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番外編
追求 side ソーニャ
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ソーニャ=クロテットは一度もドジを踏まなかった食事だったことに心底驚いた。
生まれてきて初めてだったと言っても過言ではない。小さなミスは確実にするはずなのに、何もしなかった。
つまづいてもジェドに支えてもらったとはいえ転ぶこともなかったし、水もこぼさなければ、忘れ物もせずお店に取りに帰ることもなかった。
ターニャやエメ、ジニーに口酸っぱく「気をつけて」と言われても絶対にドジを踏んでいたソーニャが、一度もドジをしないなんて信じられなかった。
ジェドは一体どんな魔法を使ったのだろうかと考えてしまうほどだった。
その話をターニャにすると、少し呆れたようにため息をつかれてしまった。
「何言ってるの。私たちはソーニャに気づいてもらわないと意味がないからって失敗するまで見届けてるけど、ジェドさんはきっと先回りしてソーニャがドジしないようにしてくれたのよ。魔法っていうなら気遣いの魔法ね」
ターニャに指摘され、ズーンと落ち込んだ。
ジェドからしてみればそんなの面倒臭いことこの上ないではないか。ほとんど介護みたいなものだ。
なのに奢ってもらって帰りも自宅まで送ってもらってしまった。
「けど私たちでもソーニャのドジを完璧に把握できたことはないわ。よほどジェドさんは気遣いができる人なのね。すごいわ」
「そ、そんなに?え、僕そんなにひどいの…?」
「自分でもひどいのはわかってるでしょう?ソーニャは不快に思わなかったのね」
「不快?」
ターニャがいう意味が分からなかったので聞き返すと、ターニャは呆れ顔から一転して喜んでいた。
「本当にジェドさんはすごいわね。不快に思わせずさりげなくソーニャのドジを先回りするなんて!ソーニャ!もう結婚しなさい!」
「ええ!?なんでそうなるの?!」
「あんたのドジをたった二日でそこまで完璧に把握して対応してくれる人なんてもうこの世に現れないと思った方がいいのよ!」
とにかくひどい言われようだった。そして今まで見たこともないほどターニャが興奮している。
ターニャはそれほどまでにソーニャの面倒見係が苦痛だったのだろうか。
いや、苦痛に決まっている。ソーニャがターニャの立場なら三日で挫折する自信がある。
しかしまだ付き合ってもいないのに、結婚など考えられなかった。
そもそもソーニャはノーマルだ。男性を恋愛対象に見たことはなかった。
ジェドもソーニャをそういう対象に見ていないようだったので不快に思わなかったのだ。
いつもターニャの恋人からくる視線のようなものはジェドから一切感じ取れなかった。
「で、でもジェドさんは女性だと思って紹介されたんだよ?僕じゃ無理じゃない…?」
「何言ってるのよ!そんなこと言ってたらあんなイイ男すぐに取られるわよ!?」
「でも僕男の人と付き合ったことない…!」
「エメから聞いたわよ!ジェドさんは男もイケるって!大丈夫よ!」
何が大丈夫なのだろうか。
ターニャは今、自分も女性と付き合えと押し付けられているのと同等だとわかっているのだろうか。
「でも、そもそも好きかどうかも分からないのに付き合えない!」
そうソーニャが叫ぶように言うと、ターニャはピタリと動きを止めた。
「え?あんた、そんだけされてて好きにならないの?」
「た、ターニャは惚れっぽすぎるよ…普通好きにならないよ…」
ソーニャの言葉にターニャが今度は珍しく落ち込んだ。
ターニャはとにかく尽くしたがりでダメな男を見るとどうしても手を差し出したくなってしまう、厄介な性格の持ち主だった。自分自身でもよく分かっており、しかも惚れっぽいので最悪に拍車をかけている。
いつもは思慮深い性格なのに、ダメな男を見るだけで知能指数が下がるところだけは、親もほとほと困っていた。
いつもソーニャの面倒を見てくれているターニャを落ち込ませてしまい、心が痛くなってくる。
「ターニャ…ごめんね。言いすぎたよ」
「いいのよ。私も押し付けて悪かったわ…はぁ…」
「ちゃんと僕も考えるよ…でもジェドさんに僕と結婚してメリットは何もないと思うから、難しいと思うけどね…」
聞いた話では、向こうは男爵家の一人息子。
男にモテる要素があったとしても、ソーニャは男である。
その上いくら気遣い上手とはいえ、ずっと面倒見続けるのは大変だ。
ソーニャは自分のこのドジは一生治らないと思っている。
ジェドにとってソーニャと結婚するほどの魅力は何もないのだ。
「ディランが紹介したいって言った時は、これしかないって思ったのよ…」
「ディランさんに一度も会った事がなかったから、流石に難しかったんじゃないかな」
「それもそうね。やっぱりちゃんと会って為人を見ないと分からないものね。私も反省したわ」
大きくため息をついた姉、ターニャに申し訳なさを感じつつも、ソーニャはこの件は本当に終わりにしていいものなのか悩んだ。
ソーニャの全てを把握して、全てを理解してくれる人など存在しないと思っていた。
双子のターニャだって呆れるくらいなのに。もう一生そんな人は現れないと思ってた。
なら、もう一度ちゃんと考えるべきなのではないか。
「…ターニャ。僕、もう一回考えるよ」
「ソーニャ?」
「本当は、ターニャがいつも羨ましかった。誰かを好きになってるターニャが」
ソーニャがポツリポツリと呟く言葉にターニャは視線を逸らさずに聞いてくれている。
「男の人とか、女の人とかじゃなくて…僕が好きな人かどうか、ちゃんと考えるよ」
「ソーニャ…!」
ターニャは目を潤ませて、僕を抱きしめてくれた。いつも面倒を見てくれていた姉が、少しだけ小さく感じた。
生まれてきて初めてだったと言っても過言ではない。小さなミスは確実にするはずなのに、何もしなかった。
つまづいてもジェドに支えてもらったとはいえ転ぶこともなかったし、水もこぼさなければ、忘れ物もせずお店に取りに帰ることもなかった。
ターニャやエメ、ジニーに口酸っぱく「気をつけて」と言われても絶対にドジを踏んでいたソーニャが、一度もドジをしないなんて信じられなかった。
ジェドは一体どんな魔法を使ったのだろうかと考えてしまうほどだった。
その話をターニャにすると、少し呆れたようにため息をつかれてしまった。
「何言ってるの。私たちはソーニャに気づいてもらわないと意味がないからって失敗するまで見届けてるけど、ジェドさんはきっと先回りしてソーニャがドジしないようにしてくれたのよ。魔法っていうなら気遣いの魔法ね」
ターニャに指摘され、ズーンと落ち込んだ。
ジェドからしてみればそんなの面倒臭いことこの上ないではないか。ほとんど介護みたいなものだ。
なのに奢ってもらって帰りも自宅まで送ってもらってしまった。
「けど私たちでもソーニャのドジを完璧に把握できたことはないわ。よほどジェドさんは気遣いができる人なのね。すごいわ」
「そ、そんなに?え、僕そんなにひどいの…?」
「自分でもひどいのはわかってるでしょう?ソーニャは不快に思わなかったのね」
「不快?」
ターニャがいう意味が分からなかったので聞き返すと、ターニャは呆れ顔から一転して喜んでいた。
「本当にジェドさんはすごいわね。不快に思わせずさりげなくソーニャのドジを先回りするなんて!ソーニャ!もう結婚しなさい!」
「ええ!?なんでそうなるの?!」
「あんたのドジをたった二日でそこまで完璧に把握して対応してくれる人なんてもうこの世に現れないと思った方がいいのよ!」
とにかくひどい言われようだった。そして今まで見たこともないほどターニャが興奮している。
ターニャはそれほどまでにソーニャの面倒見係が苦痛だったのだろうか。
いや、苦痛に決まっている。ソーニャがターニャの立場なら三日で挫折する自信がある。
しかしまだ付き合ってもいないのに、結婚など考えられなかった。
そもそもソーニャはノーマルだ。男性を恋愛対象に見たことはなかった。
ジェドもソーニャをそういう対象に見ていないようだったので不快に思わなかったのだ。
いつもターニャの恋人からくる視線のようなものはジェドから一切感じ取れなかった。
「で、でもジェドさんは女性だと思って紹介されたんだよ?僕じゃ無理じゃない…?」
「何言ってるのよ!そんなこと言ってたらあんなイイ男すぐに取られるわよ!?」
「でも僕男の人と付き合ったことない…!」
「エメから聞いたわよ!ジェドさんは男もイケるって!大丈夫よ!」
何が大丈夫なのだろうか。
ターニャは今、自分も女性と付き合えと押し付けられているのと同等だとわかっているのだろうか。
「でも、そもそも好きかどうかも分からないのに付き合えない!」
そうソーニャが叫ぶように言うと、ターニャはピタリと動きを止めた。
「え?あんた、そんだけされてて好きにならないの?」
「た、ターニャは惚れっぽすぎるよ…普通好きにならないよ…」
ソーニャの言葉にターニャが今度は珍しく落ち込んだ。
ターニャはとにかく尽くしたがりでダメな男を見るとどうしても手を差し出したくなってしまう、厄介な性格の持ち主だった。自分自身でもよく分かっており、しかも惚れっぽいので最悪に拍車をかけている。
いつもは思慮深い性格なのに、ダメな男を見るだけで知能指数が下がるところだけは、親もほとほと困っていた。
いつもソーニャの面倒を見てくれているターニャを落ち込ませてしまい、心が痛くなってくる。
「ターニャ…ごめんね。言いすぎたよ」
「いいのよ。私も押し付けて悪かったわ…はぁ…」
「ちゃんと僕も考えるよ…でもジェドさんに僕と結婚してメリットは何もないと思うから、難しいと思うけどね…」
聞いた話では、向こうは男爵家の一人息子。
男にモテる要素があったとしても、ソーニャは男である。
その上いくら気遣い上手とはいえ、ずっと面倒見続けるのは大変だ。
ソーニャは自分のこのドジは一生治らないと思っている。
ジェドにとってソーニャと結婚するほどの魅力は何もないのだ。
「ディランが紹介したいって言った時は、これしかないって思ったのよ…」
「ディランさんに一度も会った事がなかったから、流石に難しかったんじゃないかな」
「それもそうね。やっぱりちゃんと会って為人を見ないと分からないものね。私も反省したわ」
大きくため息をついた姉、ターニャに申し訳なさを感じつつも、ソーニャはこの件は本当に終わりにしていいものなのか悩んだ。
ソーニャの全てを把握して、全てを理解してくれる人など存在しないと思っていた。
双子のターニャだって呆れるくらいなのに。もう一生そんな人は現れないと思ってた。
なら、もう一度ちゃんと考えるべきなのではないか。
「…ターニャ。僕、もう一回考えるよ」
「ソーニャ?」
「本当は、ターニャがいつも羨ましかった。誰かを好きになってるターニャが」
ソーニャがポツリポツリと呟く言葉にターニャは視線を逸らさずに聞いてくれている。
「男の人とか、女の人とかじゃなくて…僕が好きな人かどうか、ちゃんと考えるよ」
「ソーニャ…!」
ターニャは目を潤ませて、僕を抱きしめてくれた。いつも面倒を見てくれていた姉が、少しだけ小さく感じた。
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