはい」


彼の後を追う。2人とも寒さで鼻が赤くなっている。
かじかむ手を彼に差し出すと、シュニィは鼻と同じくらい頬を染めて私の手を握った。
彼の肌は雪のように白い。赤くなるとすぐわかる。素直じゃない彼に色をつけて表情を教えてくれる肌が好きだ。


「シュニィ、好きだよ」
「……うるさい」


堪えられず、想いを伝えても彼の口はひねた返事をしてくる。けれど、彼の耳が赤くなっているのは、寒さだけが理由じゃない。


「明日は、家に行って……話してくるよ。シュニィ、待ってて」
「……ん」


彼はひとつ頷くと、手を握る力を強くした。


「ちょっと待って」
「?」


彼は私をある地点で待たせると、店の中に入っていった。雪で店の名前は見えないが、美味しそうな匂いがしてくる。

シュニィは店の中でトレイを持っていくつかの商品を選び、トングで掴んでいた。シュニィは店から出てくると、小さな袋を抱えていた


「ん」


袋の中から1つ、クロワッサンが出てくる。素っ気なく渡されたそれは、まだ出来たてなのかほんのり暖かかった。


「ありがとう」
「……ん」


彼はやっぱり素っ気ない返事をした。けれど、繋いだ手は暖かかった。





シュニィを傷つけたのは、自分だ。

後悔しても、雪は溶けない。
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