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番外編
好きな瞬間
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アドルフの好きな瞬間は、例えばこんな朝のひとときだと思う。
「ほら。起きろって。ヴァレリ」
「んー……」
寝起きの悪い恋人を起こすのは何年経っても苦労する。けれど恋人ならそれも許せてしまうのだからアドルフも大概だ、と思ってしまう。
寝室は広い。まあ寝室以外も広いのだが、兎に角広い。こんな豪邸みたいな家は掃除するのも一苦労だし、建てるならもう少しコンパクトにして欲しかったのだが、『商会長がこじんまりした家に住んでたらどう思う?』と真面目な顔でヴァレリに尋ねられ、『……ケチなやつか実は儲かってないかと思う』と正直に答えた。つまりは負けた。
「ヴァーレリ、おいってば。今日は朝一で会議なんだろ?」
「ん゛ん゛ー…あどるふ……」
「なに……っ! んっ、んぅ……ふっ」
名を呼ばれ、顔をのぞき込むと後頭部を片手で抑え込まれた。ヴァレリに乗っかる形でキスをしてしまう。口は開いた状態だったのでそのまま深く口付けられ、ヴァレリの舌がアドルフの口内へ侵入してくるのを止めることは出来なかった。
「っぷは、ばか……朝からやめろよ」
「……あでぃ、もっかい」
「するかバカ。いいから起きろよ。仕事に行けなくしようとするな」
愛称で呼ばれ、寝ぼけ眼で強請られたって許しちゃいけない。
この男は少しでも隙を見せると徹底的に追い詰めてくるのだ。それは恋人であってもだ。
するりとヴァレリの身体から離れて寝台から降りると、ようやくヴァレリは身体を起こした。
「んー……はよ」
「ん。おはよ。顔洗ってこいよ」
「ん゛ー……」
「えっ!わ!」
まだ上半身を起こしただけの男に思い切り腕を引かれ、ベッドに逆戻りした。驚いて目を瞬かせていると、また深いキスをして両手を恋人繋ぎでホールドされてしまった。
「んぅ!んっ、……っ、ん……ぅ」
ぴちゃぴちゃと唾液の水音をわざとらしく立てるように舌を動かされる。上顎をなぞられるとゾワリと腰が疼くように感じてしまった。
付き合ってから七年。徹底的に隅々荒らされたこの身体は、一体どこをどう弄れば気持ちよくなるのかというのをアドルフ自身よりもヴァレリは知っている。
だからわざと少しだけ痛いくらいに舌を吸われると、もうアドルフの身体はすっかりその気になってしまうのだ。しかし、朝は一分一秒が勝負。ここで流される訳にはいかない。
「んっ……ヴァレリ、ダメだってば……っあん!」
「……きのーしたばっかだから、ふかふかだな……っと」
いつの間にか香油で濡らされたヴァレリの指が、完全に閉じきっていなかったアドルフのそこに簡単に入り込んでくる。流されてはいけないと思いつつも、ヴァレリの手管に慣らされた身体はアドルフの心よりも素直だ。
「やめ……!ばか!っ、まっ、ほんとに……っ、あああっ!」
アドルフがいかに身を捩って攻防を繰り広げても、一方的な戦いに勝ち目はない。ヴァレリは指をすぐさま抜いてそのグロテスクな色をする陰茎を挿入した。
「すっご……うわ。サイコー」
「ほんとお前ふざけんなばか!抜けっ……て、ば……っん、やっ…あ、あっ、ああっ!」
抜くには抜いてくれるが、そのまますぐに差し込んでこられてしまう。ぬかるむ中の気持ちよさに、ヴァレリからは「あ゛ー…寝起きに効くわ」と訳の分からない言動をされる。明らかにアドルフが翻弄されているのを楽しそうに見下ろしてくる。
朝から最悪だ。もっと最悪なのが、これをしてくるのが恋人のヴァレリで、最高に気持ちいいということだ。
「あー、ここな。ここ」
「はっ、や、あん、あ……っ!ヴァレ、りぃ…!」
「んー?ははっ、かーわい」
なにが可愛いだ。だらしなく喘ぐことしか出来ない男に向かって。
気分を良くしたのか、さらに男の腰使いはアドルフの良い所を的確にどちゅどちゅと穿つように動いてくる。
「あっ、だめ、それ、んっは、いっちゃ」
「はー、やべ。俺もすぐイきそう」
「! だめ、そ、外!あっ、中は……!やあっ…あ、んんん…っ!」
「一緒にシャワー浴びよ」
「ふっ、あ!ざけ……!ん、ん!~~~~っっ!!」
なけなしの理性で中出しを拒否するも、目の前の男は容赦なくアドルフの最奥に吐き出した。
「っは、あ、はぁ…、はぁ…ばか!ばか!俺も仕事なのに!」
「はー…さっ、今日も頑張りますか」
達したばかりの身体で上手く起き上がれないでいると、ヴァレリはヒョイッとアドルフを横抱きにしてベッドから降りた。
こうなったら責任を取ってもらわないと腹の虫が治まらない。ムッとしながらも恋人の首に腕を回した。
「シャワーしながら2回戦しよ。アドルフのことだから早めに起こしただろ」
「その為に起こした訳じゃない!しない、しないからな!」
「はいはい」
早く起こしたのは準備と朝食を食べてもらうためだ。断じて自分を食らい尽くされるためではない。
なんか前にもこんな事あったなぁ……なんて少し遠い目をして、ぐちゃぐちゃにされた責任を取るべくシャワーに向かう恋人の背中を抓った。
ちなみにアドルフはこの一連をシュリに愚痴ったら「アドルフって身内にはとてつもなく優しいもんね……朝から中に出すって、それ怒って実家に帰っても良いレベルだよ」と言われたり言われなかったり。
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何年経ってもらぶらぶですっていうのを書きたくなってしまいました……相変わらず完結詐欺ですみません。
突発的に書き上げたので至らないところがあったら申し訳ありません。
「ほら。起きろって。ヴァレリ」
「んー……」
寝起きの悪い恋人を起こすのは何年経っても苦労する。けれど恋人ならそれも許せてしまうのだからアドルフも大概だ、と思ってしまう。
寝室は広い。まあ寝室以外も広いのだが、兎に角広い。こんな豪邸みたいな家は掃除するのも一苦労だし、建てるならもう少しコンパクトにして欲しかったのだが、『商会長がこじんまりした家に住んでたらどう思う?』と真面目な顔でヴァレリに尋ねられ、『……ケチなやつか実は儲かってないかと思う』と正直に答えた。つまりは負けた。
「ヴァーレリ、おいってば。今日は朝一で会議なんだろ?」
「ん゛ん゛ー…あどるふ……」
「なに……っ! んっ、んぅ……ふっ」
名を呼ばれ、顔をのぞき込むと後頭部を片手で抑え込まれた。ヴァレリに乗っかる形でキスをしてしまう。口は開いた状態だったのでそのまま深く口付けられ、ヴァレリの舌がアドルフの口内へ侵入してくるのを止めることは出来なかった。
「っぷは、ばか……朝からやめろよ」
「……あでぃ、もっかい」
「するかバカ。いいから起きろよ。仕事に行けなくしようとするな」
愛称で呼ばれ、寝ぼけ眼で強請られたって許しちゃいけない。
この男は少しでも隙を見せると徹底的に追い詰めてくるのだ。それは恋人であってもだ。
するりとヴァレリの身体から離れて寝台から降りると、ようやくヴァレリは身体を起こした。
「んー……はよ」
「ん。おはよ。顔洗ってこいよ」
「ん゛ー……」
「えっ!わ!」
まだ上半身を起こしただけの男に思い切り腕を引かれ、ベッドに逆戻りした。驚いて目を瞬かせていると、また深いキスをして両手を恋人繋ぎでホールドされてしまった。
「んぅ!んっ、……っ、ん……ぅ」
ぴちゃぴちゃと唾液の水音をわざとらしく立てるように舌を動かされる。上顎をなぞられるとゾワリと腰が疼くように感じてしまった。
付き合ってから七年。徹底的に隅々荒らされたこの身体は、一体どこをどう弄れば気持ちよくなるのかというのをアドルフ自身よりもヴァレリは知っている。
だからわざと少しだけ痛いくらいに舌を吸われると、もうアドルフの身体はすっかりその気になってしまうのだ。しかし、朝は一分一秒が勝負。ここで流される訳にはいかない。
「んっ……ヴァレリ、ダメだってば……っあん!」
「……きのーしたばっかだから、ふかふかだな……っと」
いつの間にか香油で濡らされたヴァレリの指が、完全に閉じきっていなかったアドルフのそこに簡単に入り込んでくる。流されてはいけないと思いつつも、ヴァレリの手管に慣らされた身体はアドルフの心よりも素直だ。
「やめ……!ばか!っ、まっ、ほんとに……っ、あああっ!」
アドルフがいかに身を捩って攻防を繰り広げても、一方的な戦いに勝ち目はない。ヴァレリは指をすぐさま抜いてそのグロテスクな色をする陰茎を挿入した。
「すっご……うわ。サイコー」
「ほんとお前ふざけんなばか!抜けっ……て、ば……っん、やっ…あ、あっ、ああっ!」
抜くには抜いてくれるが、そのまますぐに差し込んでこられてしまう。ぬかるむ中の気持ちよさに、ヴァレリからは「あ゛ー…寝起きに効くわ」と訳の分からない言動をされる。明らかにアドルフが翻弄されているのを楽しそうに見下ろしてくる。
朝から最悪だ。もっと最悪なのが、これをしてくるのが恋人のヴァレリで、最高に気持ちいいということだ。
「あー、ここな。ここ」
「はっ、や、あん、あ……っ!ヴァレ、りぃ…!」
「んー?ははっ、かーわい」
なにが可愛いだ。だらしなく喘ぐことしか出来ない男に向かって。
気分を良くしたのか、さらに男の腰使いはアドルフの良い所を的確にどちゅどちゅと穿つように動いてくる。
「あっ、だめ、それ、んっは、いっちゃ」
「はー、やべ。俺もすぐイきそう」
「! だめ、そ、外!あっ、中は……!やあっ…あ、んんん…っ!」
「一緒にシャワー浴びよ」
「ふっ、あ!ざけ……!ん、ん!~~~~っっ!!」
なけなしの理性で中出しを拒否するも、目の前の男は容赦なくアドルフの最奥に吐き出した。
「っは、あ、はぁ…、はぁ…ばか!ばか!俺も仕事なのに!」
「はー…さっ、今日も頑張りますか」
達したばかりの身体で上手く起き上がれないでいると、ヴァレリはヒョイッとアドルフを横抱きにしてベッドから降りた。
こうなったら責任を取ってもらわないと腹の虫が治まらない。ムッとしながらも恋人の首に腕を回した。
「シャワーしながら2回戦しよ。アドルフのことだから早めに起こしただろ」
「その為に起こした訳じゃない!しない、しないからな!」
「はいはい」
早く起こしたのは準備と朝食を食べてもらうためだ。断じて自分を食らい尽くされるためではない。
なんか前にもこんな事あったなぁ……なんて少し遠い目をして、ぐちゃぐちゃにされた責任を取るべくシャワーに向かう恋人の背中を抓った。
ちなみにアドルフはこの一連をシュリに愚痴ったら「アドルフって身内にはとてつもなく優しいもんね……朝から中に出すって、それ怒って実家に帰っても良いレベルだよ」と言われたり言われなかったり。
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何年経ってもらぶらぶですっていうのを書きたくなってしまいました……相変わらず完結詐欺ですみません。
突発的に書き上げたので至らないところがあったら申し訳ありません。
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