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同情 side コリン
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コリン=イェルリンは次の日、何となく違和感を感じた。久しぶりのおひとり様を満喫しているというのに、どうしてかしっくり来ないのだ。
どういう訳か分からないが、何とか準備を終えて、今日はイヴに会いに行こうと決めた。
イヴ=スタームはイヴ=グランティーノとなったとエメから聞いた。かなりの金持ち貴族の所へ嫁いだと聞いたから、働かなくてもいいのではないか。そう思ったが、イヴは労働自体嫌いじゃなさそうだったし、忙しいのも楽しそうにしていたな、と思い出す。
イヴに魔法で連絡を取ると、たまたまイヴも休みだったようで、グランティーノ家で会うこととなった。
「…………は?」
グランティーノ家に着いたコリンは開いた口が塞がらなかった。
頭がおかしくなったか視力がおかしくなったのかもしれない。
「……これが、家?」
広い。敷地も広いが、建物がデカすぎる。しかも横にデカい。
「…………どこの貴族と結婚すればこんなとこに住めるの……」
コリンも一応子爵の家系の生まれだ。しかしまさか、こんな。財力の差を見せつけられればそんなこと死んでも言いたく無くなる。
門に着くと、馬車に乗せられた。庭を馬車で移動しないと多分時間がかかりすぎる。そして家の前にたどり着くとイヴ自ら出迎えてくれた。
「コリンさん!お久しぶりです!」
イヴは艶のあるプラチナブロンドは以前より輝きを増しており、イエローダイヤモンドも煌めいている。
明らかにイヴは幸せそうであった。
「……イヴ、凄いとこに嫁いだんだね」
「挨拶よりそっちですか。自由な感じが変わらないですね」
イヴはコリンの呆気に取られている顔を見て苦笑した。イヴは無理もない、と思った。イヴですら最初この家に来た時は圧倒されたのだから。
「ここ、カシムの家なんです。本邸は別で」
「…………こんなに広いのに?」
「あ、やっぱりコリンさんも思いますよね。良かった。私と同じ反応で」
こんなに広いのに本邸じゃないとは。
イヴに応接室に案内されて豪奢なソファに座らされた。
「そんなことより、コリンさんが元気そうで良かったです。サシャさんが来るかと思ってたのですが」
「サシャは来させられないでしょ。トラブルになるのが目に見えてる」
「まぁ、あの美しさじゃ……今回どうしてコリンさんは来たんですか?」
「…………イヴは驚くと思うんだけど。私今、シルヴァと付き合ってて」
コリンは何となく恥ずかしくてモジモジと言った。しかしイヴから全くの無反応だったので、チラ、と顔を上げると目を剥いて時を止めていた。
「イヴ…?」
「……え?コリンさんが?シルヴァさんと??ええ?どうしてそんなことに?全然そんな感じなかったと思いますけど?え?」
本気で困惑しているイヴが、混乱したまま喋っている。
「……イヴが辺境を出る前くらいから、関係は持ってて」
「え?!」
「まだその時は付き合ってはなかったけど、まぁ、色々あって付き合うことになったんだよ」
「えええ?!」
イヴは驚きすぎて口をぽかんと開けたまま固まっている。
イヴに告白してきたシルヴァが、元上司のコリンと体の関係から恋人になったと聞いて頭を抱えている。
「つ、付き合った事とここに来た理由に一体どんな関係が……?」
そしてコリンは、元カレのジェドに説明したように、シルヴァの凶行を説明することとなった。
「……って感じで、我慢できなくて逃げ出したの!」
「し、シルヴァさんてそんな感じなんですか?えええ……」
イヴは『もしシルヴァの告白を受けていたらコリンの立場にいるのは自分だった』と思い至り、ゾッとした。
「あんな変態だと思わなかった!私は騙されたの!」
「そのプレイに何ヶ月も付き合ってるコリンさんが凄いです……よっぽど相性が良いんですね……」
「プレイ……」
そんな言われ方をすると益々シルヴァは変態だし、それに付き合ってるコリンも変態になった気分だった。
「でもシルヴァさんも元気そうで良かったです。むしろ生き生きとしてるじゃないですか」
「やめてやめて!今喧嘩してるんだから!」
「……喧嘩するんですね、コリンさん」
そっちの方が驚きです、とイヴはクスクス上品に笑った。
「コリンさん、いつも自分は蚊帳の外から見てるだけって感じだったのに。そんなふうに感情を表に出せる相手が見つかったんですね」
「私、そんなグレてる感じだった?」
「うーん…そう見せないようにしてる感じでしたね。シルヴァさんは凄いですね、コリンさんの殻を打ち破ったんですから」
イヴはニコニコ微笑んで、嬉しそうに言った。
「まぁ、愛はめちゃくちゃ重すぎますけどね」
「そこなんだよぉ!!!」
わっ、と泣いてみせると、イヴは哀れなものを見る目で同情してくれたのだった。
どういう訳か分からないが、何とか準備を終えて、今日はイヴに会いに行こうと決めた。
イヴ=スタームはイヴ=グランティーノとなったとエメから聞いた。かなりの金持ち貴族の所へ嫁いだと聞いたから、働かなくてもいいのではないか。そう思ったが、イヴは労働自体嫌いじゃなさそうだったし、忙しいのも楽しそうにしていたな、と思い出す。
イヴに魔法で連絡を取ると、たまたまイヴも休みだったようで、グランティーノ家で会うこととなった。
「…………は?」
グランティーノ家に着いたコリンは開いた口が塞がらなかった。
頭がおかしくなったか視力がおかしくなったのかもしれない。
「……これが、家?」
広い。敷地も広いが、建物がデカすぎる。しかも横にデカい。
「…………どこの貴族と結婚すればこんなとこに住めるの……」
コリンも一応子爵の家系の生まれだ。しかしまさか、こんな。財力の差を見せつけられればそんなこと死んでも言いたく無くなる。
門に着くと、馬車に乗せられた。庭を馬車で移動しないと多分時間がかかりすぎる。そして家の前にたどり着くとイヴ自ら出迎えてくれた。
「コリンさん!お久しぶりです!」
イヴは艶のあるプラチナブロンドは以前より輝きを増しており、イエローダイヤモンドも煌めいている。
明らかにイヴは幸せそうであった。
「……イヴ、凄いとこに嫁いだんだね」
「挨拶よりそっちですか。自由な感じが変わらないですね」
イヴはコリンの呆気に取られている顔を見て苦笑した。イヴは無理もない、と思った。イヴですら最初この家に来た時は圧倒されたのだから。
「ここ、カシムの家なんです。本邸は別で」
「…………こんなに広いのに?」
「あ、やっぱりコリンさんも思いますよね。良かった。私と同じ反応で」
こんなに広いのに本邸じゃないとは。
イヴに応接室に案内されて豪奢なソファに座らされた。
「そんなことより、コリンさんが元気そうで良かったです。サシャさんが来るかと思ってたのですが」
「サシャは来させられないでしょ。トラブルになるのが目に見えてる」
「まぁ、あの美しさじゃ……今回どうしてコリンさんは来たんですか?」
「…………イヴは驚くと思うんだけど。私今、シルヴァと付き合ってて」
コリンは何となく恥ずかしくてモジモジと言った。しかしイヴから全くの無反応だったので、チラ、と顔を上げると目を剥いて時を止めていた。
「イヴ…?」
「……え?コリンさんが?シルヴァさんと??ええ?どうしてそんなことに?全然そんな感じなかったと思いますけど?え?」
本気で困惑しているイヴが、混乱したまま喋っている。
「……イヴが辺境を出る前くらいから、関係は持ってて」
「え?!」
「まだその時は付き合ってはなかったけど、まぁ、色々あって付き合うことになったんだよ」
「えええ?!」
イヴは驚きすぎて口をぽかんと開けたまま固まっている。
イヴに告白してきたシルヴァが、元上司のコリンと体の関係から恋人になったと聞いて頭を抱えている。
「つ、付き合った事とここに来た理由に一体どんな関係が……?」
そしてコリンは、元カレのジェドに説明したように、シルヴァの凶行を説明することとなった。
「……って感じで、我慢できなくて逃げ出したの!」
「し、シルヴァさんてそんな感じなんですか?えええ……」
イヴは『もしシルヴァの告白を受けていたらコリンの立場にいるのは自分だった』と思い至り、ゾッとした。
「あんな変態だと思わなかった!私は騙されたの!」
「そのプレイに何ヶ月も付き合ってるコリンさんが凄いです……よっぽど相性が良いんですね……」
「プレイ……」
そんな言われ方をすると益々シルヴァは変態だし、それに付き合ってるコリンも変態になった気分だった。
「でもシルヴァさんも元気そうで良かったです。むしろ生き生きとしてるじゃないですか」
「やめてやめて!今喧嘩してるんだから!」
「……喧嘩するんですね、コリンさん」
そっちの方が驚きです、とイヴはクスクス上品に笑った。
「コリンさん、いつも自分は蚊帳の外から見てるだけって感じだったのに。そんなふうに感情を表に出せる相手が見つかったんですね」
「私、そんなグレてる感じだった?」
「うーん…そう見せないようにしてる感じでしたね。シルヴァさんは凄いですね、コリンさんの殻を打ち破ったんですから」
イヴはニコニコ微笑んで、嬉しそうに言った。
「まぁ、愛はめちゃくちゃ重すぎますけどね」
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