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父親はこういう時、空気になる

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「おいノエル。どうしたんだ? 何が……」

  父であるクリスは不思議そうに首を傾げながら言いかけたが、直ぐに思い当たったようでハッとした。

「風邪でもひいたのか!」
「父様うるさい静かにして」

  俺が冷たく言い放つとしくしくと落ち込んだ。

  けど俺はそんなの気にせずフラフラと部屋に戻って行った。

「…ーん……兄さん、ノエル兄さん!」
「のわ! ……なんだ、エリクか」
「なんだ、じゃないって。父さんは泣いてるしメイド達も困ってたよ。どうしたの」
「なんでも」
「なくない。変に色気撒いて…はぁ。ヴィオレット様が何かしたんだな…」

  部屋のベッド端に座ってボーッとしてたら目の前に突然弟のエリクが現れた。

  エリクはイケメンになった。俺も父親であるクリスにちょっとばかし似てきたが、逞しさも兼ね備えているエリクの方が断然男らしい。
  ジナルマーがエリクの事を話す度に「はー、エリクがカッコ良くなり過ぎて僕どうしよう…早く大人にならないかなぁ……兄様ってずっとこんな気持ちだったんだなぁ。あ、公爵家は兄様が継いでくれるからなんの心配もなく嫁ぎに行くからね!ノエル義兄さん!」と言っている。ジナルマー自体は良い奴だしなんの文句もないけどなんか腑に落ちない。順調過ぎてちょっとムカつく。

「いつも行ってるけど、ノエル兄さんはなんて言うか危うい感じがしてるんだから気をつけてって言ってるだろ」
「うるさい。アホって言いたいのか」
「いやそういう事じゃなくて……」

  なんで伝わらないかなこの人…と呟いている。

「はー…小さい頃の兄さんも違う意味で危うかったって聞いてるし、婚約者の自覚がある今の方がマシだとは知ってるけどさぁ」
「誰から聞いたんだよ!」
「ジーナに決まってるだろ」

  ジーナとはジナルマーのことだ。あいつ、俺の事をペラペラと……!いつの間にか帰宅してるジナルマーに怒りをぶつけたくともここには居ない。

「何その顔。ヴィオレット様にチューでもされた?」
「んな…………っ!!」
「え? マジ?」

  ヴィオレット様も契約破るくらい我慢の限界が来てるのか、と何か納得している。

「どうせノエル兄さんが煽ったんだろ」
「し、ししてない! してないから!」
「いーや。ヴィオレット様関連は大概ノエル兄さんのせいだってジーナが言ってた。俺もそう思う」
「ジナルマーと俺どっちの事信用してんだ!」
「ジーナに決まってるよね」

  ジナルマー至上主義の弟を育てたのはどこのどいつだ。……いや、ジナルマーだ。あいつが育てたんだ。

  エリクが小さい頃からずーーーーっと俺ん家に通いつめ、公爵家としては俺が嫁ぐし、そんなに俺ん家と縁を強固にするつもりもないから少しだけ困ってたけど、ジナルマーがそんなに通いつめては他が寄ってこないだろう、ってことで婚約者となったのた。
  ジナルマーとエリクが婚約したらしたで、「僕はエリクのお嫁さんになるからねっ、沢山食べて寝て、早く大きくなってね」と毎日のように唱え、エリクはエリクで「あと何回ねむったらじーなのことおよめさんにできるの?」と洗脳されていた。

  怖ぇよ、ジナルマーの洗脳…俺も洗脳されてんのかな
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