43 / 54
許容範囲内?
しおりを挟む
「あ、そろそろ帰らないと」
何事もなくお茶して、ほのぼの今日の出来事を話しているうちに大分時間が経っていた。夕食の時間までに帰るなら今から家に向かわなくちゃいけない。
俺がそう言ってソファに置いていた荷物をゴソゴソと取り出していると、逆隣に座っていたヴィオがこっちをジッと見ていることに気づく。ほんとコイツいちいち絵になるな。ムカつく。ソファの肘掛で頬杖をつきながら俺の顔を優しく手背でさらりと撫ぜた。
「帰したくなくなるな」
そしたら本当に寂しそうに言うものだから、俺も何だか離れがたくなってしまった。
「……泊まりたいって言ったら、泊まらせてくれる……?」
蚊の鳴くような声で呟く。頬から頭頂部まで熱くて熱くて湯気が出そうだった。恥ずかしくてヴィオから目を逸らしていたけど、全然反応がない。おかしいと思ってヴィオの方を見ると両手で顔を覆って天を仰いでた。
「何してんの?」
「……己の理性と戦っている」
「どっちが勝った?」
「首の皮一枚理性」
「泊まっちゃダメってこと?」
「……流石にクリス殿に殺される。今日のところは帰らせる」
クリス、俺の父はいまだにヴィオと婚約破棄するか尋ねてくる。俺の気持ちが固まったのを見て寂しくなったらしい。その度、母であるセドに怒られている。子供のことを好きなのは嬉しいけど、ちょっと鬱陶しかったりする。
俺が泊まりを匂わせるとセドなんかは「お泊まり?良いよ! あ、これはヴィオ様を信用してるからだからね?ノエルがヴィオ様をあんまり誘惑しちゃダメだよ?」なんて言ってくる。誘惑なんかしたことないんだが。
「今日はって…いつも帰らせられてる」
別に1日くらい泊まってもいいじゃんと言いながらぷく、と膨れて見せるとヴィオからぐぐと耐えるような喉の音が聞こえてきた。
「……………………お前は、本当に俺に感謝して欲しい。俺にというか、俺の理性に……」
「はー? 泊まらせてくれないのに感謝するのとか変じゃね?」
「…………なら感謝しなくていい。とにかく送るから帰るぞ」
なんだよ!ちょっと呆れてる顔して!いや、ワガママすぎたから呆れてんのか?どっちにしても、もう言う事聞いといた方が良さそうだ。ヴィオをあまり困らせるなってメイナードにも言われてる。俺の何百倍も忙しいのにこうやって時間を作ってくれているのだ、と懇切丁寧に教えられている。そりゃもう耳にタコが出来るほどだ。
「はぁい。あーあ、やっぱり契約訂正しようかなー」
「ノエル」
俺を咎めるような声にうっと怯む。こうやって名前を呼ぶ時は本当にダメな時だ。
「分かったよ、悪かった!いいじゃん別に…少し言うだけなら…っ」
諦めていじけながらもソファから立ち上がる。しかし上手く立ち上がれなかった。腕を掴まれ、引き寄せられる。気づけば俺はヴィオの身体の上に乗っかる体勢になっていた。
転んだような勢いに、ヴィオの胸に額をぶつけた。
「ったぁ…な、なに……?!」
そんなに痛くなかったけど、硬い筋肉に覆われた胸に当たった額がジーンとする。ちょっと涙目になりながらヴィオを見ようと上を向く。
「っ、!?」
顎を掴まれ、唇に柔らかな感触がぶつかる。
「な、な」
「ノエルは余程俺とそういうことがしたいみたいだからな」
「人を痴女みたいに言うな!」
初めてはレモンの味って言うけど、初めてはよく分からん、ってのが答えだと知ったのだった。
------
エールありがとうございます!
出来る限り頑張ります……!
何事もなくお茶して、ほのぼの今日の出来事を話しているうちに大分時間が経っていた。夕食の時間までに帰るなら今から家に向かわなくちゃいけない。
俺がそう言ってソファに置いていた荷物をゴソゴソと取り出していると、逆隣に座っていたヴィオがこっちをジッと見ていることに気づく。ほんとコイツいちいち絵になるな。ムカつく。ソファの肘掛で頬杖をつきながら俺の顔を優しく手背でさらりと撫ぜた。
「帰したくなくなるな」
そしたら本当に寂しそうに言うものだから、俺も何だか離れがたくなってしまった。
「……泊まりたいって言ったら、泊まらせてくれる……?」
蚊の鳴くような声で呟く。頬から頭頂部まで熱くて熱くて湯気が出そうだった。恥ずかしくてヴィオから目を逸らしていたけど、全然反応がない。おかしいと思ってヴィオの方を見ると両手で顔を覆って天を仰いでた。
「何してんの?」
「……己の理性と戦っている」
「どっちが勝った?」
「首の皮一枚理性」
「泊まっちゃダメってこと?」
「……流石にクリス殿に殺される。今日のところは帰らせる」
クリス、俺の父はいまだにヴィオと婚約破棄するか尋ねてくる。俺の気持ちが固まったのを見て寂しくなったらしい。その度、母であるセドに怒られている。子供のことを好きなのは嬉しいけど、ちょっと鬱陶しかったりする。
俺が泊まりを匂わせるとセドなんかは「お泊まり?良いよ! あ、これはヴィオ様を信用してるからだからね?ノエルがヴィオ様をあんまり誘惑しちゃダメだよ?」なんて言ってくる。誘惑なんかしたことないんだが。
「今日はって…いつも帰らせられてる」
別に1日くらい泊まってもいいじゃんと言いながらぷく、と膨れて見せるとヴィオからぐぐと耐えるような喉の音が聞こえてきた。
「……………………お前は、本当に俺に感謝して欲しい。俺にというか、俺の理性に……」
「はー? 泊まらせてくれないのに感謝するのとか変じゃね?」
「…………なら感謝しなくていい。とにかく送るから帰るぞ」
なんだよ!ちょっと呆れてる顔して!いや、ワガママすぎたから呆れてんのか?どっちにしても、もう言う事聞いといた方が良さそうだ。ヴィオをあまり困らせるなってメイナードにも言われてる。俺の何百倍も忙しいのにこうやって時間を作ってくれているのだ、と懇切丁寧に教えられている。そりゃもう耳にタコが出来るほどだ。
「はぁい。あーあ、やっぱり契約訂正しようかなー」
「ノエル」
俺を咎めるような声にうっと怯む。こうやって名前を呼ぶ時は本当にダメな時だ。
「分かったよ、悪かった!いいじゃん別に…少し言うだけなら…っ」
諦めていじけながらもソファから立ち上がる。しかし上手く立ち上がれなかった。腕を掴まれ、引き寄せられる。気づけば俺はヴィオの身体の上に乗っかる体勢になっていた。
転んだような勢いに、ヴィオの胸に額をぶつけた。
「ったぁ…な、なに……?!」
そんなに痛くなかったけど、硬い筋肉に覆われた胸に当たった額がジーンとする。ちょっと涙目になりながらヴィオを見ようと上を向く。
「っ、!?」
顎を掴まれ、唇に柔らかな感触がぶつかる。
「な、な」
「ノエルは余程俺とそういうことがしたいみたいだからな」
「人を痴女みたいに言うな!」
初めてはレモンの味って言うけど、初めてはよく分からん、ってのが答えだと知ったのだった。
------
エールありがとうございます!
出来る限り頑張ります……!
31
お気に入りに追加
1,873
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる