【完結】薄倖文官は嘘をつく

七咲陸

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番外編

疎い side ソーニャ

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ソーニャ=クロテットは紹介を受けたジェド=フォルトナーに謝罪という名の食事に誘われていた。

紹介を受けた日、ジェドはソーニャを女だと思い込んでいた。
ソーニャは良く女性に間違われることがあるのであまり気にしていなかったのだが、ジェドはそうじゃなかったらしく飲み会中も何度も謝られた。

ただ、ソーニャ的には女性を紹介されたのだと思っていたジェドに申し訳なさを感じたのだ。

エメはすぐにディランに怒った。同性婚が珍しくないこの世の中で、紹介する時の性別を言わないのは良くないと。
しかしディランも初対面だった。
流石のディランもここまで中性的な男が来る予想はしていなかったのだと言った。到着してからは服装も男性だしジェドも勘違いはしないだろうと踏んでそのままにしていたと。
するとエメはそこを伝えていなかったのは自分の落ち度だったと認めて、二人ともソーニャとジェドに謝罪した。

その上で、ディランは再度ジェドにもソーニャにもお互いを勧めてきた。

自分の目利きが悪くなければ、確実に相性は良いはずだと。
エメも慌てて、ディランの性格は最悪だが目利きは本当に確かであると推す。

ソーニャもジェドも、どうしたものかと顔を見合わせてしまった。

とりあえず、一度食事に行ってみてはどうか、とディランに言われたのを皮切りに、ジェドが改めて謝罪したいからぜひ行ってほしいと頼まれた。
断ることもできたが、紹介したエメの顔に泥を塗るのも、ディランがそこまで自分を推してくれていることも、ジェドの謝罪したいという気持ちも無碍にすることはできなかった。

そんな訳で、今日はそのジェドとの食事になるのだ。

「今日だろ?ジェドと食事。場所は大丈夫か?」

エメは仕事が終わって心配してくれていたのか経理部まで顔を出してくれた。それだけじゃなく、姉のターニャも心配で来てくれていた。

「はぁ、まさかこんなうっかりがあるなんてね…」
「いやもう俺が悪かった…ソーニャを女と間違える人にここしばらく会ってなかったせいで…」
「エメだけが悪いとは思わないわ…ただね、はぁ…」

ターニャは顎に手を当ててため息をついた。珍しくソーニャに呆れているのではなく、状況に落胆しているようだった。
ターニャも実は期待していたのだ。
親と同様、ターニャも恋愛話一つ聞かないソーニャに不安を感じ、またさらにターニャ自身もなかなか結婚できないことから流石にどちらかが結婚すれば親も少しは安心してくれるだろうと。
ディランの腕は、ダメ男を捕まえてばかりいたエメが今の恋人と長く続いていることから確かだし、問題ないと思っていたからだ。

しかしまさかこんな落とし穴があったとは誰も予想していなかった。

ソーニャ自身は悪くないと理解していても、こうも周りから謝罪と落胆をされるとなんだかソーニャが悪かった気がしてくる。

エメは顔に手を当ててターニャとソーニャにまた謝ってくる。
ソーニャ的にはとりあえず今日の食事が過ぎ去れば、エメの面目も保たれるだろうと思って承諾したので、そう気に病まないでほしいと思う。

「あの、とにかく今日は楽しんできますから。エメさん、もう気にしないでください…」
「迷子になるなよ。もういっそ店まで送るか?」
「ああ…いや、ジェドさんが迎えにきてくれるとおっしゃったので、お言葉に甘えることにしました」

ソーニャがそういうと、二人ともびっくりしているのか目をひん剥いた。

「え?迎え?ここまで?待ち合わせじゃなくて?」
「迷子になると聞いたから…と言ってました」
「あら。まぁ…まさか、ひょっとするのかしら?」

エメもターニャもヒソヒソ何か言っている。ソーニャはよく聞こえなくて首を捻った。
そんな様子のソーニャに気づいたのか、二人は恋愛に疎いソーニャのために説明をしてくれた。

「謝罪のためだけなら、食事だけ奢って終わりよ。わざわざ迎えになんか来ないわ」
「で、でも本当に謝罪だって…」
「どんだけ距離あると思ってんだよ、王城から魔法師団まで。隣とかいうレベルじゃないんだぞ。しかもその後店まで行くんだろ?手間と時間をかけてきてくれるって、その気がないならよっぽどのお節介じゃないとしてくれねぇよ」

そう言われてみると、迎えに来ると言ったジェドに安請け合いしてしまったソーニャの心が痛む。
店の場所を聞いても全くピンと来なかったソーニャはその申し出が有難かったので簡単に是非と言ってしまったのだ。

しかし二人はそんなソーニャを責めたりしないので今度はソーニャが驚く番だった。

「俺が言える立場じゃねーことは分かってる。初日は最悪だったけど、今日はできる限り真っ白な気持ちで行って来てくれ。絶対楽しめるぞ」
「ええ、きっと楽しいわよ。貴方の事、もうそこまで理解してくれているなら安心したわ」
「え、ちょ、ええ?」

二人が一体どういう意味で言っているのかよく分からず、ソーニャは疑問符を飛ばして魔法師団の玄関に背中を押されるのだった。
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